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先天性欠如歯【先欠歯】がある場合の子供の矯正治療計画

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

天性欠如歯がある場合は、本格矯正で抜歯もしくは補綴治療が必要であるり、子供の矯正を行う意味は少なります。

子供用の電車のおもちゃの車輪が1つなくなってしまっていました。車輪は4つもともとついていましたので、1つなくなるだけで遊べなくなります。残念ながら、車輪だけではパーツ販売していなかったので、3つしか車輪がないその車両はお蔵入りに・・・。
子供の先天性欠如歯がある場合の治療計画でも同じ事が言えます。

先天性欠如歯とは

先天性欠如歯とは乳歯の下にある永久歯が、歯の種ごとない状態を指します。日本小児歯科学会では10人に1人の割合でみられると報告があります。また稀ですが、6歯以上先天性欠如歯がある場合は健康保険適応の矯正治療が受けられます。(当院では保険診療は行っておりません・大学病院などをご紹介します)

<先天性欠如歯が出やすい部分>
<先天性欠如歯が出やすい部分>

先天性欠如歯は前から2番目もしくは5番目の歯に多く発生します。その上に残されている乳歯については、一生もつわけではなく、おおよそ20代前後で歯根が吸収し、動揺するか脱落してしまいます。
下の第二乳臼歯(前から5番目)などは長く持って40代くらいまです。乳歯は歯の摩耗も早く、それ以上は難しいと言えます。

乳歯 歯根吸収
<先天性欠如部分の残存乳歯の予後>

つまり先天性欠如歯がある場合は、遅かれ早かれ乳歯がなくなり、そこに隙間が残ってしまうため、歯科治療で何とかしなくてはならなくなるという事になります。

1歯だけの先天性欠如の方針

こここでよくあるケースですが、患者さんに治療計画を説明しにくいのがたった1歯だけ先天性欠如(以下先欠歯)になっているケースです。先欠歯の場所によって多少変わりますが、主に第二小臼歯と呼ばれる前から5番目の歯の場合を想定します。

<パノラマレントゲンで発見されます>
<パノラマレントゲンで発見されます>

先欠歯があるが歯並びが気にならない場合

基本的には歯並びと噛み合わせが気にならない場合は、矯正歯科治療は行いません乳歯はできるだけ、温存して脱落した場合にインプラントやブリッジなどの欠損補綴に変える事になります。できるだけ、今残っている乳歯を長く持たせる事を考えます。このようなケースに矯正治療を行うと逆に乳歯の歯根吸収が加速し脱落を早める事になってしまう事もあります。
ですが、実際は、矯正歯科専門での先欠歯の相談する方は、他にもでこぼこや出っ歯なら歯並びの問題を持っている事が多いため、こちらの方針になる事は少ないと考えられます。歯並びの問題が前歯のみで軽度な場合は、部分矯正治療のみ行うという方針も取る事もあります。

<先天性欠如部に歯を増やす方針>
<先天性欠如部に歯を増やす方針>

先欠歯があり歯並びも治したい場合

矯正歯科治療はスペースを作って歯を並べる治療です。ですから半分くらいの方は元々抜歯を併用した矯正治療が必要になります。よって、

奥歯に1本先欠歯あり→3本永久歯を抜歯による本格矯正治療

となる事がほとんどです。

もともと歯が足りないのにさらに減らすのは抵抗があるところなのですが、もし温存させる場合は将来的に矯正治療+欠損治療で治療期間と治療費用の二重負担がかかってしまいます。

また、「先欠歯部分の乳歯のみ抜歯をし、奥歯を手前に寄せて隙間をつめれないか」というの質問をよく受けるのですが、この治療方針が取れるケースは多くはありません。理由は、奥歯の乳歯のスペースはかなりおおきい上下左右対称に歯の本数を合わせないと正中線がズレたり上下の歯を上手く噛み合わせる事ができないからです。

先欠歯の方針
A.矯正をせずに欠損補綴 B.3本抜歯による本格矯正

先欠歯がある場合の小児矯正

前から2番目の歯である側切歯の欠損、小児矯正の相談時である7〜9歳でわかる事が多いです。側切歯はしばらく生えてこない場合、前から見てもわかりますので保護者の方も気が付きやすい部位になります。

一方、奥歯である前から5番目の第二小臼歯の欠損は、レントゲン写真を撮影しないとわかりません。見える部位ではないため保護者の方も、かかりつけの先生も気がついてないケースもあります。

いずれにしろ先欠歯がある場合は、治療期間を長期化させないために小児矯正(1段階目)は行わない傾向にあります。噛み合わせに問題がなければ、全て永久歯に生え変わる12歳前後から本格矯正で治療開始が望ましいです。もちろん、「受け口」や他の問題がある場合や「一時的に歯並びをよくしてほしい」という希望がある場合は準備段階を行う事もあります。

また、小学生低学年の時期からスペース不足を補う歯並びを広げる床矯正治療を始めている方も、先欠歯がある事が確認されたらすぐに治療を中止します。これは、後で抜歯矯正になった場合、歯並びを小さくする治療を行いますので、歯並びを広げる小児矯正自体が無駄になってしまうからです。先欠歯の有無は小学生時期に確定します。これにより突然治療方針が変わる事がありますから、小児矯正では毎年必ずレントゲン写真を撮影するのです。

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