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マウスピース型矯正でのゴムの大切さ

まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

インビザライン・ゴム

 マウスピース型矯正治療(インビザライン・薬機法対象外)において患者さんがご自身で毎日かけるゴムには大事な役割があります。ですから、少し面倒ですがしっかり使用していただく必要があります。ゴムの掛け方には多くの種類があります。

なぜゴムが必要なのか?

 矯正治療で歯を動かすには、牽引力(引っ張る力)が必要です。よって、ゴムは重要な役割を持っていると言えます。特にマウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)は取り外し可能な装置であるため、ゴムも患者さんご自身で取り外しが可能なタイプを使用します。使用するゴムは直径が短く、割と力が強めのものを使用するため、着脱には少し練習が必要になります。上下の歯並びで互いに引っかける場合を顎間ゴム、上下片方の歯並びのみで使用する場合を顎内ゴムと言います。主に「固定源の補強」「歯の挺出」「左右の調整」という目的で使用されます。

固定源の補強

 マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)は、歯列の後方移動方針を選択することが多いのですが、歯列を後方に強く牽引する力が必要になります。例えば、上の歯並びを後方に移動させたい場合、反対側の下の歯並び全体を基準にして動かしていきます。この基準となる動かさない設定の歯を「固定源」と言います。この固定源となる下の奥歯と上の前歯をゴムで引っ張り合うことで、上の歯並びを後方に移動させる力が発生させます。このようなゴムの掛け方を2級ゴムと呼びます。

 抜歯矯正の場合は、同側の奥歯と前歯で引っ張り合いをします。例えば上の前歯を後方に移動させるために上の小臼歯を抜歯した場合は、上の前歯を後方に引く量を増やしたいため、できるだけ奥歯は前方に動いてほしくはありません。この場合、上の奥歯が固定源となるのですが、これを補強するためにゴムを使用します。こちらも後方移動と同じタイプである2級ゴムを使用します。

 このように固定源の補強にはゴムを前後にかける水平成分の牽引力が強いタイプを使用します。

2級ゴム

使用頻度  ★★★★★
強さ    ★★★☆☆
かけづらさ ★☆☆☆☆

 出っ歯や八重歯の治療で上の前歯や犬歯を後方に移動させる必要がある場合に使用されるゴムです。上は犬歯、下は第一大臼歯にゴムをかけるパターンが一般的です。日本人は上の前歯が前に出ていることが多く、マウスピース型矯正治療で一番よく使用されるゴムの掛け方になります。反作用として下の前歯が前方移動するため下の歯茎に注意が必要になります。

3級ゴム

使用頻度  ★★★★☆
強さ    ★★★☆☆
かけづらさ ★★☆☆☆

 受け口の治療で下の前歯を後方に移動させる必要がある場合に使用されるゴムです。上は第一大臼歯や第二小臼歯、下は犬歯にゴムをかけます。3級ゴムは下の歯並びだけではなく、あご自体も後方に押し込む力が発生するため、長期使用の場合は顎関節への配慮が必要です。

顎内ゴム

使用頻度  ★☆☆☆☆
強さ    ★★☆☆☆
かけづらさ ★★☆☆☆

 主に歯科矯正用アンカースクリューを使用して、上下片側歯列内で水平成分のゴムをかける方法です。ふつう水平成分の顎間ゴムの長期使用は副作用があるのですが、こちらのかけ方は反作用を軽減できます。ただし、後方への牽引力が不足する傾向にあるため、2級・3級ゴムを併用する必要があります。また、歯のボタン同士でゴムをかけることで歯の回転を補助することもできます。

ダブルゴム

使用頻度  ★☆☆☆☆
強さ    ★★★★★
かけづらさ ★★★★★

 2級・3級ゴムを2箇所かける方法です。単純に強さが2倍になるため、後方移動の成功率も高まります。ただし、副作用も2倍になるため、使用する場合は治療終盤での短期間にする必要があります。

