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歯を動きやすくして歯列矯正期間を短くする3つの方法

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

治療期間を短くする方法

通院・装置使用・歯磨きをきちんとするだけで歯が動きやすくなり歯列矯正治療は予定より早く終わります。

秋が近づいてきました。心地よく外を走れる季節です。私も何個かマラソン大会に参加しようと思っています。一つのレースに参加しようと思うと、2〜3か月前から練習が必要です。計画的に週2回、ランニングの時間を決めてからだ作りをして本番を迎えます。素人ランナーですから、結局この日々の決められた練習の量で、タイムは決まってしまいます。

矯正治療も同じ事が言えます。矯正治療というマラソンが始まったと思って下さい。予定より早くゴールまでたどりつくためには3つのポイントがあります。

計画通りの通院

<歯の動きを計算して、次回の予約は取ります>

やはり、計画的に通院する事が大切です。当院では4週〜6週に1回通院してもらいますが、毎回、次の診療時のお口の中を予測して処置を行います。ですから計画通り来ていただければ治療予定期間より早く終わります。

でも現実は、予約通り変更なくきちんと2年間通院するの事はなかなか難しいのです。それは、

・予約の日にちを忘れてアポイントを無断キャンセルが多い。
・いつも少し遅刻をしてしまい処置時間が取れない。
・他の事が忙しくつい電話予約を入れる事が遅くなってしまう。

のような事で適切な来院時期から少しづつズレてくるからです。

例えば、次は4週間後に来て欲しいところを、仕事が入ってしまったので、1週間先に予約を伸ばしてしまうと・・・単純に1週間治療期間が延長します。この積み重ねが4回あるだけでも1ヶ月治療期間が伸びてしまうかもしれないわけです。

矯正治療期間・治療が伸びる理由
<細かな予約キャンセルや遅刻が期間の延長を引き起こす>

予約を守る事が大事!

<通院時間が確保できな場合、治療は進みません>

つまり矯正治療を計画通りに終わらせるためには、

1予約を変更する場合は早めに連絡し予定日後ではなく前に早める。
2なるべく次回の予約はとりあえずでも通院日に取る。
3予約時間にはゆとりを持って来る。

以上のような事を考えておく必要があります。

部活・学業・仕事など矯正歯科治療より優先したいというものがある場合、予約が入りづらかったり、キャンセルがちになります。こういったケースの場合、治療期間が無駄に伸びる事もありますので、当院では矯正治療を始める時期について少しずらしてもらう事を推奨しています。

患者さんだけでなく私たちも、できるだけ早く治療を終わりにしたいと思っています。通院は計画的に行きましょう。

規定どおりの装置使用

<ブレークスルーまで諦めずに続けられるかがポイント>

秋が近くと診療室で受験生の患者さんから「なかなか成績が伸びない」とか「もう時間がない」とか不安を聞きます。でも成績とか偏差値とかって、勉強量ととも比例して伸びるというより、コツコツやっていくと突然伸びたりしますよね。これをブレークスルー言ったりします。「勉強と結果の関係」は、1次関数ではなく2次曲線に近い形です。あとはそれに向かっていかに地道に繰り返すかです。

これと同じ事が、「装置使用時間量と結果の関係」にも、同じ関係が見られます。簡単にいうと2倍の時間使うと4倍の効果が得られますマウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法適応外】やプレオルソ、ワイヤー装置の際に併用する顎間ゴムなどが、この原理に当てはまります。時間的な問題で、さすがに2倍は使えないと思いますが、少しでも多く小まめに時間を増やしていく努力が大切です。また、口腔筋機能訓練(MFT)の効果なども同じです。

矯正装置・使用効果
<矯正装置効果曲線>

これが、半分の時間しか使わなかったとしたら、1/4しか効果はでません。このパターンは結構あります。「装置を使用しているつもりなのだけど効果が出ない」という事で、患者さんのモチベーションは下がり、使用時間もさらに減ります。矯正治療を早く終わりにするためには、しっかり指示どおりの矯正装置の使用が一番の近道です。矯正装置の使用には自制力が必要です。

歯磨きが良い方が良く歯が動く

これは、特にワイヤー矯正で言える事です。歯ブラシ不足で歯垢や歯石がついていると、ワイヤーに沿って動く歯の動きも悪くなってしまいます。矯正のワイヤーは、電車でいうレールです。レールの表面は常にきれいにしておかないと、電車はスピードを出せません。最近、主流の針金結紮のないセルフルフライゲーション型の場合は顕著にその影響が出ます。

審美ブラケット装置
<ブラケットはワイヤーのレール>

さらに歯ブラシが悪く虫歯になりかけると、矯正装置が頻繁に壊れたり(接着が弱く外れる)、虫歯の治療が入り(一時的に中断)、結果的に治療にロスが生まれスピードダウンしていきます。

レールの安全性には、レールだけでなく下の土台がもっと大切という事です。特に、目立たない審美ブラケット装置は、金属ブラケット装置と比較して、歯垢が見えにくく、付きやすいという欠点も持っていますから、より歯ブラシには注意が必要です。 毎日の歯ブラシが矯正治療をスピードアップしてくれます。

3つのポイントを守るとどれくらい短縮できるか

以上の「通院」・「装置使用」・「歯磨き」の3つを守ると、当院の経験からは治療期間が20%くらいは短くなります。20%は大きいですよ!半年弱の短縮ですから。矯正治療というのは、残念ながら、歯科医院に行けば自動で治るという治療ではありません。ですから、患者さんの性格的な面も影響します。ルーティンワークが得意が得意な方の方が早く終わりやすいという事になります。

余談)加速装置について

最近は下火ですが、10年前は「アクセルデント(商品名)」といって微細な振動が出るバイブレーション型装置が、矯正治療による歯の移動速度を上げると一時的に話題になっていました。最近では、「オルソパルス(商品名)」というミトコンドリアを活性化させる近赤外線発生装置がマウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法】治療を中心にしている医院で利用されてき始めています。

<薬機法適応外のOrtho pulse>

この加速装置というのは、効果の測定が難しいと言えます。効果がある患者さんがいる事は間違えないと思うのですが、どのくらの割合なのかがわかりません。つまり適応症がまだあいまいなのです。
また、様々な文献あるのですが、使用しない場合と同一患者さんで比較できない事と、厳密には骨の中の歯根部ではなく、歯の頭の部分での移動速度でしか効果を判断する事ができない事も、少々エビデンスとして不足ぎみです。

ですから、せっかく使用しても効果がない可能性もあるという事を認識の上、使用する事になります。使用効果があるかないかわからないのですが、効果が実感されなくても高額機器のため、治療費に上乗せでチャージされてしまうところも問題点になります。(現在、当院では限定的に使用しております。)主にマウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法適応外】で治療中の患者さんにマウスピースの交換速度を早める形で使用します。

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