ユーティリティーな働き【リンガルボタン】の使い方
様々な歯の部位に接着できる小型で汎用性があるリンガルボタンについて説明します。「リンガル」というのは「舌側(裏側)」という意味ですが、表側にも装着できるユーティリティーなアタッチメントです。最近では、マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】でよく使用されます。ボタン型やフック型など様々な形がありますが、基本的には顎間ゴム(エラスティック)やパワーチェーンをかけたり、ワイヤーを縛って使用します。
3つの使い方
ブラケットと比較してリンガルボタンのメリットは小型で必要な時にすぐに接着できます。ただし、接着面積が小さいため少し外れやすいというデメリットもあります。主な使い方として3つあります。
顎間ゴムをかける
一番多く使用される方法です。矯正治療は上下別々に進みますので、ほぼ必ず顎間ゴム(エラスティック)を使用して上下の歯列を互いに引っ張る事を行います。表側装置では、既にワイヤーやブラケットについているフックと呼ばれるものでゴムをかけますが、裏側装置(ハーフリンガル )やマウスピース型装置【インビザライン・薬機法対象外】の場合は新たにゴムをかけるフックを設置しなくてはなりません。そこでリンガルボタンを設置します。奥歯には外れづらいように金属ボタンを、見える前歯は目立ちづらいクリアボタン(プラスティック)を選択します。
シザースバイトなどを治す時は、舌側(つまりリンガル側)からゴムをかけなくてはならない事もあります。このような時は裏側に設置する事もあります。そもそもリンガルボタンはこのような目的に使用されるために制作されたのでこのような名称なのです。裏側に設置する際は、表面が滑らかでゴムがかけやすいキャプリンフックを良く使用します。現在では、マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】のアタッチメントとして使用する事が大分増えてきました。
歯のねじれを治す
小臼歯によくある捻転といって歯の捻れを治す際、リンガルボタンは活躍します。歯の捻れを治す場合は、表裏から同時に反対方向への力をかける必要があります。こういった時に歯と歯の隙間の狭いスペースにパワーチェーンをかけるために利用されます。個々の歯並びの不正の中で捻転は、意外と改善難易度が高いため、この方法が一番効率的です。リンガルクリートという薄い引っ掛けがついたボタンの方が食事時にチェーンが外れにくく多用されます。
狭い部分の一時装置として
過蓋咬合(深噛み)・クロスバイトなどの際は、噛み合わせた時に反対の歯にぶつかるため、ブラケットを設置する十分な接着面積が得られない事があります。その他にも叢生(でこぼこ)が強い時も隣の歯が近すぎて矯正装置を設置できません。このような時には、ブラケットの面積も厚さも半分以下のリンガルボタンを一時的に設置します。ある程度歯並びが並んだ後に、ブラケットに付け替えをします。
歯茎の中に埋伏している歯を開窓して引っ張り出す際にも利用します。接着するベース面の形を変形させやすいメッシュタイプのボタンを使う事が多いです。
このように、リンガルボタンは「かゆいところに手が届く」矯正装置なのです。