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【副作用】矯正治療による歯肉退縮

■日本矯正歯科学会専門医 牧野正志

回復の難しい歯肉退縮

矯正治療で歯茎が下がり歯肉退縮が起きる事があり、ブラックトライアングルが目立つ事もあります。

 

 

以前と違って、今では30代以上の方でも普通に矯正治療を開始します。元々、年齢制限はありませんので、健康な歯と歯茎さえあれば、いくつになっても治療を行う事は可能と言えます。当院でも、普通に50代の方は何人も治療にいらっしゃいます。また、歯周病感染によって崩れた歯並びも、歯周病治療が終わってから一般歯科医より紹介を受けて矯正治療を行なうケースも出て来ました。成人の方の矯正歯科治療では、「歯列」だけでなく「歯茎」にも注意が必要になります。

 

 

 

矯正治療を行う事で歯肉が退縮する事も

実は成人の方は、矯正歯科治療によって歯肉が退縮する事もあります。歯は歯周組織といって歯茎の中の歯槽骨に埋まっています。矯正治療は、この歯周組織の中で歯根を動かし歯を並べるわけなのですが、治療過程上でどうしても歯周組織からはみ出てしまう事もあるのです。

 

 

成長期であれば、歯の移動に伴って歯周組織も再構成される事多いのですが、成人の場合はそのまま歯根部が見えてきてしまう事もあるのです。歯根露出とも言い、見た目上は歯茎が下がったように見えます。歯茎には様々なタイプがあり、特に前歯が縦長で、歯茎が薄い方は歯肉退縮のリスクは高くなると言えます。

 

 

<矯正治療後に下の前歯の歯茎が下がり歯根露出してしまっている例>

 

 

特歯を抜かない拡大矯正の方針の場合に、子供では問題にはならない事が多いのですが、大人の場合は歯周組織が足らず歯肉退縮が起きる事があります。また、話題のインビザラインを中心とするマウスピース型矯正装置も気をつけて治療方針を立てないと、デジタル画面上では自由に歯を移動できますが、本当は歯周組織のないところまで歯を動かしてしまっており歯肉退縮を起こす事があります。つまり生体に無理がある治療計画は、どこかに歪みがでてしまうという事です。

 

 

<インビザラインの前方拡大方針(白:治療前、黒:治療計画)>

 

 

 

歯肉退縮が起きた場合の対処法

一度、歯肉退縮が起きると、回復させるのはかなり難しいと言えます。歯周外科処置などで部分的に回復させるという治療を受けるという方法もありますが、適応場所が限られいる事と長期的にはまた退縮してしまう傾向にあり効果が少ないと言えます。

 

 

やはり個々の歯周組織も考えた治療計画というのが大切になってきます。ただし、これは何を優先するかなので、様々な理由で多少歯肉退縮する治療方針を取らざる得ない場合もあります。ですから、矯正歯科治療前に治療後の歯肉のラインの予測についての説明は非常に大切になってきます。

 

 

治療中の歯肉退縮の予防としては、基本的には歯周病予防にも努めてもらう事です。つまり、日々の歯茎のキワの歯ブラシが大切という事です。また、硬い毛先の歯ブラシでガシガシと磨きすぎというのもよくありません。既に、兆候がある方は、柔らかい毛先に歯ブラシや刺激の少ない音波歯ブラシを推奨しています。もちろん、喫煙は歯茎にとってNGです。

 

 

 

既に歯肉退縮が起きている方の矯正治療

30代以降で矯正治療を始める方は、元々歯茎が下がってきて歯が長くなっている傾向にあります。原因としては、不正咬合で歯列から逸脱している歯は歯周組織の支えが少なくなっている事があげられます。この歯肉退縮が既に起きている場合は、歯茎の中の歯槽骨も減っている事が多いため、矯正治療後にさらに歯茎が下がり歯の根元の部分の隙間が目立ってくるという現象が生じてきます。これをブラックトライアングルと呼びます。

 

 

ブラックトライアングル 矯正歯科治療

<正治療後のブラックトライアングル>

 

 

このブラックトライアングルは、非常に悩まされます。患者さんには、まだ「隙間が閉じていない」と言われるのですが、実際は隣の歯と接触しているため、これ以上隙間を閉じられない訳です。特に上の写真のような歯の形が樽常ではなく、強い逆三角形型の方が目立ちやすいです。

 

 

好発部位としては下の前歯です。人は年齢と共に、下の前歯は歯列の幅が狭くなり乱杭歯になってきますし、スマイル時も口角が下がってくるため、上の歯より下の歯の方がよく見えるようになってきます。そして、治療前にはわからないのですが、歯を並べてみると根元の隙間が目立って、気になってくるという事が出て来るのです。

 

 

 

ブラックトライアングルの解消法

この解消法は矯正治療ではストリッピングと呼ばれる方法を使い、歯と歯の隙間にヤスリを入れるという方法をとる事で減少させる事ができます。。歯の両隣の角を最大0.5mm程度ほど落としてしまいますが、切削量としては多くありませんし、虫歯になりやすくなったりなどの事もありません。ストリッピングはディスキングIPRとも呼びます。

 

 

これにより歯の形が逆三角形型からホームベース型に近づきます。そして、三角形の隙間が減るだけでなく、歯が点接触から面接触になり歯列が安定します。これ以外の方法としては、歯の根元を樹脂性材料でカバーしてしまうという方法もありますが、こちらは中々難しいと言えます。ですから、30代以降の方の矯正治療ではほぼ必ずこのストリッピング作業を行う事になります。

 

ストリッピング矯正・ブラックトライアングル解消

<※ストリッピングによりブラックトライアングルが軽減した例>

 

ブラックトライアングルができやすいという理由からも、シニアに近くにつれ、矯正治療による歯並びを並べるスペース獲得の方法も抜歯矯正治療より非抜歯でストリッピングの方針を取る事の方が多くなるわけです。

 

 

 

▶︎他の矯正治療のリスクについて

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