矯正治療後のブラックトライアングル

矯正治療で歯を並べた後に、「ブラックトライアングル」と呼ばれる歯と歯の間に黒い三角形の隙間ができる事があります。
ブラックトライアングルとは
ブラックトライアングルとはその名前の通り、歯並びと歯茎の間にできる「黒い三角形」の隙間です。前歯にあると「すきっ歯」に見える事があり、患者さんは審美的な問題で改善を訴える事が多いです。
歯は歯周組織といって歯茎とその下の歯槽骨と呼ばれるアゴ骨に埋まっています。この歯周組織が少なくなってくると、「歯間乳頭」という歯の隙間で盛り上がっている歯肉が減っていき、空隙が見えてきます。

人は年齢と共に歯茎は自然に下がってくると、また口角の筋肉も衰えによって下の前歯が見えやすくなり気になってくる事があります。また、広範囲付着した歯石を除去した後や、歯茎が下がってくる病気である歯周病の治療を行ない、腫れていた歯肉が引き締まった後にも発生する事があります。
矯正治療後にも発生する
ブラックトライアングルは矯正治療後にも発生します。歯列不正のある患者さんは隣り合う歯同士が密着しています。そのため、その間の歯周組織が喪失しているか、もしくはかなり薄い状態になっている事が多くなってきます。そのまま矯正治療を行うと、歯列はきれいに並ぶのですが、歯周組織が喪失している部分が目立ってきてしまうのです。

この際、矯正治療中の患者さんは「まだ隙間が残っているので閉じてほしい」と希望します。ですが、実際は隣り合う歯はしっかり接しており、歯を動かす事で改善はできません。そこで、患者さんは、「でこぼこは」治ったのだが、今度は「すきっ歯」になったと感じる方もいます。
ブラックトライアングルができやすい方
ブラックトライアングルができやすい方には2つの条件があります。
1.前歯の形が逆三角形型で、厚みがなく細長い。
2.矯正前に「強い前歯の重なり」や「前歯が出ている」がある。
もともとの歯の形はかなり影響します。特に前歯の形が、逆三角形の場合は、根本の方が急にくびれるため、隣り合う歯との距離が開きブラックトライアングルが発生しやすくなります。細長い歯の方の方が歯茎も薄い傾向にあり、すぐに歯間乳頭が消失します。
また、矯正治療を受ける前の歯並びに、強いでこぼこやねじれがある場合は、既に隣り合う歯の隙間の歯周組織が喪失している場合もあります。この部分の歯列を改善すると、隠れていた歯周組織の欠損が明らかになりブラックトライアングルが発生します。意外かもしれませんが、でこぼこがなくても出っ歯の方も歯茎から前に歯が飛び出しているため、歯周組織は喪失しています。抜歯をして前歯を引っ込めると、ブラックトライアングルが発生する事があります。

ブラックトライアングルの解消法
ブラックトライアングルか完全になくす事はできません。減らす方法としては2つあります。
1.歯にストリッピングを行い接触面積を増やす。
2.隙間が見える根本にカバーをする。
よく行う方法としては、IPR(ストリッピング)といって歯にヤスリをかける処置があります。通常は歯を並べるスペースを確保のために行われますが、ブラックトライアングルを減らす効果もあります。これは、隣り合う歯を1点で接触している状態から面で接触する状態にする事でその下の空隙を減らす方法です。円錐型の歯を鉛筆型に変えるようなイメージです。

もう一つの方法としては、空隙を虫歯を治す樹脂素材で埋めてしまう方法です。こちらは根本を太らせるイメージです。改善効果は高いのですが、きれいに行うためには高度な技術が必要で、行える歯科医院は限られております。また自由診療のため1箇所5万円前後の費用がかかります。