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床矯正をやらない方が良いケース

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

床矯正治療 失敗

コロナ禍で最近、小学生以下の子供の矯正治療は減ってきていると聞きます。当院もそうですが、知人の矯正歯科医院も同じような状態です。この理由には大きく2つあると私は考えています。

一つは、一般的に言われている感染リスクを避けるための受診控えです。もう一つは、今まで早期治療の適応ケースではないお子さんにまでに小児矯正を行っていたという事があげられると思います。それ以外としては、保護者の方達が、早期治療の効果について疑いを持ち始めている事もあげられます。

歯列やアゴの成長に悪い生活習慣などの改善は早期から行う事については良いと思います。しかし、当院では早期の治療が歯列不正の予防につながるとは考えていません。ですから、小学生以下の早期治療は、全てのお子さんに必要とは考えてはいないため、噛み合わせに問題がなければ、矯正治療を始めない事もあります。

小児矯正はまだ床矯正が主力

子供の矯正治療といえば、パカパカ入れ歯のような装具を取り外す床矯正がまだまだ日本で一番行われています。学校検診に行くとこの床矯正を使用しているお子さんがクラスに何人かいます。

床矯正装置は真ん中で2つに割れており、その間にあるのスクリューを回す事で、わずかに歯列を広げていくメカニズムです。専門的には「緩徐拡大装置」と呼びます。もちろん歯列が外側に広がるだけでなので、骨格を形などを変える事はできません。前歯を並べるスペースを一時的に作ってあげるために使用します。もしアゴを広げる場合は、床矯正装置ではなく急速拡大装置と呼ばれるような特殊な固定式装置が必要です。

床矯正の適応には注意が必要

床矯正装置には歯並びを広げる効果がありますが、奥歯が真横に並行移動していく訳ではありません。傾斜移動といって段々と外開きに開きながら広がっていきます。ですから歯列を土台の骨格以上に広げすぎると、奥歯の噛み合わせが崩れていってしまいます。その結果、噛み合わせの位置が定まらなくなってしまったり、治療により噛めなくなってしまうという事が出てきてしまう事があります。

床矯正装置
<床矯正装置>

特に噛む力が弱い言われている面長傾向のお子さんで、下アゴを後ろに引っ込んでいるタイプのお子さんの場合、歯列拡大で奥歯の噛み合わせが悪くなる事で、上下の前歯が接触しなくなってくる事があります。床矯正で前歯を並べるスペースはできたのですが、開咬になってしまうのです。歯列は並んだけど、噛み合わせは悪くなっては、意味はありません。

床矯正をやってはいけないタイプ

簡単にいうと、面長のお顔で出っ歯傾向のお子さんは床矯正の適応症ではありません。下顎が小さく、上の前歯は前に出ているため、口が閉じづらく無理して閉じると顎に梅干しシワができます。このタイプに床矯正装置による歯列拡大を行うと、かなりの確率で前歯が噛めなくなります。さらに、上下の前歯の隙間に舌が入り込む悪い舌の癖も生まれ、どんどん噛み合わせが悪化していきます。

床矯正治療 非適応
<床矯正を行わない方が良いタイプ>

ですから、このタイプのお子さんは、例え下の歯並びが、でこぼこでも床矯正はしない方がベターです。一般的には永久歯列交換後に小臼歯という歯を2〜4本抜歯して行う本格矯正治療にて治す形になります。早期治療を行う場合は、既製型トレーナー装置【プレオルソ 】の方が床矯正装置よりベターです。

床矯正治療の適応症は少ない

上記のようなケースでなければ、床矯正だけでもある程度治りますが、残念ながらケースとしてはかなり少ないです。日本人は元々アゴが華奢で面長のお顔が多いため、お子さんの歯列拡大をできるケースは半分以下と考えます。さらに、これは年々減っていっています。

日本人のアゴの骨格
<2019当院検査患者さんの統計>

当院で昨年の治療開始患者さんのデータを統計したところ、半分以上の方が下アゴが小さく、面長傾向でした。つまり半分以上が床矯正適応外です。全てのお子さんに床矯正治療を使用すると半分は噛み合わせが悪化するという事です。

どんな治療装置にも適応症があります。全ての方に使用できる矯正装置というのはありません。適応外ケースに行うと、当然良い治療結果は生まれません。わからない場合は矯正専門医に相談をすると良いと思います。

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