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歯並びの順序が入れかわる移転歯とは?

まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

移転歯とは

 移転歯とは、隣り合う2本の歯が、順番が入れかわってしまうまれな現象を示します。転位歯といって個々の歯の生える位置異常の一つになります。頻度としては上の犬歯(3番)が関わることが多く、一つ後ろの第一小臼歯(4番)か、一つ前の側切歯(2番)と入れかわるタイプがよく見られます。上の犬歯に移転歯があると本来は生える場所に上の犬歯が生えてこないため、乳犬歯の歯根が吸収されずに残存し続けます。

 移転歯は、歯胚といってあご骨の中にいる時から位置や向きに異常があることによるものが多いです。移転歯の中には、歯冠といって頭の部分だけ入れかわっているが歯根の先は正しい位置にあるタイプと、歯根から歯全体が入れかわっているタイプがあります。 後者の方が、重度になります。

 歯並びかみ合わせに大きな問題がないが、移転歯のみがある場合は、特に治療はせず形態修正のみを行い、そのままにしておくことも可能です。ですが、ほとんどの場合は歯列のふぞろいやクロスバイトなど、かみ合わせの問題が併発しているため矯正治療を行う必要があります。

移転歯の矯正治療

 歯の移転を、正しい順番にする方法は主に2つあります。各症例を確認して最適な治療方針を選択します。

移転歯を正しい順番に戻す

 移転歯になっている歯を正しい位置に移動させることは、根本的な治療方法になります。主に、2番と3番が移転している場合に適応されます。しかし、歯が埋まっているあご骨は狭く、歯根をいれかえるスペースはかなりほとんどありません。よって、歯冠だけでなく、歯根までが完全に入れかわっている場合は、元の順番に歯を移動させることは困難となります。矯正治療前のCT撮影で、あご骨の幅と歯根の位置を3次元に把握して、成功率を判断をしていきます。10代前半の方が、あご骨の成長の余地があり、歯根がまだ未完成のため移動させやすく、治療成功率は高くなります。

前方にある移転歯を抜歯する

 歯の順番を整頓するには移転歯になっている歯を抜歯するという治療方法もあります。主に3番と4番が移転している場合に適応されます。前方にある4番を抜歯し3番を前方移動させます。一般的にはその他の部位も小臼歯を抜歯して、上下左右全て1本少ない歯列にします。もともと日本人は前歯の前突や重度のふぞろい症状が多いため、小臼歯4本抜歯矯正を選択することが多いです。抜歯矯正を行うことで移転歯の問題も同時に解決できます。  ただし2番と3番の移転の場合は、どちらを抜歯するか迷うところになりますが、歯根吸収の発生しやすく歯の移動量も多くなる2番を抜歯する方針が多くなります。

 

3番と4番の移転歯

右上の犬歯(3番)と第一小臼歯(4番)が移転しているケースです。歯根の位置が完全に離れているため、順番を入れかえることは難しいと判断し抜歯矯正治療を行いました。歯並び不揃いや正中線の不一致もあったため、抜歯矯正を行うことで、左右対称に歯並びになりました。

移転歯・抜歯矯正

移転歯・抜歯矯正

移転歯・抜歯矯正

移転歯・抜歯矯正

移転歯・抜歯矯正

<症例概要>
主訴:前歯の不揃い
年齢・性別:20代女性
住まい:千葉県八千代市
症状:右上3番4番移転歯・叢生
治療方針:抜歯空隙閉鎖
抜歯:上下左右4番(計4本)
治療装置:唇側矯正装置
治療期間:1年11か月
リテーナー:上下プレートタイプ+フィックスタイプ
治療費用:986,000(税込)
代表的副作用:痛み・治療後の後戻り・歯根吸収・歯髄壊死・歯肉退縮

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