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子供の上唇小帯は切除する or しない?

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

上唇小帯 切除

お子さんを持つ保護者の方だけでなく、近隣の一般歯科医院の先生からもよく相談を受ける事項として「上唇小帯(じょうしんしょうたい)を切除するか?」があります。
当院では矯正治療目的で子供の上唇小帯切除は勧めていません。これは上唇小帯はすきっ歯の原因ではありますが、切除が解決法という訳ではないからです。

上唇小帯とは?

上唇小帯
<就学前のお子さんで結構います>

小帯とは靭帯のようなスジで、口の中に何箇所かあります。ある程度左右に動くのですが、粘膜と比較すると縦に伸びません。強く引っ張ると白くスジが見えて緊張状態になり痛みがでます。この小帯がある事で、安静時に唇の形を維持したり、運動時に唇が伸び切らないよう調整してくれます。

中でも上唇小帯は、上唇の裏側粘膜と前歯の歯茎が繋がっている幅のある一筋のヒダになります。大人になってもありますが、口の中が小さい幼児から小学生の間では幅もあり、よく目立ちます。

上唇小帯が長いとどうなる?

上唇小帯の付着部位が歯に近く、上の前歯の歯茎間まで入り込んでいる状態を「上唇小帯の高位付着(こういふちゃく)」と言います。このような状態の場合、すきっ歯(正中離開)の原因になると報告されています。

また、保護者の方がお子さんの仕上げ磨きをする際に、歯茎のきわが磨きづらかったり、小帯に触れるとお子さんが痛がったりします。その結果、歯磨き不足になる事があります。
長い上唇小帯は転んだ時などに自然切れてしまう事もあります。

すきっ歯の原因である上唇小帯は切除した方が良い?

永久歯の歯並びが完成していない時期であれば、多くのお子さんはもともと「すきっ歯」なのですが、前歯の隙間が2-3mm開いていると見た目の問題で矯正相談に来られます。その際に太い上唇小帯がある場合は、切除するべきか保護者の方から相談を受けます。また、かかりつけの一般歯科の先生から「上唇小帯を切った方が良いのではないのか」と指摘を受ける場合もあります。

上唇小帯 位置
<高位付着はすきっ歯を起こしやすい>

ですが上唇小帯切除は、筋を切るだけとは言え局所麻酔が必要な小手術です。また、スジが歯茎まで入り込んでいる場合は、根元まで除去しなくては効果がありません。小さのお子さんには少々負担が大きいと処置と言えます。日本小児歯科学会の見解では「歯ブラシに気をつけて経過観察」と記載されいます。

結局、「上唇小帯を切除した方がよいか」という質問に対しての当院の方針は、「すきっ歯を治すための上唇小帯切除は、意味がないため推奨しない」す。これには、臨床的に理由があります。

切除しただけですきっ歯が治る可能性は低い

上唇小帯は確かにすきっ歯(正中離開)の原因になります。ですが、必ずなるわけではありません。まだ前歯が生えていない幼児の段階で小帯が大きく付着していてもすきっ歯になるかどうかはわからないという事です。その状態で予防的に切除するのは、過剰医療に近いと考えています。また、幼児の頃でまだ歯科医院に慣れていないの時期に、簡単とは言え外科手術を行うのは大変です。

上唇小帯切除しても自然に隙間は閉じない
<小帯切除しても自然に隙間は閉じない>

小学生になって既にすきっ歯が生じてしまっている場合でも、上唇小帯を切除しする事で勝手に前歯の隙間が閉じるわけではありません。結局、隙間をつめるには矯正治療が必要になります。そして、矯正治療ですきっ歯を閉じる事に上唇小帯の切除は必要というわけではありません。

矯正治療後の安定性も小帯切除と関係性は低い

長期的な予後については、上唇小帯が残っているとせっかく矯正治療をしてもすきっ歯が戻ってしまうリスクがあるのではないかと心配される方もいます。これも小帯の切除とすきっ歯の治療予後の安定性との関係性は低いです。

もともと、すきっ歯(正中離開)というのは矯正治療を行なっても非常に後戻りしやすい歯並びの一つになります。つまり小帯切除をしても、また上の前歯の真ん中が開くがあるという事です。長期的な安定性を考えると上唇小帯の切除より、治療後のフィックスリテーナーで歯を固定してしまう方を推奨します。

すきっ歯 勝手に治る
<切除せずとも矯正治療ですきっ歯を治す事は可能>

以上の内容は「すきっ歯の矯正治療」から見た意見です。「小帯が邪魔で歯ブラシができない」「歯茎の形の問題で上手く入れ歯や被せ物の治療ができない」などの理由での上唇小帯の切除が望ましい事はあります。
幼児の方で上唇小帯が長い方は歯ブラシの際、触れると嫌がります。保護者の方が小帯を優しくどけて磨いてあげる事で問題はない事が多いと言えます。

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