小児矯正をやめるタイミング
当院では、必要のない小学生以下の矯正治療は積極的には勧めていません。保護者の方が一時的な改善効果をご理解の上で前歯の歯並びを揃えたり、クロスバイトなどの悪い噛み合わせがあり放置が望ましくない場合のみ小児矯正治療(1期治療)を勧めています。
そこで矯正治療中の保護者の方からのご質問としてあるのが「小児矯正治療の終了時期はいつか?」です。床矯正装置や機能的マウスピース矯正装置(プレオルソ・マイオブレースなど)のやめ時はわかりづらいところです。
目次
小児矯正3つの終了時期
小児矯正治療の最大のデメリットは「治療期間が長いこと」です。その理由は、「歯の生えかわり」と「成長」という要素が絡んでくるからです。よって小児矯正治療の終了時期を明確にすることは非常に難しく症状や各歯科医院の契約によって異なってきます。一般的には以下の3つタイプに分けられます。
1.症状が改善した時
2.永久歯に全て生え変わった時
3.成長期のピークが過ぎた時
<小児矯正3つの終了時期>
症状が改善した時
前歯の軽度の不揃いや1歯だけのクロスバイト(交叉咬合)の場合、骨格や歯の大きさに問題がない場合がなければ、治療後の後戻りはほとんどありません。こういったタイプの方は1年以内に治療を完了し、その後の通院は不要であることがあります。
永久歯に全て生え変わった時
一番多いタイプです。歯が並ぶスペースが不足しており前歯にガタガタ(叢生)があるタイプです。拡大といって歯並びを広げる治療を行うことが多いです。十分に拡大後も戻らないように矯正装置は使用し続けます。その後は永久歯に全て生えったところで小児矯正は終了します。早いと11歳くらい遅いと15歳とくらいで、特に男子の方が生え変わりが遅い傾向があります。
細かい歯並びやかみ合わせの仕上げを行わなくてはならない場合は、そのまま本格矯正治療(2期治療)に進みます。
成長期のピークが過ぎた時
受け口(反対咬合)、出っ歯(上顎前突)、開咬といった症状は、一度小児矯正治療で改善後も下あごの成長観察があるため長期管理が必要になってきます。成長期のピークは女子は14歳、男子は17歳くらいのため、かなり長期戦になります。よって矯正装置の使用期間も長くなる傾向にあります。
治療終了まで矯正装置を使用しなくてはならないのか?
<取り外し式の矯正装置に終わりはない>
例えば7歳くらいから矯正治療を始めると、永久歯が生えそろう13歳くらいまでは最低6年ほど何かしら矯正装置を使用し続けなくてはなりません。矯正装置の使用が就寝時のみであったとしても、お子さんが継続使用していくのはなかなか大変です。床矯正装置をご使用の場合は、側方歯の生えかわり時期に不適合が発生しやすく、少しの期間使用を中断するだけでも歯並びは簡単に後戻りしてしまいます。
「一度小児矯正を始めてしまうと矯正装置の使用はやめられないのか?」というと、やはり多くのお子さんはそのまま装置使用を継続しなくてはなりません。特に審美的に前歯の不ぞろいを治療した場合は、2,3か月という短期間やめるだけで、元の状態近くまで戻ってしまうことがあります。ですので、審美面の早期改善のために小児矯正治療を行なった場合は、永久歯が生えかわるまで絶対に矯正装置を使用し続けなくてはなりません。
治療途中の終了
<無理に小児矯正を続けるなら撤退もあり>
小児矯正治療の終了時期は、お子さんのモチベーションによって予定より早期に来ることもあります。お子さんにとって矯正装置の使用が強いストレスになっており、いつも家族で言い争いになるような状態の場合は無理に続けることはお勧めしません。そのような状態では治療効果も出ません。中学受験と似たようなところはあります。早くお子さんを解放してあげた方が心理面からも良いこともあります。ほとんどの場合、途中中断しても前より歯並びが悪くなるということはなく、治療前の状態に戻っていくだけですのでご安心ください。
2期治療も行なっている歯科医院であれば、その時期が来るまで矯正治療をお休みにすることを相談すると良いです。多くの場合、2期治療は小児矯正治療費のお支払い分との差額分で行うことができます。
小児矯正をしたら一生矯正装置を使用?
前述の2と3のタイプの方は永久歯がそろった後はリテーナー(後戻り予防装置)に変更する必要があります。つまり小児矯正後も何かしらの矯正装置の使用はまだ続いていきます。もしリテーナーを使用しなかったら早期に後戻りするか予測することは困難です。何も使用しなくても、矯正後の歯並びが維持される方は1のタイプ以外ではほとんどいません。
治療後は多くのお子さんがモチベーションなどの問題によって、半年程度でリテーナーを使用しなくてなってしまいます。結局「小児矯正をやめるタイミングは患者さんが決める」ということになります。また、そもそも小児矯正後にリテーナーを作成する歯科医院自体が少数になります。
まとめ
小児矯正治療の終了時期には、症状改善時、永久歯への生え変わり完了時、成長期ピーク後の3つのパターンがあります。多くの場合、治療期間中は継続的な装置使用が必要で、短期間の使用中断でも後戻りする可能性があります。よって、治療後も多くの場合は、リテーナーによる管理が必要となります。ただし、装置使用が子どもの強いストレスとなる場合は、早期の途中終了も検討すべきです。