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マウスピース型矯正装置の再治療について【注意点】

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

インビザラインの再治療

マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】の再治療や転院は、契約と費用の問題で難しいと言えます。

マウスピース型矯正装置による再矯正の増加

 マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】は、以前ワイヤー型矯正装置で治療した方の後戻りの矯正治療などに有効と言われています。それは、ワイヤー型装置にて、歯根が既に正しい位置に移動しているため、歯冠と呼ばれる頭の部分だけ移動すれば良く、倒れてきた歯を起こす事を得意としているマウスピース型矯正装置の使用に非常に都合が良いと言えます。また、審美的な面でも優れているため、患者さんも2回目の矯正治療を抵抗なく受け入れる事ができます。

ですが、マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】で以前治療していた場合の、再矯正治療は少々複雑になります。

5年以内であれば治療は継続できる

マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法適応外】は、コンプリケーションパッケージ(旧・インビザラインフル)というサービスを利用していれば、歯科医院側は最初に発注してから5年以内であれば、費用負担なく何度でもアライナーを発注する事ができます(※)。これは、一度治療を終了したり、中断して少し期間が経っても、マウスピース型矯正治療を再開する事ができるのです。

(※)スキャンや歯型を撮るために消耗材料費がかかります。

 このサービスはとても有効です。意外と矯正治療の中断というのはあります。少し休憩されて再開される方もいますし、治療後のリテーナーとしてもアライナーを利用する事ができるからです。

他院で治療を再継続する場合は注意

マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】の治療後で、仕上がりに納得できず再治療を望まれる方は少しづつ増えてきています。急激に、マウスピース矯正装置を取り扱う歯科医院は増えてきたのですが、やはり絶対的な教育システムと臨床経験数が不足しているからです。

 再治療を行う場合、同じ歯科医院で行うなら問題はないのですが、多くの場合は既に通院していた歯科医院との信頼関係が崩れている傾向にあり、他院での治療再開を希望されます。転医には「転居による通院が難しくなってしまったから」というケースというのも考えられますが、マウスピース型矯正装置は通院回数も少ないため多くは転居先から転医させずに通院する事がほとんどですので、こちらは転医にはならない事がほとんどです。

 つまり、転医のケースは、担当医との信頼関係が崩れてしまっているという理由しかないのです。この場合、2つの注意点があります。

患者アカウントも移動が必要

 マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】のシステムを歯科医院が利用するためには、患者さんのケースごとにアカウントが作られ、システム利用料を支払います。以前マウスピース型矯正装置の治療経験があっても、新規で治療を開始する場合は、新しい歯科医院では再度システム利用料がかかります。つまり、普通に転医すると患者さんの負担する矯正治療費が2倍かかる計算になります。

 ですので、継続で治療を行なっていくためには、転医する場合は以前の担当医と新しい担当医の間でアカウントIDの伝達および承認が必要になります。転医先の歯科医院が手続きを代行してくれる事もありますが、転医する場合はIDの確認と治療経過資料も必要なため、やはり患者さんが自分で連絡を取る必要も出てきます。以前の歯科医院と信頼関係が崩れている場合は難しくなってしまいます。

<治療資料の受け渡しも上手く行かない事もあります>

既にリカバリーが必要な状態になっている事も

 当院でもマウスピース型矯正装置は、大体20%はリカバリーといって従来型のワイヤー矯正装置を使用させていただきます。これにより、マウスピース型矯正装置だけでは予定通りの歯の動きが達成できなかった部分を補う形になります。マウスピース型矯正装置は、まだまだ歴史が浅い治療方法であるため、予想外の歯の動きがあったり、全てのケースが適応という訳ではありません。

 このリカバリーが必要な可能性があるケースについては、一般的には他院の転医はを引き受けてくれる歯科医院は極端に少なくなります。結局は、新規の契約でワイヤー型矯正治療に変更という形になってしまう事が多いと言えます。

 この理由は、一旦、リカバリーになってしまうと、治療期間がかなり長くなる事と、治療の難易度は上がってしまうからです。この状態で転医となると、新しい歯科医院側も、新規の治療費を患者さんから頂かなくてはならない事が多くなります。

<一度リカバリーになると、原因の確認とゴールの再設定が必要になります>

マウスピース型矯正治療の再治療には費用がかかる

 再治療にかかる費用は、程度によって異なります。軽度の調整の場合は、転医の際は通常の4〜6割程度の費用、上記のようなリカバリーが必要で時間がかかるケースは、アカウントを移動できたとしても7割程度の治療費がかかる事もあります。

 そもそもマウスピース型矯正装置の治療費の内訳は、矯正歯科医師の技術量が多くを占めています。ですから「マウスピース1枚がいくら」という計算で治療費が決まるわけではありません。前医のアカウントがあるからといって、同じ治療費でできるとは限りません。

 また、再治療開始時期が前回の治療スタート時から4年程度経っている場合は、アカウントの有効期間が、残りが1年程度となり治療が完了できない可能性が出ます。ですから、マウスピース型矯正装置を使用の患者さんで転院を考えられるのであれば、できるだけ早く行動した方が望ましいと言えます。その方が、治療の返金もある程度してもらえる可能性が高くなります。

<転院を決意する場合は早い方が良い>

治療に責任を持ってくれる歯科医院での治療がオススメ

 当院でも、残念ながら様々な理由で再治療になる患者さんはいらっしゃいます。治療後のリテーナーの使用等は患者さんにある程度委ねられていますので、これをゼロにする事は難しいと考えます。

 結局、再治療でトラブルにならないようにするためには、マウスピース型矯正装置による治療を担当医が責任を持って治療にあたってくれる歯科医院を選択される事が望ましいです。1人の歯科医師が診れる患者さんの数には限界があります。ですから一般歯科をしていない矯正専門歯科医院の方が絶対安心です。

→マウスピース型矯正装置のトラブルについての記事

 最近では、マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】の診療では、毎回の診察で担当医がコミュニケーションを取らずに、歯科衛生士のみが診察して終了するクリニックもあると聞きます。こういった歯科医院の場合、患者さんが、治療の進み方が不安になり、セカンドオピニオンに行きます。症例数は多いのかもしれませんが、心配な方はオススメしません。

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