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【怖い】矯正治療中は歯がグラグラ

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

矯正歯科治療をはじめたばかりの頃に心配になる事No.1は「歯がグラグラして抜けそう」です。

矯正装具を装着する時はどの歯科医院も、「歯が動く痛み」、「食事と歯磨きの仕方」などは説明はします。しかし、意外と「歯に動揺がある事」については、患者さんに伝えきれていない事もあります。2回目の通院時に「歯の異常な揺れに不安に感じた」とおっしゃる方は結構います。ですが、これは矯正治療を始める全ての患者さんに起きる事で、問題はありませんのでご心配される必要はありません。

なぜ歯は動揺するのか

歯根膜があるので動揺する
<歯根膜があるので動揺する>

歯は、直接歯茎と接着しているわけではありません。健康な歯であれば、0.15mmの歯根膜と呼ばれる血液の膜がこの隙間にあります。この膜の中には歯周靭帯といって、大量の細い繊維が走っており、歯が歯茎からつるされている形になっています。ですから「生理的動揺」といって、正常でも0.2mm程度は歯は上下左右に動く事ができます。

そこに矯正治療による持続的な力が加わると、この歯根膜が活性化し、新しい歯茎の組織を作ろうとする準備が始まります。そして、歯を支える歯茎や骨の形が変わり、そこに歯の根の部分が動くのです。この時は歯根膜は一時的に拡張して大きくなります。この歯根膜がある事で歯を矯正治療で動かす事ができるのです。

矯正治療中は歯根膜が開く
<矯正治療直後は、歯根と骨の間に隙間がみえます>

例えるなら、今まで狭かった歯の外堀の血液の池が広くなる事で、歯が大きく移動できる状態になるという事です。ですが、外周(歯茎)と城(歯)を結んでいる外堀のロープ(歯周靭帯)が切れるわけではありません。決して歯が抜けてしまうわけではありませんのでご安心ください。

矯正治療・歯根膜拡大のイメージ

マウスピースを外した時は特にグラグラする

<マウスピースを外す時に歯が抜けると感じる事も>

歯が動く際の揺れは従来型のワイヤー型装置より、マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】の方が著明です。理由は簡単です。ワイヤー型装置は、常に歯が動いている時も補強線が付いている状態ですが、マウスピース型矯正装置は外した時は歯は完全にフリーになり、何も支えがない状態になるからです。よく患者さんから、「マウスピースを外す時に歯が抜けそう」と相談を受けます。ですから、治療開始時はマウスピースを外している時より装着している時の方が落ち着く事もあります。

ワイヤー型装置でも、毎回の調整で一時的にワイヤーを外した時は同じ状態になっています。また、最近は患者さんの負担を減らすために、治療初期は柔らかい細いワイヤーを使用している事がほとんどです。これは、補強線が弱いわけなので、この場合も歯はかなり動揺します。

クロスバイトの時は注意が必要

多くの場合、歯が動揺していても、矯正治療によって歯が動く準備をしているという事で問題はありません。ですが、クロスバイトといって上下の歯が逆になっている場所の矯正治療中は一時的に噛む力が強くかかるため、通常よりかなり歯が揺れます。上下の歯が正常な噛み合わせになると同時に問題なります。

<上下の歯が一時的にぶつかって歯が揺れる状態>

マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】などでクロスバイトを治療している患者さんは、この引っ込んでいる上の歯が出ている下の歯を乗り越える山越えの時期にしっかり矯正装置を使用してもらう必要があります。それは半年以上も長期にわたって同じ歯に力がかかり続けると、ジグリングという歯の横揺れの力が持続的にかかる事になり、まわりの歯肉や歯根にダメージが出始めます。その結果、歯肉退縮や歯根吸収が発生するリスクが高まります。

歯の移動が終わると動揺はおさまる

この歯の動揺はずっとつづくわけではありません。歯の大きな移動が終わるとともに各歯、揺れは減ってきます。ですから、全部の歯がグラグラしているのは、治療を始めた最初だけというのがほとんどですから安心して下さい。その後は、部分的に揺れる歯があり、治療後は2、3か月で歯根膜の血管隙間も小さくなり、生理的動揺と呼ばれる通常の状態まで戻ります。

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