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裏側につける矯正装置が外れやすい理由

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

裏側矯正装置はなぜ外れやすい?

歯の裏側にワイヤー矯正装置を接着するリンガル矯正を希望する患者さんは、年々増えてきています。マウスピース型矯正装置【インビザライン】と比較しても見た目は良いですし、食事の度に外す必要もあります。また、ハーフリンガルといって下の歯並びは表側のワイヤー装置にする事で、ほぼ全ての歯並びに適応する事できます。

ですが、デメリットとしては他の矯正装置と比較して、治療途中に矯正器具が外れてしまいやすいという事があげられます。ブラケットという歯に接着しているワイヤーの通す器具が外れしまうと、急いで付け直しをするために来院しなくてはなりません。今回は、裏側につけるブラケット装置が外れやすい理由について説明します。

歯の裏側には矯正装置を装着する面積が少ない

口を開けてみて下の奥歯の表面積を外側と内側で比較してみるとわかりやすいのですが、歯の裏側は圧倒的に装置が装着できる面積が少ないのです。ブラケットと歯の間にある接着材の力は、ある程度は接着面積に影響を受けます。面積が少ない歯の裏側は不利になります。

<外側:青 内側:赤>

前歯に関しては接着面積があっても、歯のねじれや重なりがある事が多く、隣のブラケット装置とぶつかってしまい、接着面積が確保できる領域は、実はかなり少なくなってしまいます。

裏側装置は表側より歯に強い力がかかりやすい

矯正治療は主にブラケット装置にゆがんで固定されている形状記憶のワイヤーが元の形に戻ろうする力を利用して歯を並べます。ブラケット装置がついている歯の隣同士の距離が長ければ長いほど、弱い力でゆっくりと確実に歯を並べる事ができます。逆にこのブラケット装置の距離が短いと歯に強い力がかかってしまいます。

表側と裏側のブラケット装置距離の違い
<表側と裏側のブラケット装置距離の違い>

裏側矯正で使用するワイヤーは表側矯正と比較して半径が半分くらいのワイヤー使います。ですからブラケット装置間で一定の距離を作るのが難しくなります。特に下のワイヤーはかなり小さくなりますので、隣の歯のブラケット装置が近接しますので、少し強い力がかかるだけで外れてしまいます。矯正装置も歯にあまりに強い力がかからないようにある程度の力がかかると外れるようになっています。

噛んだ時に上の装具に歯がぶつかりやすい

裏側装置装着の難点の一つに、上の前歯の装置が下の前歯とぶつかりやすいというのがあります。人の噛む力は100キロにも及びますので、何かの拍子で噛み締めた時に簡単に矯正装置が外れてしまいます。

下の前歯が上のブラケット装置にぶつかる
<下の前歯が上のブラケット装置にぶつかる>

これを予防するために、通常は奥歯にダイレクトトラックといって樹脂素材の材料を盛りで噛む高さも持ち上げる処置を行います。ですが、こちらも歯ぎしりが強い方などはどんどん削れていってしまい、噛み合わせの高さが元に戻り上の矯正装置が外れてしまう事があります。

すぐに再装着にいかないとどうなるか

裏側矯正をされる方には、人前に出る仕事をされている方が多く、普段は忙しくされている方が多いです。ブラケット装置が外れたからといっても、すぐに来院はできない事も多く、次の診察日まで1か月そのままなんて事もあります。

ですが、裏側矯正治療を受けている方はブラケット装置が外れたらできるだけ早く処置をしていただく事をお勧めします。この外れた所をそのままにしておくと、再度ブラケット装置が装着できず、治療期間を3か月くらいはロスしてしまう事があるからです。

特に上の裏側装置は歯茎が腫れやすいため、再接着の際に歯茎が歯肉炎で盛り上がってしまい接着面積を確保できない事が出てきます。そして、歯肉炎によりすぐに出血しまい、水分がつく事で接着が弱くなってしまいます。

また、小臼歯を抜歯して前歯を引っ込めているケースに多いのですが、ブラケットが外れた歯のみ歯列から取り残されたり、最初にあった歯の捻れがまた戻ってきたりすることがあります。そうすると、最初の頃に使用していた少し細い柔らかいワイヤーに戻し再度歯の並べ直しをしなくてはならなくなります。ステップを3か月前くらいに一度戻すため、その分治療期間はロスしてしまいます。

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