矯正治療後の通院とリテーナー

 矯正治療後も、頻繁ではありませんが引き続き通院が必要です。保定といってリテーナー(保定装置)を使って歯列を安定させ、後戻りを予防する期間になります。矯正治療後のリテーナーは、可能であれば、ずっと使用した方が良いと考えています。

矯正治療後も通院は続きます

 矯正装置を除去もしくは取り外し装置の使用を終了した後は保定期間に入ります。保定とは動かした歯を新しい位置で落ち着かさせる期間です。その際は、「リテーナー」という様々な種類の歯並びの後戻り予防装置を装着していただきます。ですから、治療後も何かしらの矯正装置を装着するため引き続き通院が必要になります。

 最初の歯並びの状態にもよりますが、リテーナーを使用しないと後戻りを引き起こす可能性が高くなります。特に矯正治療後6か月は骨が再構成され歯が新しい位置で落ち着いていないため最も後戻りが起きやすい期間となりますので、リテーナーの使用が必須になります。これは矯正治療直後は、歯根膜腔と呼ばれる歯と骨の間の血管空隙が開いた状態になっており、まだ動きやすいからです。

矯正中・歯根膜・開く

<矯正治療直後は、歯の周りの黒い隙間が開いている>

保定通院では何をするの?

矯正治療後の保定通院は何する

 治療後の通院では、歯列確認・後戻予防・リテーナー調整・クリーニングを約15分で行います。2年間で計7回くらいの通院になります。もちろんその後も、希望されれば1年に1回程度の通院も可能です。多くの方がその後も通ってくれいます。

歯列の確認

保定チェック

 治療終了時の写真資料を参考にして「歯列に変化がないか」を確認します。毎日使用している歯並びが治療後、全く動かず安定しているというのはありえませんので、微細な変化を見つけます。

 また、患者さんより、前回の診察時からの期間でお口の中で変化がないかも問診します。歯並び以外のことについてもご相談を受けます。

後戻りの予防するアドバイス

保定のアドバイス

 思春期の10代の場合は、下あごの成長や顎関節の状態、親知らずの生え方によって、歯並びが変化していくことがあります。一方、ミドルエイジの場合は、エイジングによる歯並びの変化や、歯を支える歯茎にダメージを与える歯周病について注意をしなくてはなりません。

 また、前歯の噛み合わせを悪くする口呼吸や低位舌など悪習癖や、歯にダメージを与えるくしばりや歯ぎしりについては早期発見し、改善のアドバイスを行っていきます。

リテーナーの調整

リテーナーの調整

 基本的には、取り外し式のリテーナーは一生使っていただきたいたいところです。毎回、持参していただきフィットを確認したり、ワイヤー部分の調整を行います。 クリアマウスピースを使用の場合は、疲労により破損がありますので再制作が必要かを確認します。リテーナーは、だんだんと使用時間が減ってきてしまいがちになるため、来院時には再度定期使用を促します。 
 固定式のリテーナーが装着されている方は、接着が弱まり歯面から外れていないかを確認します。見つけ次第ワイヤーの再接着を行います。

クリーニング

 矯正治療の接着剤の残りなどがある場合は、除去していきます。固定式リテーナーが接着している場合は、歯石がつきやすいためスケーリングという処置を行います。その後、歯列を全周にわたって、専用のブラシで着色なども取りながら、磨き上げていきます。クリーニング中に小さな虫歯を見つけることもあります。

保定期間もしっかり通院した方が良い

 実は、このメンテナンス2年間期間には治療保証もついています。治療後も計画通り通院している事が条件になりますが、後戻りの再治療を通院毎の処置料(4,400円)のみで行う事ができます。実際、リテーナー使用不足による前歯のがたつきの戻り、舌の癖などによる開咬の再発、予想外の歯並びの変化などで再治療を行ったケースもあります。

 リテーナーの使用不足というのは結構ある事です。残念ながら全ての患者さんが治療後に自制管理して毎日リテーナーを使用してくれる訳ではありません。メンテナンスの通院時にリテーナーを持参する事を忘れて来られる方は、使用時間が少ない傾向にあります(本来なら最初は外出時もずっと装着していなくてはならないはずなので…)。

 「あまりリテーナーを使っていないから怒らそうで行きたくないな…」なんて事もあるとは思いますが、通院する事で使用のモチベーションも上がりますから、必ず保定期間は通院しましょう。

