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矯正治療をあえてお勧めしない事もあります

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

矯正治療をお勧めしない事も

当院では矯正治療の相談に来られたすべての患者さんに、矯正治療を勧めるかというとそうではありません。中には一定数の患者さんに矯正治療をお勧めしない事もあります。矯正治療というのは万能な治療という訳ではありません。当院では必要がない治療は絶対にお勧めいたしません。

矯正治療では主訴を改善できない

矯正治療は、歯並びを動かし噛み合わせを治す治療ですが、歯にも動かせる限界量というのものがあります。無理な移動は、治療後の早期の後戻りや歯根吸収などのリスクが高まります。そして、矯正治療では歯並び以外の部分は直接改善する事はできません。例えば、顔の形や滑舌などがこれに当てはまります。中には「肩こり」「頭痛」などもあります。

患者さんの「矯正治療をしたい」と考えられた一番の原因症状を「主訴」と呼び、歯並び以外の要素が強い場合は、矯正治療を積極的にお勧めしない事もあります。患者さんが矯正治療に過剰な期待を持ってしまわないように、当院では正しい情報を提供します。

矯正治療を受ける環境にない

矯正治療を受ける場合は、長期間治療に集中しなくてはなりません。仕事・学業や家庭環境によっては、治療よりもっと優先しなくてはならない事があります。そして、中には「一つの事へ常に集中しており、多くの事を一度に考える事が苦手な方」もいます。そういった方にとっては、定期的な通院や矯正装置の取り扱いの注意、こまめな歯磨きが、時期によっては、大きなストレスになる可能性もあります。

また、学生の場合は保護者の方が通院や矯正装置の使用について自宅で管理してあげる必要がでてきます。「仕事が忙しく、そこまで見れない!」という場合は、お子さんがある程度自己管理できる状態になるまで、治療を見送った方が良いと言えます。

初診相談の際には、現在の生活環境をよく聞かせていただくのですが、ここには大事な意味があります。実は、「患者さんが矯正治療を受ける適切な時期か」を、よく判断させていただきます。矯正治療は緊急性のある治療ではありません。後になっても歯さえしっかりあれば年齢はいつからでも可能なのです。

矯正治療以外の代替治療がある

治療手段が矯正治療一択とは限りません。短期間で歯並びの見た目のみ改善希望の方の場合は、審美歯科治療をお勧めする事もあります。矯正治療は、噛み合わせも治す事ができる良い治療ですが、治療期間と費用がかかるだけでなく、治療後に後戻りのリスクがあります。これらを天秤に欠けた時、審美歯科治療の方が患者さんのニーズを満たせる事もあるのです。

また、歯が欠損してしまい隙間が空いている場合、矯正治療で隙間を閉じる以外にも、インプラントやブリッジ補綴を勧める事もあります。その他、顔の骨格の方が気になる場合は外科矯正治療や美容整形外科治療を勧める事もあります。

長期間の一般歯科治療が必要な方

矯正治療の相談に来れられる方の中には「10年近く歯科医院に行っていない」なんて事も結構あります。治療の優先度は、矯正歯科治療<一般歯科治療です。例えば、1.2か所の小さな虫歯程度であれば、矯正治療と並行して行う事ができます。しかし、神経血管まで進んでいるような大きな虫歯が多数あったり、歯茎が腫れ上がっているようなコントロールされていない歯周病がある場合は、まずは一般歯科治療を優先していただく必要があります。これらの症状がある場合は、完治して矯正治療ができるようになるまで半年以上はかかるため、一旦矯正治療は見送っていただいた方が望ましいと言えます。

初診相談で情報を提供します

初診相談では上記のような情報を、患者さんに全て提供し矯正治療が本当に必要なのかを再度考えていただいております。一度、矯正治療を始めてしまうと戻る事は難しいです。ですから、矯正専門医は無理に矯正治療をお勧めする事はありません。「自分は矯正治療の適応ではない」と薄々感じていらっしゃる事も多く、相談後は納得して帰られます。

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