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マウスピース型矯正装置の装着時間が守れなくなる理由と注意事項

まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

インビザラインの装着時間が守れなくなる理由と注意事項

 マウスピース型矯正装置【インビザラインなど・薬機法対象外】の装着時間は、1日20時間以上となかなか厳しいです。全ての患者さんがこの使用時間を常に守り、スムーズにゴールにただどりつけるかというと、そういうわけではありません。どんな方も多かれ少なかれ使用時間が低下する時期があります。大切なことは、そのネカティブな期間を最小限にすることです。こうして多くの患者さんは、この長いマラソンをリタイヤせずにフィニッシュすることができるのです。

マウスピース装着の時間が低下していく理由

インビザラインマウスピース装着の時間が低下していく理由

 マウスピース型矯正装置【インビザラインなど・薬機法対象外】が装着できなく理由は、大きく分けると身体的要因・心理的要因・環境要因になります。

身体的要因

インビザラインの装着できない・身体的要因
  1. 装着時の違和感と不快感
  2. 歯の移動に伴う痛み
  3. だ液の増加と発音のしづらさ

 身体的要因はマウスピースをつけた生活に慣れるまでの期間に関わってきます。様々な環境の変化に適応力がある方は、1週間程度でマウスピースを装着しても普通の日常生活に戻ることができます。ですが、適応に時間がかかる方は、1か月経過しても日常生活に支障が出続けるため、早々に諦めて日中のマウスピース装着時間げ減少していきます。特に外部講師や接客業で他人と「話すこと」を仕事にしている人の中には、治療開始から数か月たってもマウスピースを外さないと話すことができないという方もいます。

 また、矯正治療の痛みは個人差があります。痛みが強い方の場合は、耐えられず自分でマウスピースを外してしまう方がいます。こうしてマウスピースを外している時間が増えると、せっかく動いた歯がもとの位置に戻り、いつまで経っても痛みがなくなりません。

心理的要因

インビザラインの装着できない・精神的要因
  1. モチベーションが低下し、面倒くさいという感情の発生
  2. マウスピースの着脱の際に、周囲の目が気になる
  3. 仕事や学業で多忙

 マウスピース型矯正治療をやり続けるということは、それなりのエネルギーを使います。人間にはそれぞれ毎日の生活で考えたり決断することに、許容量があります。これが、キャパオーバーになってしまうと重要なこと以外はシャットダウンしてしまい矯正治療まで頭が回らなくなってしまうことがあります。この許容量は患者さんの性格によっても異なりますし、時期によっても変化します。仕事や学業が忙しい時期や気持ちが乗らないことがあった時などは、マウスピースの装着が大きなストレスになってしまい、装着時間が急激に減っていってしまうことがあります。

 また、マウスピースは目立たないといっても、近くで見るとアタッチメントは見えますし、マウスピースの着脱の際は矯正治療をしていることがわかります。他人から「何をしているのだろうか」と視線を感じるのがストレスになる方もいます。こうして人前でマウスピースを装着できなくなってしまうことがあります。

環境的要因

インビザラインの装着できない・環境的要因
  1. 不規則な食生活
  2. 外出先での管理の難しさ
  3. 洗浄する場所や時間の確保が困難

 マウスピース型矯正装置の一番のわずらわしさは、ランチ後の着脱です。マウスピースの再装着には歯磨きか口をゆすいでから行うため、お手洗いに行く必要があります。よって、近くに水道がある「場所」と、再装着のための「時間」が必要です。時間刻みのハードワークや屋外でのお仕事をされている方は、一度マウスピースを外すと自宅に戻るまで再装着できないことがあります。

装着不足になった時に行うこと

 一番良くないのは、自己判断でマウスピースの矯正治療を進めてしまうことです。治療計画が予定通り進まず、予想以上に大きな治療期間のロスになってしまいます。そうならないような対策をあげていきます。

