【明解】ヘッドギア使用する目的
サービカルヘッドギアは非抜歯による歯列矯正を目指す場合は、高い確率で上の奥歯を後方移動させる事が可能であり重要な装置です。
目次
ヘッドギアの使用目的
現代のよく見る表側のワイヤーによる矯正治療である「エッジワイズ法」が始まったのはおよそ100年前です。矯正の祖と呼ばれているエドワード・アングルがアメリカで発表し広まりました。その当時の治療方針はというと、ほぼ歯を抜かない非抜歯矯正治療でした。ですが、全てのケースを非抜歯で仕上げる事は難しく、その弟子のツィードが小臼歯抜歯方法を推進していきました。その後、抜歯・非抜歯論争は今日まで永遠に繰り返されています。ちなみに日本では、矯正歯科治療は当時「歯列矯正」と訳されていました
非抜歯による歯列矯正を行うための鍵は、歯を並べるスペースをいかにして作るかです。その中でも奥歯を後ろに引っ張って、歯ならびの奥行きを作る方法を「大臼歯の遠心移動」と呼びます。この方法に使用する代表的な昔からある治療装置がヘッドギアになります。
ヘッドギアの詳しい歴史はわからないのですが、日本でも最低50年以上は使用されている効果が保証されているクラシックな顎外矯正装置です。当院でも、八重歯になりそうな小学生高学年のお子さんに、ワイヤー装置をつける前の準備矯正として第一選択として使用しています。
ヘッドギアの効果
当院で使用しているのはサービカルタイプといって、首のバンドを固定源にするタイプになります。他にも、帽子のようなヘッドキャップから上方牽引するハイプルタイプや、前歯に力をかけるJフックタイプなどがあります。
サービカルヘッドギアの効果には、3つあります。
1.大臼歯遠心移動(主に八重歯症例)…スペース作り
2.上顎骨成長抑制(主に出っ歯症例)…上顎が前方に出るの事を抑制
3.奥歯の固定(主に抜歯症例)…抜歯スペースの効率的な利用
当院では短期的効果が発揮される1番のみの場合に使用しております。
スペースの獲得目的でヘッドギアを使用する場合は、使用時間は毎日8時間以上、使用期間は主に6か月〜1年程度になります。時期が良く効果が早い方は1,2か月で目的を達成してしまう事もあります。八重歯を治す場合は、ちょうど上の犬歯が生えてきた頃が適切な使用時期です。
タイミングを逃すと短期的な効果は得られなくなってしまいます。その場合は、抜歯を併用した方法やアンカースクリューといった付加装置を併用する事になります。
また、ヘッドギアを利用して後方移動を行える患者さんは、元々ある程度歯ならびに奥行きがある方になりますので、全ての八重歯の方に使用できるわけではありません。精密検査・診断を行い方針を決定します。
ヘッドギアによる歯列矯正は意外と楽
ちょっと名前からすると、ごつい装置のイメージを想像してしまいますが、単純な装置で誰でも慣れると簡単に付け外しができます。奥歯にバンドという専用リングをはめ、そこにフェイスボウと呼ばれる弓状のフレームを差し込みます。首にバンドをかけて、フェイスボウをゴムで引っ張ります。
子供は就寝時の使用のみの使用としています。一見、寝心地が悪そうですが、寝返りしても早々外れません。口の中に装着するわけではないので、他の装置と比較しても違和感は少ないという感想もあります。
痛みに関しては個人差がありますが、朝と起きた時に動かしている奥歯がやや痛みます。朝ご飯を食べる時、なんだか力が入らない不思議な感じを受ける程度です。昼にはなくなります。
ヘッドギアの使い方
ご自身で取り外ししていただきます。
まず鏡の前でバンドのチューブの位置を確認しながらインナーボウを装着して下さい。フェイスボウを外れないように押さえながら、ネックバンドを首の後ろからまわして装着して下さい。お口の小さい方などはフェイスボウの装着に時間がかかりますが、感覚を覚えると装着できるようになりますのでご安心下さい。最初のころは保護者の方が補助していただくと良いです。ネックバンドの差し込む穴は基本的にはマーキングしている場所で入れていただきます。ただし、緩くてよく外れてしまうという場合は1つ強くしても構いません。
使用時間は毎日平均10時間を確保して下さい。
成長ホルモンが分泌される就寝時には必ず装着して下さい。装置を装着することで治療は進みますので、1日おきにしか使用しないなどの場合はほとんど治療は進みません。治療スピードを上げたい場合は、起きている間も使用していただくことを推奨します。
管理について
使用しない時は所定のケースに保管して下さい。フェイスボウは毎日水洗いして下さい。またネックバンドは外して洗濯もできます。ネックパバンドは力の調整をしていますのでタオルなどを巻かないようにして下さい。フェイスボウの破折や口腔内のバンドが脱落することがあります。その場合は使用を中止して下さい。フェイスボウが外れやすい場合、調整が必要になりますのでご連絡下さい。
お痛みがあります。
個人差がありますが、使用開始してから3~5日は歯が動く痛みがあります。お食事の際しばらく奥歯に力が入りません。少し柔らかい食べ物を推奨します。
調整のために、来院時に必ずお持ち下さい。
歯にかかる力を確認したり、フェイスボウを調整します。就寝中に、よく外れてしまう方はフェイスボウとチューブの摩擦力などを調整します。
ヘッドギアの付け方
ヘッドギアをつけるのには、少し練習が必要になります。最初は鏡の前でゆっくり確実に装着しましょう。慣れてくると簡単につけられるようになります。もし子供さん一人でつけづらい場合は、保護者の方が最初はお手伝いしてあげて下さい。
①フェイスボウ装着
まず上下を確認して下さい。ダイヤマークがある方が上です。鏡を見ながら片方づつ上の奥歯のチューブに差し込んで下さい。片方の手でほっぺたを引っ張りながら、よくチューブの穴を確認しましょう。
②装着確認
左右ともチューブにフェイスボウが入りましたら、しっかり前から押さえて下さい。これで奥までチューブに入ります。
③ネックバンドをかける
ネックバンドを、きき手と逆側のフェイスボウに引っ掛けてください。右利きなら左側にかけます。よく強さのマークを確認してネックバンドの表側が前にくるように引っ掛けましょう。
④フェイスボウにかける
ネックバンドを後ろから回して装着ネックパッドを首の後ろをぐるっと回します。そのまま左右の手を持ち替えて、反対側から引っ張ってフェイスボウに差し込みます。この際、フェイスボウが抜けないようにしっかり使っていない方の手で前から押さえる事がポイントです。コツをつかむまでは意外と力が必要です。鏡を見ながら正しい強さのマークに引っ掛けましょう。
⑤装着完了です!
慣れると1分以内に装着できるようになります。