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マウスピース型矯正治療後のリテーナー

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

インビザライン リテーナー

マウスピース型矯正の治療後の患者さんのよくある感想としては、「まだ奥歯で食べ物がしっかり噛めない」というのものがあります。これを改善するにはリテーナーの使い方にポイントがあります。

治療後に奥歯で噛めない

マウスピース型矯正装置【インビザライン】の治療中は、1日中厚さ0.5mm程度の柔らかいマウスピースが装着された状態です。ですから、上下に合計厚さ1mm程度マウスピースの分、奥歯の噛み合わせが浮いた状態で治療が進行していきます。治療終了時までマウスピースはフルタイムで使用していくため、前歯は並んだのですが、上下の奥歯の間に隙間があり食事が上手く噛みきれないといった症状が生まれる事があります。これをそのまま放置しておくと、奥歯の後ろにある顎関節に負担がかかり顎関節症を発症する事があるため、何かしらの対処をした方が良いと言えます。

<治療後の上下の歯列に1mm弱のわずかな隙間がある>

治療後のリテーナー

全ての矯正治療後にはリテーナーが必要です。この種類は様々ありますが、マウスピース型矯正【インビザライン】治療の場合は、ワイヤー型矯正治療とは異なる使い方をします。これは、マウスピース型矯正【インビザライン】治療には、歯を並べた後に奥歯の噛み合わせを落ち着かせるステージが必要になるからです。

一般的には、治療中のマウスピースよりやや硬いクリアタイプリテーナーを使用する事が多いです。アラインテクノロジー社純正のものはVIBERAリテーナーというものになります。これを1日12時間程度使用していただく事で、奥歯の噛み合わせは安定します。歯には放っておいても噛む方向に縦に伸びようとする「自然挺出」があります。これにより、クリアタイプリテーナーを装着していない残りの12時間で、上下の奥歯が噛み合って馴染んでくるわけです。おおよそ2.3か月で噛み合わせは安定し、奥歯で食べ物が噛めるようになります。

<クリアリテーナーを使用し続けると噛み合わせが悪くなる>

クリアタイプリテーナーは逆に使用しすぎると、奥歯が歯茎方向に沈む力がかかるため、いつまで経っても噛み合わせが馴染んできません。たまに、誤って20時間以上リテーナーを使用する方がいるのですが、どんどん噛み合わせが悪くなる方がいます。元々の噛み合わせによって使用方法は異なりますが、クリアタイプリテーナーの使いすぎには注意が必要です。

治療後に噛めなくなりやすいタイプ 

上記のようなリテーナーの使い方をしても、治療後に噛めなないままの方がいます。これには二つのパターンがあります。要するにこの二つはマウスピース型矯正装置【インビザライン】の適応症ではないとも言えます。

ローアングルタイプの治療

一番多いのは専門的には「ローアングルタイプ」という顔の骨格で、アゴががっしりしていて噛む筋力も強く、エラが少し張っているタイプです。歯並びは前歯の噛み合わせが深い「過蓋咬合」になっている事が多いです。

ローアングルタイプ
<ローアングルタイプ>

このような方は、奥歯の高さもすり減っている事が多く、歯の高さも短めで、マウスピースが歯を覆う面積も少なく、もともとマウスピース型矯正装置【インビザライン】に向いていないタイプになります。噛む力が非常に強いため、マウスピースの装着によって奥歯が歯茎方向に普通より沈んでしまいやすいタイプになります。

奥歯の移動量が多い治療方針

マウスピース型矯正装置は、大臼歯という「奥歯」を動かすと、倒れ込みが発生し、多少歯茎方向に沈んで行ってしまいます。これは、後方移動で歯列を後ろに動かしても、拡大で外側に動かしても、小臼歯という歯を抜歯して奥歯を前に動かしても全て一緒です。奥歯は多少なりとも倒れながら動いていきます。

<奥歯は動かすと沈んでいく>

普通はこの奥歯の倒れ込みを追加アライナーに大きめのアタッチメントを設置したり、上下の歯列の間に顎間ゴムをかける事で治していきます。ですが、奥歯の移動量があまりにも多い治療計画の場合は、倒れ込みを治し切る事ができない事もあります。

奥歯が噛みづらい方へのリテーナー

「ローアングルタイプ」と「奥歯の移動量が多い治療方針」という上記の2つのパターンの方のリテーナーにはクリアタイプリテーナーはあまり使用しません。それは、治療後も引き続き奥歯の噛む面をマウスピースが覆ってしまい、自然挺出力により噛み合わせが安定する事を阻害してしまうからです。ですから、このようなパターンには、ワイヤーで歯の内外面しか抑えないプレートタイプリテーナーが有効です。特に噛み締めが強い夜間就寝時には、こちらを使用する事で噛み合わせをかなり改善してくれます。

<プレート型リテーナーでしっかり噛んできている様子>

プレートタイプを使用する場合には注意点があります。これはクリアタイプより歯のねじれが戻る事や隙間が開く事を抑える力は弱いからです。治療前にこぼこが強かった方は、噛み合わせは安定してきてもプレートタイプだけの使用の場合、前歯の歯並びが後戻りします。ですから、プレートタイプを使用する場合には歯の裏面に細いワイヤーで前歯を固定するフィックスタイプを併用する事が多くなります。

リテーナー
<プレートタイプリテーナー>

以上の事を行っても治らない場合は

奥歯に大きな倒れこみがある場合は以上のようにリテーナーに気をつけても、噛み合わせに大きな改善はありません。これは奥歯がかなり倒れている場合、まっすぐ噛む方向に向かって自然挺出が起こらないからです。この場合は、リカバリーといって、再矯正治療を行う必要があります。

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