ワイヤー矯正のメリット(マウスピース型矯正と比較)
コロナ関連による外出自粛もあってか、ここ半年で矯正治療はワイヤー矯正より、マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外※】の方が、患者さんに選択される事が多くなってきたようにも思います。実際、様々なウェブサイトでは、マウスピース型矯正装置のメリットと比較され、ワイヤー矯正の方が過剰にマイナスイメージで説明されています。という事で、当院も行っているワイヤー矯正についてのデメリットについて、少しフォローの説明をしていきます。
※マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置は完成物薬機法対象外の矯正装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。
目次
ワイヤー矯正の過剰なマイナスイメージ
ウェブサイトの広告なので書かれているマウスピース型矯正【インビザライン】と比較したワイヤー矯正のマイナスイメージは以下です。
・治療期間が長い
・治療中痛い
・食事が取りにくい
・虫歯になりやすい
これらは、ある一面からみるの当てはまるのですが、少し過剰に書きすぎているところがあります。実際は以下です。
治療期間が長い
治療期間というのは使用する「矯正装置の種類」によって決まるのではなく、歯の動かし方である「治療方針」によって決まります。一般的には、マウスピース矯正【インビザライン】は、前歯だけの部分矯正に近い状態など、ワイヤー矯正より歯並びが軽度なケースが多いため、治療期間が短い傾向があります。経験豊富な矯正歯科医であれば、ワイヤー矯正でも歯の動きに無駄はありません。ですので、ワイヤー矯正だから歯が動くのが遅いわけではありません。ワイヤー矯正は難易度が高いケースが多い事が理由です。
治療中痛い
歯が動く痛みというのは、矯正治療を受ける全患者さんにあります。針金を使わないプラスチックのマウスピース型矯正【インビザライン】だから、矯正力が弱いというわけではありません。矯正治療中の歯の痛みは、患者さんの炎症反応の強さによって決まります。いずれにしろ、痛みが強いのは、歯の動き始めである初期だけです。
食事が取りにくい
これに関しては、かなり過剰な内容です。ワイヤー矯正でも1,2か月すれば普通に食事ができます。逆に、マウスピース矯正【インビザライン】は、装着したまま食事ができないため、毎回外さなくてはならない方がマイナスです。しかも、治療を始めている患者さんはわかると思いますが、外食先ではマウスピースを外すために、まずお手洗いに直行しなくてはなりません。実は、ワイヤー矯正の方が気軽に食事ができます。
虫歯になる
今までの歯磨き習慣が悪い人は、そのままワイヤー矯正治療を行うと、虫歯のリスクが高まります。また、虫歯の治療の際は一旦、ワイヤー装置を撤去しなくてはなりませんのでこれも手間になります。ですが、「ワイヤー装置=虫歯を作る」という訳ではありません。虫歯に関しては、唾液の成分やエナメル質の強さで人によってなりやすさが異なります。こちらの方が関係性が強いと言えます。ですから、マウスピース型矯正でも虫歯はできます。指示通りの歯磨きをしっかり行う事ができれば虫歯は予防できます。
ワイヤー矯正の3つのメリット
マウスピース型矯正装置【インビザライン】と比較したワイヤー矯正のメリットは以下です。
1)患者さんの自己管理分野が少ない
2)過蓋咬合治療や抜歯矯正治療が得意
3)治療の質がわかる明確な資格が存在する
患者さんの自己管理分野が少ない
マウスピース型矯正は「患者さんが自分で矯正装置を管理して治療する」方法です。全ての患者さんが、マウスピースの装着を指示通り使用できる訳ではありません。外出先などでご飯を食べた後に再装着する事を忘れてしまう事もあるはずです。中には自律できず、治療から脱落してしまう方もいます。一方ワイヤー矯正は、来院さえキチッとしていただければ、ゴールには必ずたどり着く治療方法です。患者さんの性格に合わせた矯正装置の選択が大事という事になります。
過蓋咬合治療や抜歯矯正治療が得意
マウスピース型矯正【インビザライン】は開咬や受け口治療が得意であるのと同様に、ワイヤー矯正にも得意な治療はあります。それは、過蓋咬合や出っ歯を引っ込める抜歯矯正治療です。これらの症状は、もちろんマウスピース型矯正でも治せるのですが、難易度は上がります。それぞれ、得意な治療というのがあるので、適応症を確認する事が大切です。
治療の質がわかる明確な資格が存在する
ワイヤー矯正には「認定医」「臨床指導医」など学会の明確な資格があります。これには、厳正な症例審査があり、ある程度の治療の質がないと合格できません。また資格取得後も更新審査があり、一定の治療の質が担保されているという事になります。一方、マウスピース型矯正には、治療結果を証明する資格はありません。その代わりに年間症例数の示す「プロバイダー」制度があります。ですが、これは、どれだけ治療を完了させたか?という証明にはなりません。ワイヤー矯正の資格を持っていなくても、治療が上手な先生もいますが、一つの目安になると言えます。