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矯正治療で歯の動きが遅いタイプとは?

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

予定していた治療期間が来たのですが、矯正治療が一向に終わらない時、担当医の先生から「あなたは、歯が動くのが遅いのタイプなので治療期間がもう少し延びそうです。」と言われる事は、よくある事です。患者さんも「仕方ないな…」と治療期間の延長を受け入れる事になるのですが、「最初からわかっていればもう少し心の準備ができたのに…」と思う事もあるのではないでしょうか。今回は、矯正治療で歯の動きが遅いタイプについて説明していこうと思います。

治療期間は歯科医院と患者さんとの約束

成人の方の矯正治療期間は、複雑な治療方針でない限り、おおよそ2年が妥当です。実際、2年を超えてくると、患者さんの矯正治療へのモチベーションと装置使用の協力性が急に落ちてきてしまいます。そうすると、そのままズルズルと3年近く過ぎてしまったり、患者さんから歯並びが未完成のままでも治療の終了を希望されたりする事になります。ですから、治療契約時に「治療期間」は、矯正歯科医は色々な要素を加味して、ある程度は予測しておかなくてはなりません。
当院では、生理学的に「歯の動きが遅い」以下の4つの項目を意識して治療期間を設定します。当てはまる項目が多いほど歯の動きは遅くなっていきます。

歯が小さい・歯根が短い

一般的には、小さい歯や短い歯根の方が早く歯が動くイメージですが、これは逆になります。歯根は「歯根膜」という薄い血管の膜を介して歯茎や歯槽骨とくっついています。矯正力をかけるとこの歯根膜に、歯槽骨を溶かしたり作ったりする細胞が集まる事により組織の再構成が起き、歯が予定の方向に動きます。ですから歯根膜がないと、いくら矯正力をかけても歯は動きません。
小さく短い歯根の歯は、当然歯茎の中にある歯の表面積少なくなり、大きく歯根の長い歯と比較して、歯を移動させるために必要な歯根膜の量も少なくなってしまいます。そうすると、歯の移動も遅くなってしまいます。

<歯根膜の量の多さが歯の動きと関係>

歯のねじれが多い歯列

「捻転歯」と呼ばれているような捻れている歯を逆回転させるには時間がかかります。捻転歯は側切歯や第二小臼歯(前から2番目と5番目)にみられます。
回転運動には前項で説明しました歯根膜全周に矯正力がかかるため、改善に時間がかかります。また、歯周靭帯という歯と歯茎や歯槽骨を繋いでいる健の力ですぐに歯を元の位置に戻そうとする力が働きます。
通常、捻転歯がある場合は、一旦捻れている歯を正しい角度に戻してから他の歯の移動を行わなくてはならないため、治療のステップが一つ増えてしまします。

<歯の回転には歯根膜全周に矯正力がかかる>

エラが張っているがっしりとした骨格

日本人には少ないのですが、専門用語で「ショートフェイス」「ローアングル」や「ブラキー」と呼ばれるような顔面骨格が横広の場合は、面長の方と比較して歯の動きが遅くなります。鼻から下が短く少しエラが張っているようなお顔が当てはまります。
ショートフェイスの方は日常生活での噛む力が強く、矯正力によって歯を動かす事を妨げます。そして、アゴ骨の骨密度も高い事が多く歯が移動するために必要な歯槽骨の再構成にも時間がかかります。

<骨密度が高く噛む力が強いショートフェイス>

年齢

これは、何となく予想はつくかと思います。年齢を重ねるにつれ代謝が落ちていく事で歯の移動速度は遅くなっていきます。ですが、これは患者さんのイメージとは少し異なります。
成長期である10代は確かに歯の動きが圧倒的に速く、20代近くになるとともに急に歯の動く速度は落ちます。その後は、ゆっくりと速度が落ちていく感じです。ですから20代の方と50代の方で比較したら、50代の方は20〜30%治療期間が長くなる程度です。決して2倍も治療期間がかかるとかではありません。

予測外に治療期間が延びる事も…

以上が患者さんが見ても分かりやすい歯が動くのが遅いパターンです。当てはまる内容が多い場合は、初回の担当医の説明より治療期間は延びる可能性が高いと考えていただいた方がベターです。さらに、この内容以外にも治療期間が延びる要素は様々あります。患者さんの通院状況や矯正装置の使用状況も関係してきます。

「歯の動きが遅いな」と感じる時は、1年くらい経ったところで、担当医に進行具合を確認すると良いと思います。それにより、大体の治療期間の予測ができます。例えば、1年で治療の1/3程度しか到達していない場合は治療期間は3年近くかかるという事になります。

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