矯正歯科治療を行う目的
矯正治療の目的は次の3つです。この目的について説明します。
- 見た目を改善する
- よく噛める歯並びを作る
- 長期的な歯のもちを良くする
結局、歯並びを変える事で、「歯への意識を変える」事が矯正治療の真の目的と考えます。
見た目を改善する
見た目を改善する事は、矯正治療の大切な目的です。実際、矯正治療で相談に来られる患者さんの75%近くが、「見た目の改善」を第一の希望にしています。特に欧米人は日本人と異なり、仕草ではなく会話や顔の表情でコミュニケーションをとる事が多いため、歯並びの見え方をとても気にします。
最近ではマスクをしている事が多いので、歯並びを人前で見せる事が少なくなってきていますが、オンライン画像に映る自分の歯並びが気になって矯正治療を考えるようになったという方も増えてきました。
矯正治療を受ける事で、見た目に関しては必ず良くなります。そして、笑顔の自信を取り戻す事ができます。この点は様々な調査報告や治療終了後の患者さんのアンケートからも証明されています。
よく噛める歯並びを作る
矯正治療を行うことで緊密な歯並びを作ることができます。これにより事実上、上下の歯並びは最大限噛む力が発揮できる状態になります。しかし、歯並びの周囲の骨格や筋肉、そして噛み方などには変化はありません。ですから、「矯正治療前より確実に噛めるようになったと感じられるか」と言われると、「悪くなった」というのはほとんどありませんが、「変わらない」というのは割とあります。
一般的には前歯が噛めない「開咬」や「受け口」といった症状の改善には大きな変化があるように感じますが、それでも治療完了後に、噛み方のリハビリが必要になります。具体的には、タッピングといって上下運動だけであった食べ方に、グラインディングといって「すり潰し動作」を練習して習得してもらう必要があります。
長期的な歯のもちを良くする
良い歯並びは歯周病を予防し、良い噛み合わせは消耗品である歯を守っていくれるというイメージはあります。しかしこの部分は証明が非常に難しいです。8020運動の調査報告の中には、80歳以上で「歯が長持ちしている方は噛み合わせが良い」というデータがあります。ここからバランスの良い噛み合わせが、歯への荷重負担を抑えてくれるという考え方につながっています。
ですが、これは「噛み合わせが悪い方は、歯を早く失いやすい」というデータではありません。そして、「矯正治療を行った方が歯が長持ちする」というエビデンスでもありません。矯正治療を行う事は、歯肉退縮や歯髄壊死など、歯にダメージが加わるリスクもあり、以前に治療した歯を悪化させ早期に失う可能性だってあります。
「長期的な歯のもち」に関しては、今矯正治療を受けている患者さんが何十年か後に証明してくれると私は信じています。
その他の効果は?
矯正治療にはその他に、「顎関節症が治った」「発音が良くなった」「肩こりが減った」などの効果を期待される方もいます。これらの症状は、歯並び関わっていないわけではありませんが、要素としては少量です。
つまり狙ってこれらの症状を改善する事はできないという事です。スポーツや勉強などのパフォーマンスが上がるなどの過剰な期待は禁物です。
見た目から入る事は悪い事ではない
そもそも人間はとりあえず現実に見える事の方を優先します。ですから、患者さんは、矯正治療で「見た目」の改善を重要視します。これは悪い事なのでしょうか。私はそうは思いません。
全ての歯科治療には、多かれ少なかれ審美的要素が入っています。虫歯だって前歯であれば見た目が悪いから治しますし、銀歯より白い材料で修復を希望します。ですから私は、矯正歯科治療を受ける目的が「見た目」からでも良いと考えています。歯並びが良くなり、徐々に歯の大切さに気が付いてもらい、その歯並びを維持しようと口の中の管理に注意を向けてもらう事が、将来的に健康な歯の温存につながると思っているからです。
「歯並びを変える事で、歯への意識を変える事」が矯正治療の真の目的と当院では考えております。