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すきっ歯の治療はマウスピース矯正が第一選択

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

正中離開・すきっ歯の治療計画

すきっ歯(正中離開)の矯正治療は、症状によって部分矯正・全体矯正・補綴治療といった方針が立ち、矯正装置はマウスピース矯正装置が向いています。

すきっ歯とは?

矯正相談には様々な歯並びの方がみえますが、治すべきか迷う歯並びの中に「すきっ歯」があります。専門的には空隙歯列と言うのですが、中でも上の真ん中のみ歯と歯が開いているケースを「正中離開」と呼びます。

このすきっ歯自体は、「噛む機能として生きてく上で問題があるか?」と聞かれると、実は特に問題はありません。上顎前突といって出っ歯症状が併発している場合は、治療対象であるが、すきっ歯だけの場合は「歯抜けみたいで見た目が良くない」という審美的な問題があるだけです。それだけに治療を介入するかの判断はとても難しいと言えます。海外では「幸福が来る」という理由で正中離開のまま治さず活躍しているセレブモデルもいるくらいです。日本では八重歯は欧米諸国ほど気にしないというのと同じようなイメージです。

なぜ、すきっ歯になるのか?

これには様々な理由があります。ここに挙げるのが代表例ですが、遺伝的なものが影響している場合や原因不明の場合もあります。

・上顎に過剰歯という余分な歯が、正中部の骨に埋伏している
・上唇小帯という筋が正中部の歯肉に入り込んでいる
・舌を前に出そうとする力や噛む力で前歯が前に押されて、隙間が開いている。
・欠損歯がありスペースが余っている。歯のサイズが小さい、もしくは歯の形が円錐形など先細りの形をしている
・小学生低学年の歯の生え変わり時期で一時的に隙間がある。

すきっ歯の治し方

すきっ歯の治療の第一選択は矯正治療です。隙間を閉じるのはとても簡単です。ですが、様々な歯並びの中で空隙歯列は一番戻りやすいと言われています。矯正治療後に戻らないようにするために前歯の裏側にフィックスワイヤーという固定式のリテーナーを接着させます。さらに取り外し式のリテーナーも使用して保険をかけます。

このように万全を期しても、残念ながら戻る事はあります。ですから矯正治療を行う事が長期的に考えた場合、必ずしも最善とは言えないのです。

すきっ歯 後戻り
<矯正治療後、リテーナーをほとんど使用していなかった例。すきっ歯が再発している>

部分矯正ができる人は少数

すきっ歯(正中離開)だけという方は、実はあまりいません。多くの方は出っ歯(上顎前突)、過蓋咬合(深噛み)などを併発している事が多いと言えます。基本的にはこのような場合は全体的に歯並びを治す本格矯正治療を行う事を推奨します。矯正治療は、前歯を後ろに引っ張ったり、噛み合わせを治す事はできません。

部分矯正の場合、主に上の前歯6本を半年程かけて並べます。正中離開は下の前歯が上の歯の根元に食い込んでいる過蓋咬合を併発している事が多いため、部分矯正を希望の場合、裏側矯正装置は使用できない事が多いです。この場合目立たないマウスピース矯正装置インビザラインライトをお奨めしています。

小学生の場合は待機

上の犬歯と呼ばれる歯が生えていない小学生の場合は治療は少し待った方が良いと言えます。自然に閉じる可能性がある事と、年齢的に本格矯正治療ができない事が挙げられます。ただし、正中埋伏過剰歯などによって前歯のスペースの量が5mmを超えている場合は、他の歯が健全に生えるの阻害するため小児矯正を行なった方が良いと言えます。

また、よく保護者様から相談を受けるのですが、当院では上唇小帯切除はすきっ歯の治療後の安定性を保証するものではないため推奨しておりません。また、切除するだけでは自然に空隙閉鎖する事もほぼありません。

意外と審美修復治療もアリ

審美修復治療と聞くと、ネガティブなイメージですが、ケースによってはこちらの方が矯正治療を行うより良い場合もあります。コンポジットレジンという虫歯を治す材料を用いて、1回の来院で歯を大きくして隙間をつめる方法もあります。歯の形や色も問題がある場合は、セラミック材料の被せ物(クラウン)やカバー(ラミネートベニア)をして調整します。もちろん、もともと大きい前歯の場合は、形態が悪くなるので推奨しません。

基本的には、歯の形態的な問題が強い場合で、歯並び自体に問題がないもしくは、すきっ歯のみ改善を希望されるケースは審美補綴治療の方が向いているといえます。サイズの小さい歯や形や色が悪い歯の場合は、無理に矯正治療は勧めません。審美補綴治療適応ケースの場合は、結果的には治療が早く安く終わる事もあり、リテーナーも必要ないため後戻りがしづらいです。

すきっ歯の修復
注)審美補綴の場合は当院では行いません。近隣の医院をご紹介いたします。

結局、すきっ歯は治療後が難しい歯並び

このようにすきっ歯は、治療による一時的改善は簡単なのですが、原因も様々のため治療後の維持が非常に難しい歯並びです。治療後の自身での管理がどれだけできるかで、治療方針を選択した方が良いと考えます。特に少しのすきっ歯だけの治療の場合、後戻りしてしまったら治療が無駄になってしまいます。

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