ハーフリンガル矯正【上のみ裏側の矯正装置】
※ハーフリンガル矯正治療はていねいに治療を行うため、処置時間に余裕がある平日の通院が必要になります。
目次
ハーフリンガル矯正とは?
矯正治療を考えている大学生や社会人の患者さまに最も多いお悩みが「矯正装置が目立つこと」です。成人の矯正治療を考える方の中には、目立つ矯正装置に心理的な抵抗を強く感じる方や、仕事上目立つ矯正装置を使用できないというケースも多々ございます。
このようなお悩みを抱えている患者さんに、当院では目立ちやすい上の歯のみ裏側(舌側)に矯正装置を装着する「ハーフリンガル矯正」をおすすめしています。下の歯並びには歯の表側(唇側)に矯正装置を使用しますが、審美性の高いものを装着しますのでご安心下さい。
基本的には高校生以上を推奨しておりますが、歯並びの状況や通院時間の確保が可能であれば行う事はできます。15歳未満の方の場合、歯の裏面はブラケット装置を装着する面積が狭いため、歯茎からある程度、歯が出ていないと装着することがができません。
小型化により操作性が向上した裏側装置
当院の歯の裏側(舌側)につけるブラケット装置(クリッピーL・TOMY製)は、小型のブラケット装置であり、口の中の違和感は低減しています。全くではありませんが、舌が傷ついたりする頻度も低くなりました。また、セルフライゲーションというクリップでワイヤーを止める方式のため、ワイヤーを一つ一つ細い針金でしばる(結紮)必要がなく、患者さんの診療室での処置の苦痛も軽減する事ができました。
さらに、ワイヤーの調整量を少なくするストレートワイヤー法の採用や、前歯をしっかり後ろに引っ張るための固定源である歯科矯正用アンカースクリューを植立することで、治療を効率化することを可能としました。
舌側装置は、提携の歯科技工所で一つ一つオーダーメイドで作成されます。そこで、歯科技工士の方と歯列の最終位置について、途中何回も打ち合わせをして完成させます。
ハーフリンガルのメリット
ここでハーフリンガル矯正の代表的なメリットを紹介します。
矯正をしている事がわかりにくい
下の歯並びは外側にワイヤー矯正装置が装着されているハーフリンガルは、上下舌側装置と遜色ないほどの目立ちづらさです。意外と下の歯並びの矯正装置は見えづらいです。
特に出っ歯傾向の歯並びの患者さんの場合、下の歯並びは出ている上の歯並びに隠れてしまっている事が多く、他人からほとんど見えません。前歯を後ろに引っ込めたい患者さんに向いています。
食事に気を使わなくても良い
矯正治療中は外食の際には気を使わなくてはなりません。マウスピース型矯正装置(アライナー)の場合は食事の前後で着脱が必要です。唇側矯正装置の場合は、前歯に食べ物がはさまっていないか気を使わなくてはなりません。どちらも、食後にお手洗いに直行する必要があります。
ほぼ全てのケースが適応症
マウスピース型矯正装置(アライナー)には適応症があり、中でも前歯を大きく後ろに引っ込めなくてはならない口ゴボ(上下顎前突症)の治療には向いていません。口ゴボの矯正治療には奥歯が前方に倒れてこないようにしっかり硬いワイヤーで固定する必要があります。特に上の舌側装置は骨に固定源を求めるアンカースクリューとの相性も良く、前歯を十分後ろに引くことができます。
ハーフリンガルの注意点
一般的な舌側装置のデメリットがハーフリンガル矯正にもあります。
処置時間が長い
歯の裏側はとても狭く、矯正装置も小さく細かいため、唇側装置と比較して調整に時間がかかります。よって、毎回の処置時間が少し長め(45分程度)になります。患者さんもずっと口を開けたままというわけにもいきませんので、休みながら処置をしていかなくてはなりません。
故障が多い
舌側装置はブラケット装置の脱落故障がやや多くなります。これは、歯の裏側は装置接着面積が少なく、噛んだ時に上の装具に歯がぶつかりやすいという接着環境と、少しのワイヤーの調整でも歯に強い力がかかりやすいという調整の難しさが要因です。一度舌側のブラケット装置が外れると、唇側とは異なり再装着にもお時間がかかります。
歯肉炎になりやすい
舌側装置は表側の矯正装置と比較して、唾液が行き渡りやすくブラケット装置のまわりに虫歯ができにくいという特徴があります。ですが、歯茎の近くギリギリにブラケット装置を装着しますので、どんなにきれいに歯磨きをしても歯肉炎になりやすいという特徴があります。歯肉炎が進行すると歯茎に痛みが生じることもあります。
それでも、上下舌側装置より快適
舌側装置には色々なデメリットもありますが、ハーフリンガル矯正は上下裏側装置の場合やより「故障が少ない」「処置時間が短い」「しゃべりやすい」「治療の成功率が高い」「費用を抑えられる」といった特徴があります。つまりハーフリンガル矯正は、舌側装置と唇側装置のいいとこ取りをした治療法と言えます。特に患者さんにとって違和感が強いのは、主に下の舌側矯正装置です。下を唇側矯正装置にする事でその悩みはほぼなくなります。
舌側装置の取り扱い医院は限られている
誤解のないように先に説明しますが、今はほぼ唇側装置も舌側装置でも同じように仕上がります。ですから治療期間は変わりません。これは、どんな医療器具も、段々操作性が上がり、システム化する事で品質は上がるからです。しかし、多くの歯科医院では舌側矯正治療を取り扱っていません(もしくは推奨しておりません)。これは、舌側矯正装置の施術には唇側矯正とは異なる技術習得が必要だからです。ハーフリンガル矯正は上のみの裏側装置ですが、表側矯正とは全く異なる治療方法であり矯正歯科医が新たに研鑽を積む必要があります。また、治療がシステム化できていないと処置に多くの時間がかかるため、多くの患者さんの治療にあたる事ができません。
ですから、舌側装置を使用した矯正治療は転院が難しくなります。それは、対応医療機関が少ない事と矯正装置がオーダーメイドになるからです。2年以内に転居の可能性がある方は避けた方が良いと言えます。
ハーフリンガルの治療の流れ
ハーフリンガル矯正は以下のステップで治療を進めます。毎回少しづつ調整処置を行って行きますので3か月くらいかけて全ての矯正装置装着が完了します。
- 歯列のスキャンデータを採取し、歯科技工所にオーダーします。
- 抜歯がある場合は、適時行っていただきます。
- 下の唇側装置を装着します。
- 技工所で完成した上の舌側装置を装着します。
- 歯科矯正用アンカースクリューを設置します。
- 毎回のワイヤー調整が続きます…
<症例概要>
主訴:前歯の歯並び
年齢・性別:高校生女性
住まい:千葉県八千代市
症状:開咬・叢生
治療装置:ハーフリンガル矯正(上のみ裏側装置)
治療期間:2年2か月
リテーナー:上下顎クリアタイプ+フィックスタイプ
治療費用:1485,000(税込)
代表的副作用:痛み・治療後の後戻り・歯根吸収・歯髄壊死・歯肉退縮
その他の副作用とリスクについて▶︎