開咬はマウスピース型矯正装置が向いているワケ
マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外※】は、様々な歯並びの中で開咬症状が一番の適応症です。
※完成物薬機法対象外の矯正装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります(詳しくは)。
目次
歯の移動に制限があるマウスピース型矯正装置
マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】には過蓋咬合がアライナー(マウスピース)単体での治療が向いていないケースがあると、以前説明しました。
その理由は、過蓋咬合の改善に必要な前歯を沈める圧下移動や、上下顎前突の改善に必要な前歯の歯根のみ動かすトルク移動は、アライナー単体ではかなり困難になります。
アライナーは構造上、傾斜移動と呼ばれる歯を倒す移動は動かしやすいと言えます。ですから歯根をあまり動かす量が少ない、もしくは動かす本数が少ない治療計画はとても治療しやすいと言えます。このような前歯を後ろに倒しこむ治療計画で、もっとも治しやすい典型的な症状は開咬(オープンバイト)になります。
開咬とは、前歯が上下的に全く噛んでいない状態で、奥歯でしか噛めません。症状を持っている方ならわかると思いますがサンドイッチが前歯で噛み切れません。さらに、8020達成者(80歳で20本以上歯を残っている)に開咬症例は存在しないという研究からも、開咬は歯の寿命が短い事も示しています。これは、バランスよく噛む力が歯に伝わらないため、奥歯に過剰な負担がかかりやすいからと考えられています。
【参考文献】8020達成者の口腔内模型および頭部X線規格写真分析結果について
マウスピース型矯正装置の特徴がマッチ
開咬の治し方は、以下の3つです。
①前歯の歯軸を内側に変える
②奥歯を歯茎方向に沈める
③舌癖の影響を最小限に抑える
これを併用しながら治します。従来型のワイヤー矯正も基本的には治療の考え方は同じです。
前歯の歯軸を内側に変える【前歯歯軸傾斜】
多くの開咬ケースは上の前歯が前開きに倒れています。つまり少し出っ歯(上顎前突)傾向になっているという事です。これをスペースを作り、前歯を内側に倒しこむ事で、下にも降りてきて、上下の前歯がぶつかるようになってくるのです。最初に書きましたが、マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】は、この前歯を倒しこむ傾斜移動が得意なのです。
奥歯を歯茎方向に沈める【臼歯圧下】
前歯を噛むようにするための、意外な治療方針はこちらです。顎骨には、頭の骨と蝶番になっています。顎関節という耳の下にある関節を中心に回転運動で開閉できるのです。そして靭帯が延びるとこるまで口が開き、歯が当たるところまで口を閉じます。開咬の場合は奥歯が当たるところまでしか口が閉じれない形になります。ですから、この奥歯をもっと歯茎方向に沈めれば、もう少し口が閉じれるようになり、結果的に上下の前歯が近くのです。
この奥歯を沈める移動を「臼歯の圧下」と呼び、マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】の場合は、意図しなくても毎日アライナーを装着しているだけで勝手に起こります。他の歯並びの矯正の場合は、最後の噛み合わせの調整の際に、奥歯が上手く噛み合わず問題になる事もありますが、開咬の場合だけは、むしろその症状が改善方向に向かうわけです。
舌癖の影響を最小限に抑える【筋機能訓練】
開咬症状の患者さんは、必ずと言っていいほど舌の癖があります。舌小帯と呼ばれる筋が短かく舌が上に持ち上がりずらい低位舌であったり、前歯が空いているため会話時や飲食時に隙間を舌で隙間を埋めようとする舌突出癖がある状態があります。この舌癖は、前歯を前方向に押し出し、前歯が噛むのを妨げてしまいます。
この舌癖の根本改善は筋機能療法(MFT)と呼ばれる、日々の地道な舌の位置を補正するトレーニングが必要になります。
とはいっても、開咬の方は上下の前歯が開いているので、意識せず舌で隙間を減らそとしてしまいます。まずは、矯正治療で歯並びを先に治さなくては、舌癖を改善させる事は難しいと考えます。
その中で、マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】は、歯の裏面までカバーされていますので、前歯にかかる舌圧の力をある程度は減らしてくれます。
わかりやすい特徴は面長
いかがでしたしょうか。マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】が開咬症例に向いている事がわかっていただけたではないでしょうか。
ちなみに、開咬傾向の方のお顔の特徴としては「面長」です。顎がスッと縦にシャープに伸びていて弥生人顔とでもいうのでしょうか。面長の方は前歯の噛み合わせが深くない傾向にあり、マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】治療向きと考えていただいても良いと思います。