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【副作用】矯正治療による歯肉退縮

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

回復の難しい歯肉退縮

矯正治療を行う事で歯茎が下がり歯肉退縮が起きる事があります。

<動画で説明>

成人矯正治療の増加で気をつける事

今では30代以上の方でも普通に矯正治療を開始する事が多くなってきました。歯列矯正には年齢制限はありませんので、健康な歯と歯茎さえあれば、いくつになっても治療を行う事ができます。ですが、成人の方の矯正治療においては、成長期のお子さんと異なり「歯列」だけでなく「歯茎」にも注意が必要になります。

歯肉が落ちる歯肉退縮とは

歯は「歯周組織」という歯茎とその下のアゴ骨に中で支えられいます。矯正治療では、歯をなるべく歯周組織の範囲内で動かして並べるのですが、どうしても歯周組織からはみ出してしまう事があります。普通は、それでも移動した先に新しく歯茎が作られ問題にはなりません。ですが、歯周組織の再生が追いつかない場合、歯茎ラインが下に下がっていく事もあります。これを「歯肉退縮」と言います。

<矯正治療後の歯根露出>
<矯正治療後の歯根露出>

歯肉退縮が進むと、黄色い歯の根っこ部分である「歯根」が見えてくる事があります。ここまで来ると「歯根露出」と呼びます。見た目の問題だけでなく、歯根は外部刺激に弱いため、知覚過敏などがでる事があります。

歯の移動による歯肉退縮する様子
<歯の移動による歯肉退縮する様子>

また、歯と歯の隙間の歯肉が退縮し、黒い隙間が見えてくる現象は「ブラックトラアイングル」と呼びます。

歯肉退縮が起こりやすいケース

矯正治療による歯肉退縮は、予期する事が難しく1か月程度で急激に進行します。歯肉退縮が発生しやすい方の特徴としては以下の3つ挙げられます。

1. 薄いタイプの歯茎の方
2. 歯列拡大を行う治療方針
3. デジタル矯正治療

顔が面長の方や歯が縦に長い方は、アゴ骨が華奢で歯茎自体がとても薄い傾向にあります。歯肉の量も少ないため、退縮するリスクも高いです。このような歯茎の方は成長期のお子さんでも歯肉退縮は発生する事はあります。

薄い歯肉はうっすら歯根が透けて見える
<薄い歯肉はうっすら歯根が透けて見える>

さらに歯列拡大という、歯並びのでこぼこを治す際に、外側に向かって歯列を広げる治療方針をとる場合も、部分的に歯周組織の再生が追いつかない部分が発生し、歯肉退縮が発生する事があります。特に下の前歯は、歯根が短く簡単に前方に拡大移動してしまうため、歯肉退縮の発生率は高いようです。

インビザライン 歯肉退縮
<白:治療前、黒:治療計画>

最後にインビザラインなどによるデジタル矯正治療も、歯科医師が気をつけて治療計画を立てないと、歯肉退縮が発生します。これらのデジタル矯正は、ある程度はAIが歯の移動計画を作ってくれます。コンピューターの画面上では自由に歯は移動できますが、本当は歯周組織がないところまで歯を動かしてしまっている事もあります。CTによる歯根の位置を特定しても、全ての歯が治療計画通りに動くとは限りません。最近では歯肉退縮はインビザライン矯正治療で起こるトラブルの中で一番多いと報告されています。

<歯根も考えたデジタル矯正は難しい
<歯根も考えたデジタル矯正は難しい>

歯肉退縮が起きた場合の対処

一度、歯肉退縮が起きると、回復させるのはかなり難しいと言えます。マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】の場合は、再度歯根部を歯茎に戻す様な動きを入れて回復を図るのですが、成功率は40%程度です。さらに下の図のように完全には元の状態には戻らず少し回復する程度です。

インビザライン・歯肉退縮改善
<マウスピース型矯正で歯肉がわずかに回復した例>

また、歯周組織再生療法といって、歯茎が下がった部分に上アゴの内側から硬い歯肉を移植して回復させるという治療を受けるという方法もあります。こちらの方法は適応条件により成功率に差があり、全てにの歯肉退縮に対応しているわけではありません。

という事で、やはり治療前から個々の歯周組織も考慮した治療計画を立てる事が大切になってきます。ただし、これは何を優先するかなので、様々な理由で多少の歯肉退縮する治療方針を取らざる得ない場合もあります。ですから、治療後の歯肉のラインの予測についての説明は、診断時に非常に大切になってきます。

歯肉退縮リスクの高い患者さんにできる治療中の歯肉退縮の予防策としては、歯茎のキワの歯磨きをしっかり行い歯周病予防にも努めてもらう事です。硬い毛先の歯ブラシで横磨きと磨きすぎはよくありません。柔らかい毛先の歯ブラシや超音波歯ブラシの使用を推奨しています。歯肉退縮が起こる前兆として、歯茎に強い痛みが生じる事もあります。なんとなく不安な場合は、早めにご相談下さい。

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