ブログ

アンテリアガイダンスの重要性

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

アンテリアガイダンス

アンテリアガイダンス(Anterior guidance)という言葉をご存知でしょうか。日本語にするとAnteriorが「前方」、guidanceが「誘導」という意味になります。これは、「顎を動かす方向を、前歯に決めさせる」という意味になりますのこのアンテリアガイダンスは歯列や噛み合わせの長持ちに重要である事を今回は説明していきます。

アンテリアガイダンスとは

天然歯の正常な噛み合わせの場合、食事や歯ぎしりのような顎を運動させた時に、左右の犬歯から犬歯までの6前歯が、歯に負担がかからないように顎の動き方を制限してくれます。下顎を前方に動かす時は4前歯のみが、左右に動かす時は犬歯のみ接触する状態になっている事が重要です。特に左右に動かす際の犬歯の役割はキャナイガイダンス(Canine guidance)とも呼び中でも重要です。それは、犬歯の歯根は非常に長くまわりの骨密度も高いので左右の横揺れに強いからです。顎を動かした時、前歯しか接触せず上下の奥歯は離れている状態になる事がとても大切です。

アンテリアガイダンス
<顎を動かすと奥歯が離れる>

アンテリアガイダンスの役割

前歯と奥歯の働きは大きく異なります。前歯の働きは切歯といって「噛み切る事」であるのに対して、奥歯の働きは臼歯といって「細かくすりつぶす事」が目的です。奥歯はサイズも大きくて、一見強い力に耐えられそうですが、実は非常に繊細な歯です。「縦から噛む力」には強いのですが、「横からの揺れる力」にはものすごく弱いのです。ですから、顎を動かす時、奥歯の負担を減らすために、意図的に上下の奥歯は離れる様になっているのです。アンテリアガイダンスというのは、奥歯を守る役割があり、歯列を長持ちさせる生体のメカニズムなのです。

奥歯は横よれに弱い
<奥歯は横揺れの力の非常に弱い>

アンテリアガイダンスがないと…

正常な歯列と噛み合わせであれば、アンテリアガイダンスは機能します。ですが、前歯の噛み合わせが悪い方の場合は、この大事な機能が発揮しません。この判断基準はオーバーバイト(Over bite)とオーバージェット(Overjet)が正常範囲にあるかでわかります。これは、上下の前歯の重なり具合を縦方向と横方向に分けて計測したものになります。強い歯列不正がなく両方の値が2〜3mmの中に収まっているとアンテリアガイダンスは正常に機能しています。

<正常な前歯の噛み合わせ>

オーバーバイトがマイナスになると「開咬(オープンバイト)」に、オーバージェットがマイナスになると「反対咬合(受け口)」になります。この二つの歯列は上下の前歯が正しく重なり合っていないためアンテリアガイダンスは全く機能しません。このような歯並びで相談に来られるミドルエイジの方を診察すると、奥歯が負担荷重になり歯に破折(割れ)や外傷性咬合(歯周病の悪化)から、奥歯の修復歯や喪失歯が普通の方よりも、多くなっている事が確認できます。論文などからも、多くの歯をシニアになっても健康に維持されている方の歯並びと噛み合わせに「開咬」と「反対咬合」がいない事からも、このガイダンス機能の大切さがわかります。

【参考文献】開咬症例からみるアンテリアガイダンス

アンテリアガイダンス・開咬・反対咬合
<アンテリアガイダンスが機能しない>

そればかりかアンテリアガイダンスがないと奥歯のさらに後ろにある顎関節にもダメージが蓄積されいく事となります。顎の開閉時にクリック音が鳴るだけの軽度症状から、ジャリジャリと擦れる音がしたり、痛みや開口障害などの顎関節症状につながる方もいます。

矯正治療で、歯の喪失を予防できる

顎の正常な機能・歯の喪失予防
<正しい機能は予防のつながる>

矯正治療の目的は「審美改善目的」と「機能改善目的」に大きく別れます。多くの成人矯正治療は、前者の見た目の改善を患者さんは希望されますが、歯科医院を受診する事で、後者が気になりはじめて治療をされる方もいます。開咬や反対咬合の方で「今までずっとこのような歯並びだったから気がつかなかった」という患者さんもいますが、矯正治療後は「これで歯の長持ちができるのであれば安心した」と言ってくださる方がほとんどです。この点から予防歯科治療の一つとして矯正治療を行う意味があると感じます。

このエントリーをはてなブックマークに追加