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マウスピース型矯正【抜歯症例】の失敗例

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】は「歯を抜かない非抜歯治療が向いている」事は間違ありません。これは、抜歯を併用すると奥歯の前方への倒れ込みが発生し失敗しやすいからです。状況によって、このリカバリーには、ワイヤー型矯正装置を併用する方が望ましい場合があります。

※マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置は完成物薬機法対象外の矯正装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。

なぜ抜歯症例では奥歯が前方に倒れるのか?

インビザライン・奥歯の倒れ込み
<奥歯の倒れ込み>

矯正治療では、歯を並べるスペースが大きく足りない時や、前歯を後ろに引っ込める時に、小臼歯と呼ばれる前から4番目や5番目の歯を抜歯する方針が取られます。抜歯矯正では、前歯と奥歯を引っ張り合いして、スペースを閉じていきます。この際、前歯と奥歯が互いに平行移動して近づきスペースが閉鎖できると良いのですが、実際マウスピース型矯正装置では予想通りに行く事は少ないです。

普通に歯を前に引っ張ると、歯茎に埋まっている部分はほとんど動かず、歯の頭の部分(歯冠)のみ前方に倒れるように動いてしまいます。特にマウスピース型矯正装置の場合は、噛む面が覆われているため、歯茎方向に沈む力がかかりやすく、そのまま倒れなが歯茎に埋まっていってしまいます。このような状態に一度なると、マウスピース適合が悪くなり、1,2か月で一気に倒れ込みが進行してしまいます。この状態が「抜歯矯正の失敗」です。

奥歯が倒れると噛めなくなる

奥歯が前方に倒れると、前述のように歯茎方向に沈んでいくため、上下の歯の噛む接触点が減少し、かみ合わせが悪くなっていく事があります。噛んだ時に、奥歯はスカスカで前歯のみ強く当たります。このような状態を専門用語で「臼歯の近心傾斜」や「ボーイングエフェクト(歯列がたわんだ状態)」と呼びます。
全てのマウスピース型矯正装置による抜歯矯正で、この状態が発生するわけではありませんが、奥歯の移動量や歯の形、噛む力など様々な要素が絡み合って発生します。「臼歯の近心傾斜」のまま、正常咬合を作る事はできませんので、倒れてしまった奥歯を反対側に起こすステージが必要になります。

インビザライン・ボーイングエフェクト
<臼歯近心傾斜>
<上の奥歯が前方に倒れ込んでいる>

倒れた奥歯を元に戻す方法

インビザライン・セクショナルアーチワイヤー
<セクショナルアーチワイヤー>

傾斜してしまった奥歯を元に戻すためには、歯根にモーメント力といって回転力をかける必要があります。モーメント力をかけるためには、歯の根本に近い部分に大きな力を長い期間かけなくてはなりません。ですが、上から歯をつかむだけのマウスピース型矯正装置でモーメント力をかけるには限界があります。歯の横から回転力をかける方法が必要です。
この点で、歯の横面に矯正装置をつけるマルチブラケット装置は有効です。マウスピース型矯正装置奥歯の倒れ込みの度合いが重度の場合は、速やかに部分的にブラケット装置を装着し部分ワイヤー(セクショナルアーチ)を使用した方が効果的です。
その他、奥歯の倒れ込みが中程度以下の場合は、マウスピース型矯正装置にゴムかけを長時間併用する事で間接的に回転力を発生させリカバリーをする事が可能です。

失敗からのリカバリー治療例

上の小臼歯を2本抜歯したマウスピース型矯正治療を行ったところ奥歯の倒れ込みが発生した失敗ケースを紹介します。途中、抜歯した部分への奥歯の倒れ込みが発生したため、重度の右側は部分ワイヤー装置を装着し、顎間ゴムを使用して歯を起こすリカバリー治療を行いました。

インビザライン・抜歯失敗
インビザライン・抜歯失敗
<上の左右奥歯の前方への倒れ込み>
インビザライン・抜歯失敗
<部分ワイヤー装置・顎間ゴムを併用したリカバリー>
インビザライン・抜歯失敗
※患者さんからは写真使用について許可をいただいております。

<症例概要>
主訴:出っ歯
年齢・性別:25歳・女性
住まい:千葉県八千代市
症状:上顎前突・正中線のズレ
治療方針:抜歯空隙閉鎖・右下遠心移動・IPR
抜歯:右上第二小臼歯・左上第一小臼歯
治療装置:商品名(インビザライン・薬機法適応外)
治療期間:2年9か月(5〜7週間交換)
アライナー枚数:43+36+29+25ステージ
リテーナー:上下プレートタイプ+下フィックスタイプ
治療費用:900,000(+税)
代表的副作用:痛み・治療後の後戻り・歯根吸収・歯髄壊死・歯肉退縮
その他の副作用とリスクについて▶︎

<レントゲンでの右上奥歯歯根の位置変化>

治療期間は、2年9か月と大きくかかってしまいましたが、患者さんがしっかりゴムをかけてくれたので、ゴールまでたどりつく事ができました。タラレバの話ですが、ワイヤー型矯正治療で行っていれば、半年は治療期間が短くできたかもしれません。リカバリーには、それだけエネルギーと時間を消費します。

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