子供の矯正【1期治療】のみで終了できるケースとは?
まだ永久歯列が完成していない小学生のお子さんの矯正治療は1期治療と呼びます。その後は、永久歯列になった後に仕上げの矯正治療を行います。これを2期治療と呼びます。このように、生えかわりの時期で矯正治療契約が異なります。
歯やあごの大きさの問題が少ないお子さんの方が1期治療のみで終われる可能性が高いです。ですが、2期治療を行う前提で子供の矯正治療は受けた方が良いと考えます。
1期治療で終わるかは教えてくれない
「矯正治療はお金も時間もかかるので、できるだけ小児矯正(1期治療)だけで終わりにしたいのですが?」という保護者の方の要望は、どこの歯科医院でもあります。
色々な矯正歯科で相談したが、「1期治療で終われるかもしれないし、もしかしたら2期治療が必要かも」と説明され、どこにいって曖昧にされてしまうケースが多いと思います。矯正歯科医側も未来は分かりませんし、責任が取れないため「1期治療で必ず終わる」とは言い切れないのです。
1期治療の目的
1期治療でできる事は主に2つです。それは、「前歯の噛み合わせを良くすること」と「見える前歯の歯並びを一時的に並べること」です。その他に関しては、誘導はするが、効果は保証はされていません。
また「前歯の歯並びを治す」という目的は、永続的な効果を保証する事はできないのです。小児期で一時的に前歯を並べても、奥歯の生え変わりとともに再び崩れてしまう事はよくある事です。つまり、これは一時改善にすぎません。
そもそも1期治療のみで終了できる事はあるのか?
2段階で矯正治療を行う前のよくある質問として、「1期治療でどこまで治るのか?」というのがあります。私はいつも「平均70点」とお話しをします。あくまで1期治療終了というのは矯正治療の途中経過です。ふつう2期治療を行い歯並びを完成させる事を勧めます。とはいっても、現実は約50%の方が1期治療のみで終了します。その理由は以下です。
・様々な理由で通院できなくなってしまった。
・子供がワイヤー矯正に対するモチベーションがない。
・2段階目の追加費用の問題で治療しない。
・気になる部分が1期治療だけで歯並びが良くなってしまった。
この中で、保護者の方が気になるのは「1期治療で終わるのはどのような歯並びか?」という事です。それを知りたくて何件も相談に回っている方もいます。ですが、子供の成長予測は難しく本当に「1期治療で終わるか」を断言するのは難しいのです。当院の今までの治療経験から以下の条件を満たすケースが1期治療のみで終了できる可能性が高いです。
①歯が小さく前歯のスペース不足が軽度の症例
②上の前歯2本のみ突出している出っ歯症例
③骨格に問題要素が少ない受け口症例
わかりやすい基準としては歯が大きくスペース不足の量が多いケースはほぼ2期治療が必要という事です。このような場合は保護者の方と相談して、あえて1期を行わず永久歯列が完成するまで治療をウェイティングする事もあります。その方が、患者さんの時間的負担が少なくて良い場合があります。
歯の生えかわり速度も関係
また開始時期によっても2期が必要か決まります。小学生高学年で下の犬歯(前から3番目の歯)が生えかわっている場合は混合歯列期後期という状態になります。この時期は2期治療を行う前提で1期治療を開始する事になります。歯科医院によっては異なりますが、1期と2期がセットになっている費用体系もあります。
(当院も1期+2期治療セットの費用体系です)
側方歯が生えかわる時期は「交換期」といって、2年くらいかけて計12本の奥歯の生え変わりが始まります。最初に抜ける事が多い側方歯である下の乳犬歯が抜ける時期は、前後2年の個人差がありますが10歳くらいが一般的です。あまりに歯並びのスペース不足が著しい場合は、早めに乳犬歯が脱落してしまう事もあります。
歯並びの生え変わりに前後2年のスピード差があります。生え変わりの早い子と遅い子では4年程度違う事もあります。同じ9歳でも歯の生え変わりが早いAさんは1期2期治療セット契約、生え変わりの遅いB君は1期治療契約といった感じです。矯正専門医院では基本的に1期治療のみで終了することを推奨してはおりませんので、生えかわりが早いと損をするという訳ではありませんのでご安心下さい。
当院の治療費は総額制ですので、準備矯正から始めて2段階で本格矯正へ行っても、本格矯正から始めても費用は一緒です。
保護者の方の希望も重要な要素
1期治療には限界があります。それは治療期間、使用できる装置、治療への協力度など色々と制限があるからです。きちんと揃えた歯並びを目指したい場合は2期治療を行わずに完成さるには不可能に近いと言えます。
お子さんが細かい歯並びまで気にする事はありません。できる事なら早く治療を終わらせたいというのが本音だと思います。結局、保護者の方がどこまで治療をやらせたいかというのも子供の矯正のゴールを決める要因の一つと言えます。
ですから、当院では1期治療の事を「小児矯正」ではなく「準備矯正」と呼びます。あくまでも2期治療の準備と捉えています。決して1期治療は「早く終わる費用の安い矯正プラン」というわけではありません。