歯の挺出

 マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)はプラスティックシートで覆い少しづつ動かす矯正治療方法です。治療中は常に約0.5mmの厚みのシートが介在するため、上下の歯はかみ合わない状態で別々に動きます。よって、事前のシミュレーションより、かみ合わせが弱くなる傾向があり、最終段階で上下の歯を互いに引っ張り合う必要があります。歯を歯茎方向から引っ張り出すこの移動様式を「挺出」と呼びます。このような場合、歯にボタンを設置し上下に垂直成分のゴムを使用します。

 垂直成分の顎間ゴムは、水平成分と異なりゴムをかける距離が短く力が強くなります。また、ゴムを装着中は口が開きづらくなるため、長期使用はできません。

垂直ゴム

使用頻度  ★★★☆☆
強さ    ★★☆☆☆
かけづらさ ★★☆☆☆

 上下で同じ番号の歯に垂直にゴムをかけ、かみ合わせを近づけていきます。口を開けた時の上下の歯の距離が長いほど効果がでるため、奥歯より前歯の方が力が強くなります。

挺出ゴム

使用頻度  ★★★☆☆
強さ    ★★★★☆
かけづらさ ★★★★★

 前歯や犬歯がマウスピースからズレてしまい元の位置に戻したい場合に使用します。あらかじめマウスピースに切れ込みが必要になりゴムもかけづらいのが難点ですが、1歯だけにゴムをかけるため、他の垂直成分のゴムと違って口の開閉の邪魔にならないため長時間使用することが可能です。

V字ゴム

使用頻度  ★★★★☆
強さ    ★★★★★
かけづらさ ★★★★☆

 長めのゴムをV字にたすきがけにすることで、歯を強力に挺出させます。ゴムが2重に通る歯が一番垂直方向に引っ張られます。治療終盤の奥歯のかみ合わせの浮きを確実に改善させることができます。歯に設置するボタンの数が3つと増えるため外れやすく、1つでも外れてしまうと付け直しをしなくてはなりません。

L字ゴム

使用頻度  ★★☆☆☆
強さ    ★★★★★
かけづらさ ★★★★☆

 V字ゴムと同じく歯にボタンを3つ設置するのですが、L字にたすきがけをします。ゴムが2重に通る歯に、垂直方向の牽引力に加え回転力が発生します。歯の回転の反作用で歯が沈むことを予防するかけ方になります。

左右の調整

 下あごの骨格は多少なりとも左右にずれています。それに伴い歯並びも横にずれているしていることがあります。こういった場合は、奥歯に鋏状咬合(シザーズバイト)や交叉咬合(クロスバイト)がみられ、かみ合わせにも左右のズレていることがあります。また、上下の前歯の正中線もズレてきます。このような場合は歯並びを横に動かすように交差させてゴムをかけることがあります。

クロスゴム

使用頻度  ★☆☆☆☆
強さ    ★★★☆☆
かけづらさ ★★★★★

 奥歯のかみ合わせが横にズレている場合に、正しいかみ合わせに持ってくように内側と外側のボタンで歯をまたいでクロスにかける方法です。内側のボタンにゴムをかけることが難しいのが難点ですが、即効性がある方法です。

前歯クロスゴム

使用頻度  ★★★☆☆
強さ    ★★☆☆☆
かけづらさ ★★☆☆☆

 上下の前歯の正中線を合わせたい場合に使用します。上下対角の犬歯に斜めにゴムをかけるのですが、話しづらさなどの問題から短時間使用になってしまいます。左右片側のみ2級や3級ゴムを併用することで効果が上がります。

ゴムも指示通り使用することが大事

 このようにマウスピース型矯正治療(インビザライン・薬機法対象外)においてゴムは、とても大事な役割を持っています。マウスピースのみ使用していてもゴムを指示通り使用していないと、予定通りに歯は動きません。マウスピースの着脱とともに、ゴムも着脱しなくてはならないため、少々面倒なのですが、しっかり使用することが最短で矯正治療のゴールに辿り着けるコツです。

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