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矯正治療中のMRI撮影

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

矯正治療中のMRI撮影

 矯正治療を受けると、まずは治療自体に平均2年、その後の歯並びの維持である保定は場合によってずっと続きます。その中で、よく患者さんからある問い合わせ内容として「MRI検査をする事になったが矯正装置はどうすれば良いか」があります。

MRI検査とは

 MRIとはMagnetic Resonance Imaging (磁気共鳴画像診断)の略です。強力な磁石と電波で色々な体の断面を画像にして診る事ができます。体内にある水素原子を電磁波の力で振動させ、原子の状態を画像にします。

 よくCT検査とも比較されますが、特に脳・脊椎・四肢などの病気に高い検査能力を持っています。造影剤がなくとも血管の様子を明らかにする事ができるため脳梗塞の検査にも有効です。歯科領域では稀ですが顎関節症の診断でも用いられる事があります。

MRI装置
<強力な磁場で金属が引っ張られます>

MRI を受ける際の注意点

 一般的にはMRI撮影をすると、体内の金属が強い磁場を持ってしまいます。ですが、撮影領域が頭部領域ではなく腹部より下の場合は、口の中が撮影領域に入らないため影響は小さく気にしなくても良いと思います。

 頭部の撮影でも、非磁性体金属であれば問題は少ないです。鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性体が含まれている場合には、撮影前に以下のリスクを検討しなくてはなりません。

  • 金属が引っ張られ動いてしまう
  • 金属が発熱し火傷する事がある
  • 撮影画像が乱れて診断ができない事がある
MRI・金属
<ピアスなどの金属は外していただきます>

歯科治療分野の注意点

 まずは、歯科治療分野については、銀の詰め物・被せ物など虫歯の治療に使用する金銀パラジウム合金は磁性がなく、そのまま撮影を受ける事ができます。人工歯根のインプラントもチタン合金であり磁性はありません。磁石を使用したインプラント入れ歯を使用の場合は相談が必要になります。

矯正治療中の場合の注意点

 矯正歯科治療で使用する金属については、MRI撮影を行う医師や放射線技師の方も、「矯正装置を除去した方が良いか」についてはわからない事が多く、矯正歯科医院に問い合わせるように言われてしまいます。

 頭部領域のMRI撮影の場合、歯をとめているワイヤーなど簡単に撤去できる矯正装置に関しては、できるだけ歯科医院で外してから撮影した方が望ましいです

 一方、裏側矯正装置(リンガルブラケット)など一度撤去すると再作成となってしまう事もあります。追加費用の発生や治療期間の延長がでてきますので、MRIの撮影方法を調整してもらうなどしていただく、相談をしてもらう方が良いかもしれません。

固定式リテーナーは外した方が良いのか?

 矯正治療は自体は2年程度で完了する事が多いのですが、その後につける固定式リテーナー(フィックス)は2年以上装着している事も多いです。頭部のMRI撮影がある場合は、撤去して撮影するか迷うところです。

 固定式リテーナーはステンレスの細いワイヤーをねじり合わせたものを曲げて作成されています。材料はクロム18とニッケルを含むSUS304と呼ばれるオーステナイト系ステンレスです。

 <主な成分:鉄(Fe)70%・クロム(Cr)20%・ニッケル (Ni)10%>

MRI・フィックスワイヤー

 同じステンレスでもSUS430と異なり基本的には磁性は持っていません。製造工程で多少の磁性を持ってしまっていますが、問題ないレベルと言えます。ですから、固定式ワイヤーが故障したり、強い熱が発生したり、撮影画像が大きく乱れる事も少ないです。

 また、固定式リテーナーはこちらも一度撤去すると同じものを再装着させる事は困難です。再作成になってしまい手間と費用が発生してしまいます。できるだけそのまま撮影していただく事をお勧めいたします。

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