様々なリテーナー(保定装置)の種類

 当院で使用しているリテーナーには主に3つの種類があります。取り外し式と固定式を併用することはあります。

プレートタイプ

プレートタイプリテーナー
プレートタイプリテーナー

 一番スタンダードなタイプのリテーナーです。上の歯並びに使用する事が多いと言えます。下の歯並び用は舌があるので少し違和感があります。ワイヤーとレジンという耐久性のある材質で各個人の歯並びに合わせて作っています。大切に使用していただければ10年持ちます。歯型を取り模型を作ってから作成します。完成まで3週間程度の期間を要します。

 歯を抑えるワイヤーの形によって「ベッグ(Begg)」・「ホーレー(Hawley)」と種類があります。少々故障しやすいのですが、QCMという前歯のワイヤー部分をプラスティック製素材にして審美的に良くするという方法もあります。また当院では、レジン部分の色を様々な変える事ができます。院長の私も就寝時回数は減らしていますがこの種類を使用しています。

クリアマウスピースタイプ

クリアマウスピースタイプリテーナー
クリアマウスピースタイプリテーナー

 薄いフィルムのマウスピース型タイプです。装着してもほぼわからないため、プレートタイプを日昼使用できない成人の方に使用していただきます。プレートタイプと比較して耐久性はなく夜間使用すると歯ぎしりで穴が空いてきます。また、おうとつの多い歯の場合は亀裂が入ってきます。通常1枚の寿命は1年程度ですが、使い方によっては半年で破損してしまう方もいます。飲み物によっては多少、マウスピースに変色が起きます。

 急に必要でない方の場合はスキャナーのデータを3Dプリントし作成します。すぐ必要な場合は歯型を取り1日で作成します。

 歯の前後的位置を抑える効果は強いのですが、普段一層シートを噛んでいるので噛み合わせの安定はプレートタイプよりやや劣ります。少しの期間使用していないと歯の形ピッタリに作っているため、キツくて再装着は不可能となる事があります。

フィックスタイプ

フィックスタイプリテーナー

 固定式の細いワイヤーを主に前歯の裏側に接着させます。矯正治療前の歯並びが捻れが強かったり、スペースが空いていた場合などには必ず装着します。プレートタイプと併用する事も多く、下の歯並びだけではなく上の歯並びにも使用します。永久保定といって2年間の保定管理期間後も装着し続ける事を推奨しています。

 抑える歯の箇所が多い場合は、複雑なワイヤー屈曲が必要なため歯型を取り期間をかけて作成します。少量の歯を抑えるだけであれば、その場で作成し接着させます。

 虫歯や歯石付着のリスクから使用しない医院もありますが、当院はそれよりも歯並びの後戻りによる再矯正のリスクを考え、歯並びのスペースの問題があった患者様にはほぼ使用しております。

リテーナーの装着時間と期間

 歯並びの種類によってリテーナーの装着時間の違いがありますが、多くは以下のようなタイプを推奨しています。矯正治療終了後すぐの6か月は食事以外はほぼ装着しておいていただきます。その後の6か月は12時間使用に切り替えますが、就寝時と昼食までの午前中を使用していただきます。1年後からは就寝時のみ毎日使用していただきます。

リテーナー使用期間
<当院の使用時間パターン>

 「結構、使用条件が厳しいな」と感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、治療後2年間はプレートタイプはフルタイム使用という医院もありますので、これでも当院はも使用時間に関しては緩めですこの時間を切ってしまいますと後戻りが生じる可能性がかなり高くなります。

 当院では15歳以上から矯正治療をスタートした患者様には日中はクリアタイプを在宅時はプレートタイプを使用していただいています。また管理が終了する保定2年後以降もプレートタイプはそのまま使い続けフィックスタイプは除去しない事を推奨しております

リテーナーはいつまで使うのか?

リテーナーはいつまで使うのか?

 よく「保定期間はいつまで続くのか?」と聞かれる事がありますが、実は終わりはありません。日本矯正歯科学会などの専門医資格の治療症例提出が治療後2年以上の保定管理が必要になるため、多くの矯正歯科医院での絶対管理期間は2年である事が多いです。また、それに合わせて後戻り再治療保証も2年です。ですから、治療後2年間で6回程度来院していだく間はしっかりリテーナーを使用していただきます。その後もリテーナーは一生お世話になるものだと思って大切にして下さい。

誠に申し訳ございません。
現在、通院の患者さんのリテーナー作成量が増えたため、他院で矯正治療した方のリテーナー作成については、ご紹介でない限りはお引き受けしておりません。