装着できない日がある場合は事前に連絡

インビザラインを装着できない日がある場合は事前に連絡

 虫歯治療や親知らずの抜歯でマウスピースが物理的に装着できない場合は、必ず担当医に連絡し使用方法を確認しましょう。マウスピースを部分的にカットして使用するなどの方法が提案されます。また、旅行で長期間装着できない日がある場合など適切な使用時間を説明してくれます。

交換日数の調整をが必要

インビザラインの交換日数の調整をが必要

 マウスピースの使用が半日になってしまった日があった場合は、交換日数を1日づつ遅らせていくことが必要になります。これによりマウスピースの形に歯列の移動が追いついてきます。治療初期の頃は、マウスピースの交換の遅らせなくても、次のマウスピースは問題なく装着できます。ですが、何枚か交換していくうちに、ある日突然次のマウスピースが装着できなくなってしまいます。

 なかなか使用時間が伸びず、マウスピースがいつまで経っても交換できないという方もいます。この場合、治療が前に進まなくなってしまいます。さらに、マウスピースメーカーにはそれぞれ追加でマウスピースを作ることができる期間に制限があったり、医院によって治療期間の保障範囲が設定されていることがあります。よって、1か月で1枚しかマウスピースの数が進んでいない場合は治療が終了できない可能性があります。

1週間以上装着していない場合は自己判断で再開しない

インビザラインを自己判断で再開しない

 マウスピースを装着していない1週間のうちに歯列は元に戻ります。その後、マウスピースの装着を再開しようとすると、適切に装着できないか、装着できたとしても強い痛みが発生してしまうため、必ず担当医の診察のもと再開する必要があります。患者さんの判断で使用を再開した場合、強い痛みが発生するだけでなく、歯肉退縮や歯髄失活のリスクが高まってしまいます。

 1か月近く装着していない場合は、ふつう同じマウスピースで治療を再開することはできません。この場合は、暫間的マウスピースを歯科医院で作成し追加マウスピースを作成することになります。時間がかかるため事前に連絡をしておきましょう。

矯正治療をしていることを公表しまわりのサポートを受ける

インビザライン中はまわりのサポートが必要

 自己管理がどうしても苦手な方は、ご家族の方などにマウスピースの装着を忘れないように確認してもらうようにします。また、可能であれば、職場や学校に矯正治療を行っていることを伝え、配慮してもらうのも手です。例えば、多少の発音の変化は気にしないでもらったり、昼食後に歯みがきの時間をとってもらうことなどがあります。

 「せっかく、目立たない矯正装置を選択しているのに、自分から人に言うのは…」と思う方もいますが、ワイヤー装置と異なりマウスピース型矯正治療は自己管理しなくてはならない点が増えますので、配慮してもらえるのであれば、治療を進めることがかなり楽になります。

担当医に素直に伝える

インビザラインを使用していないときは担当医に連絡

 患者さんは、なかなかマウスピースの使用不足を担当医に伝えるのは、自己肯定感も下がりますし、難しいところです。ですが、担当医に素直に伝えることで、患者さんに寄りそった治療計画や、矯正装置の変更を提案してくれることもあります。マウスピースが装着不足になってしまうことは、決して恥ずかしいことではありません。誰しもが通る道です。

 一番良くないことは、嘘の装着時間を宣告することです。担当医は治療計画と歯の動きの違いをみて困惑してしまいます。場合によっては間違った治療計画が作られてしまう可能性があります。マウスピースの装着が12時間以下になる場合はワイヤー矯 正装置に変更した方がスムーズに治療を終了できるケースもありますので検討しましょう。

まとめ

 マウスピース型矯正装置【インビザラインなど・薬機法対象外】は1日20時間以上の装着が必要ですが、多くの患者さんが装着時間の低下を経験します。主な理由は身体的要因(違和感・痛み)、心理的要因(モチベーション低下・周囲の目)、環境的要因(不規則な生活・管理の困難さ)に分類されます。装着不足時の対策として、事前連絡、交換日数の調整、担当医への事前相談、周囲のサポート活用、担当医への正直な報告が重要です。治療成功のカギは、装着時間が低下する期間を最小限に抑えることです。

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