矯正治療のレベリングステージ

ワイヤー型矯正治療は、様々なステップに分かれています。その中でも一番最初の段階を「レベリング」と呼びます。このステージは「矯正治療の準備運動」といった感じです。
レベリングで行うこと

レベリング(Level+ing)とは「ならす」という意味で、バラバラになっている歯列を正しい向きにそろえるステージになります。全ての歯を一旦正しい向きにして一列のアーチ型にすることで、その後の歯の移動を確実に、そして効率的に行えるようにします。
ふつうは、ブラケット装置に歯の向きの平均値データが組み込まれており、スロット(レール部分)に徐々に太いピッタリとなるワイヤーに交換していくことで、正しい歯の向きになります。
レベリングの期間に関しては、各歯並びによって異なりますがおおよそ4〜10ヶ月程度と考えておいておくと良いです。
レベリングでは主に下の3つを順番に調整します。
1.歯の傾きや回転
2.隣の歯との並び
3.歯根の位置
歯の傾きや回転

レベリングの初期は、丸型で細い断面の柔らかいワイヤーでいろんな方向に向いてい歯を個々に正しい方向に向けます。主に前方や内側に倒れている歯を起き上がらせます。「寝ている歯を起こす」、まさに矯正治療の準備運動です。特に回転している歯(捻転歯)はこの段階で治しておかないと、あとで改善させることは難しくなり治療期間が伸びてしまいます。レベリングの中でもこの初期ステージに多くの時間をかけます。八重歯の抜歯症例ではこの段階で割ときれいに並んでしまいます。
隣の歯との並び方

歯が正しい向きになったあとは、今度は隣の歯と前後の位置や高さを揃えていくステージに進みます。四角型のワイヤーを使用し、ブラケット装置のスロットが一直線になるようにします。このレベリングの中期になると、目に見えて前歯の歯並びの位置がよくなります。
歯根の位置

レベリングの後期では、骨の中にある歯根の位置を正しい位置にそろえていきます。「トルク」といって歯根に回転力が発生するように、ブラケットスロットいっぱいの太めの長方形のワイヤーを使用します。この段階は目に見える変化が少なくなってきますので、患者さんは早く次へ進んでほしいと考えがちですが、大事なステージになります。
レベリングが不足していると…
レベリングは、歯並びのガタガタが多い方にとっては変化が大きくモチベーションも高いステージなのですが、軽度の不ぞろい方や出っ歯の方は目に見える変化が少なくつまらないステージになります。そういった患者さんから、「早く次のワイヤーを交換して進めてほしい」と言われることもあります。ですが、このステージを飛ばしてしまうと、結果的には治療期間が延長してしまいます。特に、レベリング初期の歯の傾きや回転に関しては、抜歯スペースなどがある初期段階のうちにしっかりと治しておいた方が良いと言えます。「早く治療を進めたい」と焦る気持ちもわかりますが、ここはゆっくりと確実に治していきましょう。
また、いくらゆっくりとレベリングを行なっても、ワイヤーのレールであるブラケット装置自体の設置位置が良くない場合は正しく歯は並びません。よって、矯正歯科医はブラケット装置の設置には神経を集中しているわけです。
マウスピース型矯正にはレベリングがない
一方、マウスピース型矯正装置は一気に歯が動きますのでレベリングステージという概念のがありません。ですから、症状によってはワイヤー型矯正治療より早く治療が終わることもあります。ですが、歯根の位置を修正せずに治療が進んでいきますので、無理な歯の移動により歯肉退縮や歯髄壊死などといった副作用が発生する割合が少し多くなります。つまりマウスピース型矯正装置では準備運動不足で治療が進むため、少し事故も起きやすくなります。