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床矯正はいつまで効果があるのか?

■日本矯正歯科学会専門医 牧野正志

床矯正治療はいつまで使えるのか?

小学校後半では生え変わりが進み、床矯正を維持する歯が少なくなり使えなくなるため拡大効果が少なくなります。

 

 

 

 

今週、お渡し予定の床矯正装置3つ並べてみました。カラフルで並べるとなんか楽しくなりますね。当院では提携技工所の協力により基本色6色にキラキラのラメも入れる事が可能です。ジュエリー感覚です。としては右下のパープルと上のラメ入りが人気です。自分だけの装置、これなら矯正装置を大切に使ってくれますよね。

 

 

床矯正装置のバリエーション

<色は自由に選べます>

 

 

全て、小学校2年生のお子さんに装着予定のものになります。最近は、プレオルソのような、トレーナー型矯正装置もお子さんの矯正治療としては増えて来ましたが、昔からのクラシックな床矯正装置も使用する事があります。

 

 

 

子供のスペース不足の治し方

小児矯正でのスペース不足の治し方の多くは、「拡大」とよばれる歯列の前方側方への傾斜移動になります。よく「アゴを広げる矯正装置」と言われている取り外しの床矯正がこれに当てはまります。ただし、この拡大治療で広がっているのは「アゴ」ではなく「歯列とそのまわりの歯茎」というのが多くの作用です。

 

 

つまり、骨格を変える力はほとんどなく、拡大量にはそれぞれのケースよって限界というものがあります。これを通り越すと、根っこの部分はそのままで、歯の頭の部分外側に歯並びが広がるだけになります。だんだん上下の奥歯の接触点が減っていき、噛み合わせが悪くなり噛めなくなってきます。また、そのまま長期にわたって使用すると歯茎が下がり歯肉退縮を起こす事があります。ですから、床矯正というのは適応症というのがあり、「スペース不足=拡大矯正」という訳ではないのです。

 

 

拡大床装置の作用機序

床矯正装置は、床部(プレート)と呼ばれるプラスチックに近い薄い材料部分に、クラスプと呼ばれる歯にかける金属のフックがついています。床部は真ん中で二つに割れており、中心部に「拡大ネジ」と呼ばれる手動のスクリューがついています。

 

 

床矯正装置

<割れ目の中心にスクリューが埋め込まれています>

 

 

このスクリューを専用のキーで回すと、床部の割れ目が開き、少し横幅が大きくなります。このまま装着すると、床部が歯並びを横に少し押します。これを決められた日にちに少しづつ行う事で歯並びが拡大していく事になります。量としては1回の操作で約0.25mmほど横幅が広がります。

 

 

例えば、1週間に1回、拡大操作を行うと、大体1か月で1mm歯並びが拡大する事になります。どれくらいまで広がるかというと、症例にもよりますが、奥歯が横に傾斜しすぎない程度で拡大できる量は、8mmぐらいではないかと考えます。

 

 

たまに、「顎が広がり顔が変わるのでは?」と質問される事もありますが、床矯正で骨格は広がりません。つまり、歯並びが広くなっていくだけでアゴは広がりません。骨を超えて広げる事はできませんので限界があります。

 

 

 

いつまで効果があるのか?

床矯正装置はまだ下の乳犬歯(下の前から3番目)が生え変わっていない小学生低学年向けの装置の一つです。ある程度は乳歯を固定源にして歯並びを広げます。この時期は、これから永久歯に生え変わる前なので、歯の下の歯茎も比較的簡単に再形成されます。

 

 

その後、側方歯群交換期といって横の部分の歯の生え変わりが始まると、固定源がなくなり装置の不具合が多くなってきます。「歯がグラグラして使えない」や「永久歯が生えて来たところから装置が上手く入らない」などのトラブルが頻発します。ですから、この時期は歯列拡大が難しく、床矯正の適応時期ではなくなります。

 

 

もちろん、その後の中学生以降で永久歯列になってから床矯正装置による治療をしてもほとんどありません。取り外し装置による治療を希望の方はマウスピース型矯正装置(インビザラインなど)を使用した全顎矯正が望ましいです。

 

 

 

生え変わりに備えて余分に広げても…

歯列拡大を行なっても、歯並びは残念ながら戻ります。時間とともに歯列は段々狭くなっていってしまうのです。戻らないようにするためには、床矯正でも保定といって、その後も矯正装置を使用し続けなくてはなりません。ですが、歯の生え変わりがあったり、装置の使用できない時期があったりすると、1〜2か月程度で前の装置は入らなくなります。そうなると再作成するか、そのまま待機するかのどちらかになります。

 

 

<拡大矯正はやめた後、半分程度は戻ります>

 

 

海外論文などでも、拡大矯正治療は戻るという見解が一般的です。つまり、診断時に後戻りも含め何mm広げるというような計算はナンセンスである事が多いです。

(ただし、固定式の急速拡大装置は異なります。)

 

 

 

 

 

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