【朗報】歯の型取りで吐き気がする方へ
歯の型取りの際、吐き気が強く嘔吐反射がある方には、全てというわけにはいきませんが、スキャナーで代用するという方法があります。
私も30代以降、急に甘いものや脂っこいものを食べると、なんか胃もたれするようになってきました。と、いう事で初めて胃カメラしてきました。私は吐き気がすごいため、さすがに口からのカメラはキツイなと思い、恥ずかしながら「鎮静」という眠ってしまう麻酔下で検査してもらいました。
「鎮静」って、本当にすごいんですよね。とても楽で、これなら何回でも毎年受けられそうです。点滴の麻酔薬が入った瞬間は全然大丈夫だなと思ったのですが、その記憶だけを残しあっさりと夢の世界に行ってしまいました(笑)。あとで看護師さんに聞いたら、記憶が飛んでいるだけで、検査中は「オエオエ」いっていたそうです。でも全然覚えていないんですよね。
この喉に何か接触した際の「オエッ」という吐き気の事を嘔吐反射と言います。嘔吐反射は人間の異物を出そうとする自然の生命維持行動です。
そういえば、大学病院勤務時代には矯正歯科の精密検査で、嘔吐反射による吐き気が強くどうしても歯の型取りが怖くて採れないという方は、麻酔科で鎮静下で型取りしていた事を思い出しました。やはり、あの胃が「ぎゅーっ」となって戻しそうになる嘔吐反射は嫌ですよね。
(注:当院では鎮静下の処置は行っていません。)
歯の型取りで嘔吐反射が起こる方
当院は小学生低学年のお子さんが多いのですが、今のお子さんは3〜4割は嘔吐反射をもっていて、この粘土で歯型を取るのを嫌がる傾向にあります。嘔吐反射は歯科恐怖症があり緊張状態にある事や、舌の根元の部分(舌根部)が敏感で反射が起きやすい事が原因としてあげられます。特に口呼吸で低位舌の方は嘔吐反射が起きやすいです。
嘔吐反射の対処法
嘔吐反射の患者さんには当院ではこのように対処します。
・歯型を取る前にゆっくり鼻呼吸をしてリラックスしてもらう。
・歯型の粘土の硬さを調節して舌の方流れないようにし、早く粘土を硬化させる。
・歯型を取る前に匂いや味のついたものを軽く舌の上に乗せる事で気持ちをごまかす。
最近は、虫歯の治療をした事がないお子様も多く、初めて歯型を取るのが矯正歯科医院であったりします。ですから、歯型とる私たちも細心の注意を払っていますが、やっぱり4人に1人くらいは嘔吐反射が起きます。歯型は矯正の記録や装置を作るためには必要な処置で、矯正治療中は何度か取ります。嘔吐反射が強い方は先に言って下さいね。
でも、安心して下さい。回数を重ねると共に歯型を取られる事にも慣れてきくるもので、吐き気も段々減って来る事が多いです。つまり、嘔吐反射の半分はメンタル的な事が関与しているという事なのです。
歯の型取りではなくオーラルスキャナーを使用する手も
それでもどうしても歯型が取れない場合は、バンド装置など特定の装置作成がない限りはオーラルスキャナーで済ませてしまうという方法があります。これは、歯型をとらずに写真を撮る感じで立体的に歯列を記録し、コンピュータ上に表示させます。そして、このデータでマウスピース型矯正装置や裏側の矯正装置などを作成する事も可能です。
また、小学生のお子さんの場合で小児用マウスピース型矯正装置【プレオルソ】などを使用する予定の場合は、模型による歯並びの記録が必要ありあませんので、特に有効と言えます。
※現在、当院では小学生低学年の最初の精密検査は、歯型ではなく、この口腔内スキャナーによるカメラ撮影になっております。
従来型の歯型もとる事がある
まだ、日本はオーラルスキャナー後進国なので、全ての矯正装置を3Dデータで作成する事ができるわけではありません。日本矯正歯科学会の専門医申請提出用資料にも患者さんの石膏模型が必要なため、従来型の歯型も採取する事が多いと言えます。
口が開きづらい顎関節症の方や親知らずのカメラでの撮影は難しいため、スキャナーヘッドの小型化などがまだ必要です。また、バンド型矯正装置の作成には、まだ歯の型取りが必要なため、全ての方にオーラルスキャナーが対応できるわけではありません。
床矯正装置やリテーナーなどはスキャナー画像を技工所の3Dプリンターで出力したもので作成する事もできます。ただし、装置の納期が早くなるわけではないため、急ぎの場合は従来型の歯型の方が良い事もあります。