部分矯正治療は患者さんの希望と適応症が合致した場合は可能です。全ての歯並びを治すわけではありませんので注意点もあります。

部分矯正3つのメリット

部分矯正3つのメリット

 歯並びの症状は軽いのに、2年近くかけて全ての歯を動かす矯正治療を受ける事に抵抗がある方も多いと思います?ですが、症状が限局している場合は、部分的に矯正装置の装着をして、短期期間で治療を終了する事も可能な場合があります。

気になるところだけを治せる

 歯並びの問題が1,2歯だけの軽度の不正である場合は、気になるその部分のみを治す事ができます。他の歯並びの部分はさわらないため非常に効率的です。奥歯まで矯正装置を使用すると、反作用で動かしたくない歯まで多少動いてしまうため、一般的には前歯6本のみ装置を装着する事が多いです。

平均6か月と治療期間が短い

 矯正治療で動かす歯数や移動量が少ないため、当然治療期間は短くなります。上下前後に大きく歯並びを動かすことはないため、6〜9か月程度で終了する事が一般的です。逆にこの治療期間で終わらない治療は部分矯正治療の適応ではないと考えます。

費用負担を抑えられる

矯正治療費は、矯正装置と診療技術に対してかかります。これらが少なくなりますので患者さんの費用負担を抑える事ができます。

部分矯正には適応症があります

部分矯正の適応症
<前歯4本の歯並びを改善>

 メリットの多い部分矯正ですが、実は適応症の方は多くありません。部分矯正は主に、上下のどちらかの前歯4本部分を動かします。よって、上下のかみ合わせに問題があったり、奥歯まで動かさなくてはならないケースは非適応となってしまいます。基本的は以下のような歯並びにお困りの方は、全体の矯正治療が必要になると考えていただいて間違いはありません。

・上の前歯が出ている出っ歯(上顎前突症)
・スペース不足が強い八重歯(強い叢生症)
・かみ合わせに問題(クロスバイトや過蓋咬合症)

代表的な2つの適応症

部分矯正の代表的な適応症

 前歯の部分矯正治療で改善できる主な歯並びのタイプは2つです。意外と少ないと感じるかもしれません。部分矯正は、前歯の1〜2本程度【犬歯は含まない】の問題のみに対応しているイメージです。治さなくてはならない範囲が広くなると部分治療で難しくなってきます。かみ合わせを治すことはできませんので、分矯正治療は審美歯科治療に近い治療と言えます。患者さんには、この点をご承知の上、治療をおこなっていきます。

すきっ歯」が一番の適応症

すきっ歯は部分矯正の適応症

 前歯の真ん中が空いている正中離解という症状は部分矯正で一番治しやすい症状です。こちらは隙間を閉じる事に有利なマウスピース型矯正装置での治療も選択できます。ただし、少量の前歯の隙間の場合は、後戻りのしやすさも考慮して部分矯正ではなくダイレクトボンディング治療を推奨しております。

前歯のみの「ねじれ」

前歯のねじれのは部分矯正の適応症

 一番前の歯が30度以内で回転している症例は部分矯正で比較的簡単に改善できます。左右対称の方が治しやすいです。ただし八重歯がある場合はスペース不足が強いため適応外になりますので注意が必要です。ねじれが強い場合は、ワイヤー矯正装置の方が改善が速くおすすめになります。

 歯を並べるスペースの獲得にはストリッピング(IPR)を行います。これは、ドリルで虫歯を治すように歯を削るのではなく、 専用のヤスリで歯と歯の間を0.2~0.4mmほど削ります。前歯の隙間5箇所にストリッピングを行うだけで2~3mmのスペース獲得する事ができるとても安全で有効な方法です。

舌側装置は使用できないことがある

 半年程度の矯正治療でも見た目を気にされる方は、歯の裏側にワイヤー型装置をつける舌側矯正装置も可能です。こちらのメリットは前から全く見えない事です。装置も小型のため、前歯だけにしか装着しないためは違和感も非常に少ないと言えます。専門の矯正歯科技工所に作成のオーダーしますので、装置装着までの時間が2か月ほど開始まで時間がかかります。

 また、歯の裏面は矯正装置を接着する面積が少ないため、唇側矯正装置の使用は可能でも、舌側矯正装置は使用できないことがあります。特に上の歯並びの裏側装置の場合は、装置装着面積の確保の問題で下の前歯が上の前歯を強く噛んでいる「深噛み」ケースの場合は軽度でも適応外になります。どれくらいの方が、部分矯正治療でこの「深噛み」の問題で舌側矯正装置の装着でいないかというと、部分矯正治療希望の方の約50%と結構多いのです。患者さんが自分で鏡を見てもわかりにくいため、審査して初めてわかります。

 一方、下の前歯の舌側矯正装置に関しては、制限はあまりないのですが、元々目立ちませんので唇側矯正装置にされる方が多いです。

部分矯正後は固定式リテーナーがベター

 また、治療後は本格矯正と同じように、リテーナーおよびメンテナンスが必要になります。特に動かす範囲も少ない場合、少しの後戻りも気になりやすいためフィックスリテーナーを必ず使用します。

部分矯正治療例

 こちらは、部分矯正治療の適応症です。ポイントは上の歯並びのスペース不足が軽度であり、横顔で口元の突出がないことです。また、かみ合わせも大きくは崩れていません。したがって、上の前歯を多少前に出すように並べても支障がないとため、上のみの部分矯正治療を行いました。念のため簡易シミュレーションを行い、治療イメージを確認のもと治療を開始しました。歯列形態か崩れないようブラケット装置は犬歯の後ろの第一小臼歯まで8歯装着しています。治療後は上4歯のみフィックスリテーナーを装着しました。

部分矯正治療例
部分矯正治療例
部分矯正治療シミュレーション

<アウトカムシミュレーション>

部分矯正治療例
部分矯正治療例

<症例概要>
主訴
:前歯のがたつき
年齢・性別:高校生女性
住まい:千葉県八千代市
治療方針:前方拡大、IPR
治療装置:唇側矯正装置(上前歯8歯)
治療期間:7か月
リテーナー:上プレートタイプ・上フィックスタイプ
治療費用:385,000(税込)
代表的副作用:痛み・治療後の後戻り・歯根吸収・歯髄壊死・歯肉退縮
▶︎その他の副作用

定額制の費用

診断料 ¥44,000(税込)
各種装置別治療費

1.唇側装置の部分矯正    ¥385,000(税込)
2.マウスピースの部分矯正 ¥440,000(税込)
3.舌側装置の部分矯正 ¥440,000(税込)

※全てリテーナー費用込みになります。
※2ブロック以上の歯列治療・上下の部分矯正の場合は、別途お見積もりが必要です。