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矯正治療での結紮方法の違い

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

矯正の結紮ちがい

 ワイヤー矯正治療ではブラケットのスロットという窪みにアーチワイヤーを通し、外れないように縛ります。これを「結紮(けっさつ)」と呼びます。矯正治療では、毎回アーチワイヤーを外して調整したり、異なるサイズに交換したりしますので、結紮は頻度の高い基本的処置になります。矯正専門クリニックではトレーニングを受けた歯科衛生士が行う事が多いです。

結紮は3つのタイプある

 この結紮ですが、ワイヤー(結紮線)、モジュール(ゴム)、キャップ(クリップ)の大きく3つのタイプに分けられます。治療方針によって使い分けられている医院もあったり、1つの結紮方法で統一されている医院もあります。それぞれの特徴が異なりますので説明していきます。

ワイヤー結紮

結紮線

<ワイヤー結紮>

 ワイヤー結紮は、.010インチ(約0.25mm)の太さのステンレスの針金をブラケットのウィングに引っ掛けて、アーチワイヤーをとめます。ワイヤーをねじっていく事で縛る強さを調整します。持針器やタイニングプライヤーを巧みに扱わなくてはならないため難しく、一定のキツさで締めれるようになるためには、かなりの練習が必要になります。

 ワイヤー結紮は、縛る量で矯正力を調整できるのですが、3つのタイプの中で一番キツく縛ることができます。歯のねじれや歯の角度を直治す場合に向いています。1歯づつ細かく縛らなくてはならないため処置にはかなり時間を要します。また、外す際もワイヤーカッターで切って外します。 歯と歯の間の隙間を絶対開けたくない部分には、結紮線で連続結紮やタイバックを行います。

 ワイヤーの色は銀色のため少し目立ちやすいのですが、実は目立ちづらい白い結紮線もあります。こちらは少し細いワイヤーに白いコーティングをしているため、ワイヤーの縛る力が落ちてしまいます。色はげもあり長期間使用できないため、写真撮影がある時などしか使用されない傾向にあります。

モジュール結紮

カラーモジュール矯正

<カラーモジュール>

 モジュール結紮は、ゴムリングを広げながら、ブラケットウィングに引っ掛けてとめます。処置は難しくなく慣れてくると素早く着脱が可能となります。一番の特徴は、カラーモジュールといってゴムの色に種類があり矯正治療をファッションとしても楽しめる点です。ただ、矯正装置が目立つのことを避けたい場合はクリアタイプを使用します。

 モジュールはゴムのため、ワイヤーと比較して縛る力は弱くなり細かい歯の調整にはむ向いていません。2週間ほどで矯正力を落ちるため、毎回の来院時に全て交換しなくてはなりません。しばらく来院間隔が開くとモジュールが外れてしまうこともあり治療期間の長期化に繋がります。

 口の粘膜との接触にはやさしく口内炎ができづらいのですが、コーヒーやカレーなど色素の強いものの飲食で黄色く変色し、見た目が著しく悪くなる事が難点です。

キャップ結紮

セルフライゲーションブラケット

<セルフライゲーションブラケット>

 セルフライゲーションというスロットの上にキャップがついた特別なブラケットを使用します。キャップを開ける時は細長い専用器具で弾き、閉める時は指で推し、一瞬で終わります。処置時間が圧倒的に短く、結紮時に患者さんが痛みを感じづらいというところが最大のメリットです。セルフライゲーション装置はキャップ分やや厚みがありますが、結紮がないため、見た目は一番審美的です。

 3つのタイプの中で一番矯正力が弱いため、キャップ結紮だけで対応するには症例が限られています。状況に応じてワイヤー結紮を上から2重に行います。最近では歯の裏側にワイヤーをつけるリンガル矯正では、その容易さからほとんどがこのキャップ結紮です。縛る力が弱くワイヤーとスロットの摩擦が少ないため強い歯並びの不揃いがある時は、早く歯が動くというデータもあります。

当院はワイヤー結紮の理由

 3つのタイプを紹介しましたが、当院はほとんどワイヤー結紮です。その理由は、確実に歯を動かすことができるからです。結局、これが矯正力のロスがなく最短距離で治療を進められるため、治療期間の短縮につながると考えています。

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