デンタルモニタリングの有効性
新型コロナウィルス感染拡大に伴いステイホームが続く中、歯科でも特例でオンライン診療が認められました。そこで、矯正歯科ではデンタルモニタリングといって、患者さんが通院しなくても、自宅で歯並びの治療経過を画像媒体で歯科医院に、定期的に送る事で、負担を減らすというシステムが広がり始めました。
歯科のオンライン診療とは?
そもそも歯科医療には保険診療と自由診療があります。今回、厚生労働省が特例で認めたのは保険診療において、電話やビデオ通話による初診です。今までは、初診は、歯科医師と患者さんが直接対面をしてからでないと遠隔診療は行う事ができませんでした。今後具体例としては、「これは歯科医院に通院して見てもらった方が症状か確認したい」「以前の治療した歯の状態確認」といった時の使い方になるかと考えられます。歯科診療は、患者さんへ直接的な施術を行う必要があるという特性から、2回目以降は来院の必要性が出ます。つまり、オンライン診療は以下の2つのパターンで有効という事になります。
1. 気になる症状について簡易診察を受け治療方法の説明を受ける
2. 以前通院した事があり治療経過について確認をしてもらう
矯正歯科でのオンライン診療
矯正歯科治療は基本的には自由診療になりますが、オンライン診療は保険診療と同じような使い方になります。
1. 気になる歯並びについて簡易診察を受け治療方法の説明を受ける
2. 矯正治療中もしくは治療後の歯並びについて確認をしてもらう
1は初診相談です。現在多くの医院で行われている通話アプリを利用したビデオ相談になります。相談の上、おおまかな治療方針に納得したら、実際に来院して矯正治療用の精密検査を行います。
2はモニタリングです。患者さんに歯列を自分でスマートフォンなどで撮影した画像を歯科医院に送ってもらい行います。その上で、医院で保管してある以前の口の中の写真と比較して経過を確認します。このモニタリングが上手く行くためにはある程度条件が必要になります。
モニタリングの条件
矯正歯科治療においてモニタリングを成功させるためには以下の2つの条件が必要です。
✔️ 医院での処置が少ない治療方法の選択
✔️ モニタリングツールの精度
ワイヤー型装置など定期通院が必ず必要な矯正装置の場合はモニタリングには向いておりません。現状では、患者さんが自己管理して治療を進めるインビザラインのようなマウスピース型矯正装置のみ可能です。その上、さらになるべく通院しなくても大丈夫なような治療計画にしておかなくてはなりません。医院でしか行えないストリッピング(IPR)や追加装置などなるべくないようにしなくてはなりません。
さらに、もっと大切なのはモニタリングの精度です。多くの医院では、矯正患者さんが来院時暗い口の中を鮮明に写すため、専用の口を引っ張る機械やミラーを入れて、強いフラッシュが出る一眼レフカメラを使って写真を撮ります。これに近い状態を撮影する必要があるのです。今現状では、次のような専用のスキャナを使用するシステムが出ています。
このモニタリングに関しては、新型コロナ感染を機に参入してきていますので、今後は多くのシステムがリリースされると思われます。
上手く口の中をセルフ撮影する方法
デンタルモニタリングもような特別な機器がなくともセルフで上手く撮影するコツがあります。ポイントは2つです。
✔️セルフィーを使わず、鏡の前で確認しながらタイマーで撮影する。
✔️明るい場所で展望レンズや接写モードを使用する。
自分で口の中を撮影する際、被写体の歯列がしっかり写っているか確認するの事が一番難しいといえます。セルフィーカメラ(スマホ画面側のカメラ)を使用すると、画面を見ながら簡単に撮影できるのですが、これはおすすめしません。これは、セルフィーカメラは背面カメラより画素数が少なく、画面を見ながら撮影するため距離が離れるからです。どうしても歯列の画像が小さく画像が荒くなります。
当院では、洗面台の前で行う事をお勧めします。照明は全てつけて部屋を明るくして背面カメラを使用して撮影します。被写体の位置やピントは鏡に写ったスマホ画面で確認します。この際、できるだけ歯列を近くで大きく写せるようレンズモードが選択できる場合は拡大レンズや接写モードを使用する事をお勧めします。さらにタイマーを設置した方がスマホの持ち手がシャッター時にブレなくて良いです。今のスマホはかなり性能が良いので、十分良い写真が撮影できます。
通院しないのにコストはかかる
遠隔で矯正治療のモニタリングを行っている歯科医院は増えていますが、通院する場合と費用は変わらない場合が多いです。矯正治療費は総額制を採用している割合が多いです。そうすると通院回数が減るのという事は一回あたりの通院費は高くなるという事もあります。モニタリングには医院に様々なコストがかかるため、決して安くなるというわけではないのです。
矯正歯科におけるデンタルモニタリングのシステム化は歯科医師が介在するセルフ矯正のような形に近いかもしれません。