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マウスピース型矯正装置はどこでも治療しても一緒?

■日本矯正歯科学会専門医 牧野正志

 

マウスピース型装置は、症状が軽度な場合、どこで治療しても治療結果は大きくは変わりません。医院による違いが出るのは、歯の動かす量が多い、中等度以上の難易度のケースからになります。

 

 

 

人工知能AIが、様々な専門職の仕事を取って替わるという予測は、今どの業界でも話題です。もちろん矯正歯科の分野に関しても例外ではないです。マウスピースカスタムメイド装置などの治療計画策定や歯の移動シミュレーションは、いずれビッグデータが完成し、歯科医師の存在の重要性が低くなるという可能性は否定できません。

 

 

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マウスピース型矯正装置【インビザライン】も、患者さんから「治療システムだから、どこで治療しても結果は一緒ではないか?」という質問を受ける事もあります。実際のところはどうなのでしょうか?説明していきたいと思います。

以下マウスピース型矯正装置(薬機法適応外使用)は説明をわかりやすくするために商品名インビザラインと記載いたします。

 

 

 

 

治療計画の立て方

インビザラインの治療計画の立て方は、検査データを入れて自動で治療計画を出してくるではありません。まずは、先にセファロレントゲン分析や模型分析を行い、ある程度の歯を並べるスペースの獲得方法を検討する必要があります。一般的には、①拡大、②後方移動、③IPR、④抜歯の中から組み合わせていきます。ここの組み合わせ方は何パターンもあり、各ドクターの経験値が影響します。

4つのスペースの作り方▶

 

 

ここで決まった方針を入力しをアラインテクノロジー社に送ると、デジタルセットアップと呼ばれる歯の動きのシュミレーションを作成してくれます。出来上がってきたシミュレーションを各ドクターが修正するのですが、軽度のケースの場合は、ほとんど修正箇所がない事もあります。逆に、難易度の高いケースの場合は経験に基づき、「理想的な歯の移動」から「現実的な歯の移動」に調整していきます。

 

 

 

クリンチェックの問題点

デジタルシミュレーションはスキャナーのサブ機能で、ほんの20分ほどで作成する事ができますが、ここには大きな問題点があります。これには、「歯根」・「歯茎とその下の歯槽骨」・「顔に対する歯の位置」などの歯以外の情報データが入っていないのです。ですから理想的な治療計画はあくまで「歯冠」と呼ばれる見える部分だけを自由自在に動かして作ったプランにすぎないのです。実際動かしてみると、歯根の移動量が多くが予測通りのゴールにたどり着かなかったり、歯槽骨のない部分に歯を動かしており歯肉退縮を起こしたりしてしまう事があります。現状ではセファロレントゲンやCTなどで、各歯科医師が足りないデータをチェックしなくてはならない必要性があります。

歯肉退縮が起こる理由▶

 

 

軽度のケースでは問題は起きないはずなのだが…

歯の移動距離が少ない軽度なケースでは、ある程度はオートマティックに治療計画を立ててくれます。こういったケースは追加で発注するマウスピースも少なく、1年程度の短期間で矯正治療が終了する事も少なくはありません。

しかし難しいところは、未だにインビザライン治療においては「どのケースが難しいか?」がわかりずらいところにあります。簡単そうに見える症例が難しかったり、難易度が高そうと思っていた症例が予想外に簡単であったりする事が結構あるのです。ですから、どのケースが軽度なのかが、わかりにくいのです。当院も導入初期のころは、このパターンで苦労した事があります。

 

 

 

ケース選定が肝である矯正装置

結局、インビザラインは「クリンチェックを出す前の初診時点でのケース選定」と「正しいスペース確保方法」の選択で、治療結果の半分以上が決まる装置なのです。もちろん事前のケース選定の中には、患者さんのコンプライアンスと呼ばれる規定どおりの装置使用が可能なのかも含みます。そして、一度間違った治療方針でスタートしてしまうと、リカバリーする事はとても難しいですし、多くの期間を要します。

 

 

歯科医師も、AIと一緒でそれぞれの以前の経験から、ケース選定と方針選択をします。という事は、治療経験が多い医院の方が、医院にビッグデータが蓄積されているため良い治療ができるとも言えるのです。

 

 

インビザライン

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