子供の矯正治療を考えたときに、保護者の方がまず引っかかるのは、ブラケットと呼ばれるあのワイヤー型装置です。「目立つしかわいそう」など、固定式の矯正装置に対するイメージはどうしても良くはありません。そこで、その家族と子供の矯正治療への負担を減らしてくれるのが、「マウスピース型矯正装置」になります。

 

 

マウスピース型矯正装置に過剰な期待を持っている保護者の方もいらっしゃいますが、どんな医療にも適応症というものがあります。適切なケースに、適切な治療を行う事で良い結果が生まれるのです。

 

 

 

 


マウスピース型矯正装置とは?


一口にマウスピース型矯正装置と言っても多くの種類があります。基本的には、口の中に入る着脱式の矯正装置を全てマウスピースと呼びます。その中で大きく分類するとしたら上下歯列分離型か、一体型かです。

 

 

 

上下分離型マウスピース【アライナー】

分離型マウスピースの代表例は、アラインテクノロジー社が出しているアライナー型矯正装置【インビザラインファースト・薬機法適応外】です。これは個々の歯列にぴったり合わせた作った、透明なマウスピースを交換しながら何枚も使用して、少しづつ歯並びを整える方法です。

 

 

 

 

アライナーを装着したまま、食事を取ることはできないのですが、上下分離していますので、普通に口を開けて話す事はできます。装着時間は18時間程度とほぼ1日中使用する事になります。アライナーは薄くて装着感は良く、透明で目立ちませんので使用はしやすいと言えます。

 

 

以前は分離型の主流は、プレートと呼ばれる床矯正でしたが、最近ではこのアライナーに取って代わろうとしています。非常に良いシステムなのですが、全ての歯科医院で行われていない理由の一つとして、海外輸入製品のため材料費が非常に高い事が理由になります。

 

 

適応症とは、開咬・すきっ歯・軽度のでこぼこです。重度のスペース不足や奥歯のかみ合わせに問題があるケースは不得意としています。また、基本的には永久歯列完成後に2期矯正治療を行う前提とした小児矯正治療になります。

 

 

 

上下一体型マウスピース【トレーナー】

一体型マウスピースの場合は、舌や口のまわりの筋肉にも圧力がかかるため、筋機能を鍛える効果からトレーナーとも呼ばれます。柔らかいシリコンやポリウレタンといった素材で、既製品を調整して使用します。歯並びのパターンや大きさによって何種類から選択します。当院では、その中でフォレスト・ワン社が出しているトレーナー装置【プレオルソ】を使用しています。

 

 

 

 

 

トレーナーは就寝時に追加して寝る前1時間ほど、お口に入れていただき噛んでもらいながら使用します。在宅時使用なので装着はとても簡単です。

 

 

トレーナーは、受け口(反対咬合)深噛み(過蓋咬合)などの「前歯のかみ合わせのみ悪いケース」はとても良く治ります。前歯のかみ合わせが悪いと、上手く食事ができません。また、口呼吸になっている出っ歯(上顎前突)の方も、比較的治しやすいと言えます。これらの歯並びは半年程度の期間で治療が完了します。学校には持って行かずに、ただ夜マウスピースを入れているだけで、本当に治ってしまいます。

 

 

ですが、トレーナーも万能というわけではなく、奥歯のかみ合わせのズレが大きい場合や骨格的な問題が強い場合は、効果が少ない事が多いです。また重度の鼻閉がある場合はマウスピース装着自体が息苦しく困難になります。

 

 

歯並びが治った後はそのままプレオルソを使用してもらい、今度は歯並びを悪くする原因である「口呼吸」や「低位舌」の改善トレーニング装置に変わります。そして、長期的に安定しやすい口の環境作りをしてあげるのです。

 

 

 

 


本当に負担の少ない小児矯正とは?


毎年春から夏にかけて小学校で歯科検診が行われます。小学生低学年のお子さんでちょうど前歯が永久歯に生え替わったばかりの時期です。ここで、今まで全く気にしていなかった「歯並び・かみ合わせ」にチェックが入ったりします。そして、家でお母さんが仕上げ磨きをする時に、子供の口に中をよく見ると、下の前歯が重なっている事に気がつきます。

 

 

その後は、受診証明を書いてもらいに、かかりつけの歯科医院で相談にいきます。すると「今すぐアゴを広げた方が良い。まだ間に合う。」と説明を受け、ちょっと安心して、床矯正装置などで矯正治療を開始していくのです。このような流れは、よくある事です。

 

 

でもちょっと待って下さい。その矯正治療、今すぐ必要でしょうか?

 

 

もちろん、小児矯正の適応ケースであれば、歯が並ぶスペースを獲得でき上手くいくパターンも多くあります。1期と呼ばれる子供の矯正治療のみで上手く永久歯が並べば、その後のワイヤー型装置による全顎矯正治療もなく、期間も費用も抑える事ができ、皆満足できます。

 

 

しかし、場合によっては、子供の矯正治療を3年近く行なったが、さらに2期と呼ばれる2年程度かかる仕上げの全顎治療が必要となるケースもあります。さらに、場合によっては、歯並びを広げたが効果が足らず抜歯も併用しなくてはならない事もあります。このような場合は、お子さん・保護者の方には大きなストレスがかかります。「1期治療は何のために行なったんだろう」なんて考えてしまい、担当歯科医師に不信感を持つようになる事もあるのです。

 

 

 


全てのお子さんが小児矯正対象とは限りません


小児矯正をいつから始めるか

 

 

①の小学生だけで終わりになるパターンの場合はとても治療は楽です。ですが、これは限られた症例のみになります。(詳しくは…)

 

 

初診時の時点で2期が必要なケースはある程度わかります。2期の本格矯正が必要な場合は、②か③か治療を始める時期を選択していただきます。③を選択した場合は子供の矯正治療は定期観察のみで行いません。

※②のケースはトレーナーやアライナー治療からスタートしても、準備矯正治療契約ではなく本格矯正治療契約になります。

費用については▶

 

 

2期が必要なのか?この点に関しては、私は、多くの子供の矯正治療経験からこの点をある程度、体系化する事ができました。そこでの判断基準は、「トレーナー装置【プレオルソ】で治るか」です。トレーナーは、特定のパターンのみ、床矯正装置などの従来型の小児矯正装置より、少ない使用時間で早く良く治ります。

 

 

 


準備矯正で終わるお子さんはどれくらい?


歯並びに悩むお子さんの全員が、小学生の1期治療のみで終われば、良いのですが、実際は準備矯正のみ歯並びが80点以上行くケースは1/3程度しかいません。

 

 

「子供の矯正治療はできるだけ早くから始めた方が良い」という考え方もあるのですが、私は子供の矯正治療はできるだけ早く終わった方が良いという考え方です。そのため、早期からスタートせず戦略的待機という事も行います。さらに症例の内容だけでなく、家庭環境・お子さんのキャラクターも見て、治療に介入する時期が検討します。

 

 

お子さんも保護者様も歯科医師も「治療期間は短かくしたい」のは共通の願いです。当院では、初診相談では、できるだけ矯正治療の負担が少なくなるように、客観的にアドバイスしています。

 

 

当院では、「一時的な審美改善希望」や「咬めなくて困っている」といった内容がない限りは小児矯正治療は勧めておりません。ですから、他院で「すぐ矯正治療を始めた方が良い」と言われてたケースでも、当院では「しばらく待った方が良い」と説明する場合が多くあります。