矯正治療中の食事について
矯正治療が始まってから最初の苦痛は食事です。その辛さが思っていた以上で、治療が挫折しそうになる方もいらっしゃいます。ずっと続くわけではありませんが、ある程度は覚悟が必要です。
目次
歯根膜が痛いため噛めない
矯正装置を装着したその日は「意外と余裕かな?」と感じるのですが、翌日は食べ物が痛くても噛めなくなります。まずは、このメカニズムについて説明していきます。
矯正治療で歯を動かす力を加え始めると、歯根膜(しこんまく)と呼ばれる歯と歯茎と間の血管の膜が拡張します。これが、矯正治療開始直後の「歯が浮いた感じ」になります。
さらに歯を動かすために必要な細胞や炎症性物質が集まってきます。この状態で食事をすると、炎症中の歯根膜が圧迫され強い痛みが発生します。
翌日の食事について
矯正治療開始直後の翌朝の食事ではパンは食べる事はできません。一口カジッただけで「無理!!」だとわかると思います。弾力性があり噛み切る力が必要な食べる事ができません。あらかじめ前日にお粥などを用意しておく事を推奨します。ヨーグルトや栄養補充ゼリー類を購入しておくのも良いです。
食べ物をよく噛まないまま丸呑みで、いつもの食事をしてしまうと、消化不良を起こしてしまいます。胃腸薬なども用意しておいた方が万全です。
少し経つと何でも食べられる
矯正治療開始時はその辛さで一気にテンションが下がってしまうものです。ですが安心してください、この「歯が浮いた感じで、噛むと痛い」のは、大体3〜7日で一旦落ち着きます。
その後3か月くらい経つと矯正治療中の食事も慣れてきます。最終的には、以前の食事に近い状態まで戻ります。焼き肉なんかも食べる事ができます。それでもステーキなどの繊維質のある食べ物は噛みきれませんので、フォークで事前にかなり小さく切ってから口に入れると良いです。
矯正装置に食べ物がはさかる
ふつうの食事に戻り始めると今度は、食べ物が矯正装置に引っかかる事が気になります。ワイヤー矯正装置の場合は、歯とワイヤーの隙間に、これでもかというくらいに食べ物がはさかります。
特にラーメンなどの麺類やネギなどの細い野菜が矯正装置にからまります。麺類が矯正装置に引っかかっている時は一番気持ちが悪いです。こうした時は一度、洗面所で強いブクブクうがいをすると緩和されます。
「パキッ!」と矯正装置が外れる
段々と硬い食べ物も食べられるようになってくると、矯正装置が外れるという問題も発生します。もともと弾力性のある食べ物は矯正装置が故障しやすいのですが、硬い食べ物も注意をしなくてはなりません。せんべいやナッツ、表面が硬いスナック菓子などは、「カリツ!」というあの食感が美味しいのですが、奥歯の矯正装置を外してしまいます。飴玉なんかも、つい癖で最後をガリガリと噛んでしまうと「パキッ!」といって矯正装置を故障させてしまいます。
矯正治療をしている方はわかると思いますが、食事をした後はお手洗いですぐ口をゆすぎたくなります。その際、くれぐれも爪楊枝で、はさまっている食べ物を取ろうとしないで下さい。矯正装置が故障します。外出時は、歯ブラシと一緒に小さい歯間ブラシも携帯しておく事をお勧めします。
マウスピースは外さないと食べれない
矯正治療後にはリテーナーといってワイヤー型矯正治療をしてもマウスピースを装着しなくてはならない期間があります。また最近では、マウスピースで矯正治療を行なう患者さんも増えてきました。
当然ですが、このマウスピースは入れ歯と異なり、噛む機能はありません。ですから、食事の度に毎回外さなくてはならないのです。さらに再装着する時は、少し口の中をゆすいでからではないと気持ち悪く、お手洗いまで行かなくてはなりません。ですから、外出先で「食べ歩き」や「つまみ食い」ができなくなります。ここが段々とストレスになる方もいます。
矯正治療開始前に最後の晩餐を
矯正治療開始直後に、友人と食事の約束をするというのは、止めておきましょう。治療開始から1週間くらいは、食事を「安静」にしておく事が無難です。
ですが、美味しい食事は「人生の楽しみ」であります。矯正治療開始前には思いっきり自分の好きな物を食べておく事をお勧めします。
こういうお話しをすると、矯正治療を終えた患者さんは、こういった苦難を全てを乗り越えた訳で本当に尊敬できます。でも、耐えられないという訳ではありませんので心配しないで下さいね。