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子供の矯正治療、早く始めないと手遅れにならない?

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

子供の矯正治療・手遅れ

私が小学生の頃、矯正治療は永久歯列が完成した中学生くらいになってからワイヤー装置で開始するのが普通といったイメージでした。それが、私が矯正専門医になった頃にはいつの間にか、まだ乳歯が残る小学校低学年から早期に始めた方が良いというような風潮になっていました。

とはいっても私もクリニック開院当時は、小学生の子供の矯正治療を積極的に勧めていた時期もありました。それが、年月の経過と共に、様々な治療経過を経験する事で、効果で出やすい子供のみ早期治療(小児矯正)をするように、適応症を絞る様になってきました。そして、今、新型コロナウィルスの感染拡大により、緊急性が少ない小学生のお子さんの初診相談を一時停止する事としました。その理由を説明します。

2020/5/26に、小学生の矯正相談は再開いたしました。

小児矯正の効果は不安定

一般的な早期治療の目的は「歯列とアゴの成長を正しく誘導する事」と言われています。ですが、小児矯正治療だけで歯列が完璧になるまで治るケースというのは限られます。多くの場合はその後に2期治療と呼ばれる仕上げの全体矯正が必要になります。

2期治療まで終わったところで、「小児矯正の効果があったのか?」評価をする事はとても難しいです。もしかしたら、早期治療をしなくても、最終的にな結果は同じだったかもしれません。でも、治療介入してしまうと、比較もできませんので、判断する事が難しいと言えます。

1期治療の評価は難しい
<1期治療の評価は難しい>

「歯を抜かないで治療ができる可能性が増える」という説明を聞く場合もありますが、小児矯正を行う事で100%抜歯をしなくて良くなるかというと、そうではありません。実際に担当医に「本当に抜歯しなくて良くなるんですね」と聞いてみると良いと思います。当院でも小児矯正後、上下小臼歯抜歯をしているケースもあります。つまり、この説明の根拠はあいまいなのです。総じて、小児矯正治療の効果というはとても不安定なものだという事がわかります。

小児矯正をしないと大変な事になる?

「早く矯正治療を始めないと、後で取り返しのつかない事になる」と、保護者の方が思いこんでいる事もありますが、実際はそんな事はありません。中学生以降から始めても十分同じレベルの治療結果が得られると当院は感じています。小児矯正をしなかったら、2度ときれいに歯並びを治せなくなるという事は絶対ないのです。逆に早期から始める事で相対的に治療期間は長くなりお子さんの負担が重くなる事もあります。

<特に床矯正は効果の割に使用期間が長い>
【参考】拡大床を使った矯正歯科治療の危険とトラブル

小児矯正から始めると治療期間は長期にわたる

小児矯正治療から始めると治療期間はとても長期に渡ります。7歳から初めて2期治療まで進むと治療が終わるのは14歳ごろです。2段階矯正治療を受けますと通院期間は7年にも及びます。その間、お子さんは、何かしら矯正装置をずーっと装着し続けなくてはなりません。「早期から始めると、2期目が楽になる」といったお話もありますが、果たして本当に治療が簡単になっているか疑問に感じる事もあります。

小児矯正・長期化
<7年にもわたる2段階治療の例>

海外ではこんな論文もあります。「早期の拡大治療は、生涯リテーナーを使用しなけらば、歯列を維持できない」(Robert ML, AJODO 2002)。これは、よく行われる「アゴを広げる矯正治療」を早くに始めると、その効果を維持するために、後戻り予防装置の使用負担が増えると言う話です。

当院が考える小児矯正治療の2つの目的

当院は上記の話をの保護者の方に必ずします。その上で、「歯列の見た目がどうしても気になって、中学生まで待てない」もしくは、「今、噛めない・痛いなどで噛み合わせに困っている」という主訴があるかを確認してから、治療期間は長くなる小児治療を行うかを選択してもらっています。

小児矯正・推奨パターン
<小児矯正の歯列型分類>
左側の6型でお子さんに症状がある場合は小児矯正を推奨

相談の結果、半分以上の保護者の方は、永久歯列が完成するまで待機される選択をします。こういった背景から、当院は小児矯正とは「前歯の歯並びと噛み合わせの一時改善」と位置付けています。ですから緊急事態宣言中は、無理した治療開始を勧めておりません。

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