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歯列矯正治療1ヶ月で歯の動く量

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

歯列矯正治療1ヶ月で歯の動く量

矯正治療では歯根を移動させる事に大きな時間がかかります。年齢や歯の長さなどで個人差があります。

炎症反応で歯は動く

ヒトの歯には根っこの部分(歯根)があり、歯茎の中の歯槽骨とよばれるアゴ骨に埋まっています。そして、歯に矯正力がかかると、この歯根部が歯槽骨に押し付けられ炎症反応が起こります。そして歯根の進もうとする方向の骨が溶け、反対側の方向に骨が作られます。このようにして、矯正力をかけた歯根は移動していくのです。矯正治療は炎症反応なので歯が動く時、最初は痛いんですよね。

歯の動き方
赤:骨が溶けている(骨吸収)
青:骨が作られれる(骨形成)

この炎症反応がワンクール終わるのには3〜4週間程度かかります。そして、成人の場合、1回の周期で歯根の部分は最大0.5mm程度くらいしか動きません。う〜ん、少ない・・・!?でも、どんな矯正治療方法もこれくらいです。しかも、全ての歯を一気に動かせるわけではありません。アンカー(固定源)という考え方があり、歯列がバラバラにならないよう段階を踏んで動かすため、毎回1、2歯づつしか動かせません。

このスピードだと痛みが強く出たりする事は少ないため、生体に適切なスピードと言えます。強い力をかけすぎると、歯根部が耐えられなくなり、「歯根吸収」といってダメージを受けてしまいます。

マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法適応外】では、1つのアライナーで0.25mm歯冠(歯の頭の部分)が動く量が設定されています。1週間で新しいアライナーに交換すると、4週間で最大1mmほど歯を動かすシステムになっています。

<マウスピース型装置の1か月の変化>

「あれ!?1か月で0.5mmではないのか?」という意見があると思いますが、実際は、この1mmの移動は歯冠といって歯の頭の部分の移動の話になります。歯根部は、結局0.5mmも動いていなかったりするわけです。

10代前半が一番動く

矯正治療は前述のように炎症反応で動きます。ですから、からだの代謝が高い成長期の方が歯茎のまわりの組織の再生が良く、歯の動く速さという点で圧倒的に有利です。さらに10代前半の場合は、歯根の先がまだ開いていおり、栄養血管が豊富です。歯が生えようとする力である「萌出力」が残っているため、一番歯の動きが早い時期になります。歯の「ジェットエンジン」にまっだ燃料が残っているイメージです。

歯根の先が開いている
<歯根の先が開いており歯が動きやすい>

歯根を動かすのには時間がかかる

私たちは、レントゲンを取らない限り、歯茎の中にある歯根を見る事ができません。ですから、歯冠の部分で移動量を計算します。歯冠の部分は動いていても、歯根はほとんど動いていないという事も結構あります。歯根の表面積や形にも、歯の移動量は影響を受けます。一般的には、場合によって4根ある下の6歳臼歯が動くスピードが一番遅いと言われています。下の奥歯を動かさなくてはいけない治療はゆっくり進むので、患者さんには我慢が必要になります。

<4mmの奥歯の隙間と閉じるのに3年。歯根吸収も起きている>

そうすると、歯の根が短い短根歯の方が速く動きそうな気がするかもしれません。ですが私の経験上、歯が動く反応がおこる面積が狭くなり、逆に歯は動きにくいと言えます。

歯は長い方が良く動く

同じ距離でも、歯冠とよばれる見える歯の部分が長い方が速く動く事ができます。これは、実際の歯根の移動量は同じなのですが、歯が長い方が傾斜移動といって歯冠を大きく倒しこむ事ができるからです。振り子の糸の長さのようなイメージです。ですから、歯周病で歯茎が下がった方の矯正治療は、実は治療期間が短かくなると言えます。

<歯が長い方が傾斜移動を使える>
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