男子の矯正開始時期は小学生?中学生?
「まわりから早く矯正治療始めた方が良い!と聞くのですが、男の子の矯正治療はいつから始めた方が良いのでしょうか」
初診相談で男子小学生や中学生の保護者の方から、こういった質問を受けます。これについてですが、男子の矯正治療開始のお勧め時期は高校生です。
男子は成長期は18歳までと長い
矯正治療は、成長期に行った方が良いというのは間違ってはいません。ここで言う成長期とは後期の身体骨格成長の利用です。具体的には以下のようなメリットを享受できます。(前期成長は小学校低学年)
- 代謝が良く、矯正治療で歯が動くのが早い
- 上下の歯が噛み合わさろうとする力が残っているため、矯正治療の仕上がりが良くなる
- 下あごの前方への成長が残っているため、出っ歯傾向の治療がしやすい
ただ、厳密には男女で骨格の成長終了時期は異なります。女子は平均15歳まで骨格や身長の成長は止まりますが、男子はその後も平均18歳まで成長は続きます。ですから男子の場合、高校生から矯正治療を開始しても十分成長を利用する事が可能なのです。
<骨格の成長期は男子の方が長い>
逆に男子の矯正治療を小学生から始めると、長くても15歳の時点では終了している事が多いです。治療が早く終われるのはメリットですが、その後に、残っている成長要素で歯並びが変化し、崩れてしまう可能性がある事がデメリットとしてあります。これは骨格が非対称の方(顎の長さが左右で異なる方)に発生しやすい傾向にあります。このようなケースは18歳以降に再矯正治療を検討する事もあります。
最近は永久歯への生え変わりも遅くなっている傾向にあり、中学生終盤でそろうお子さんも多くなってきたため、矯正治療開始時期も遅くなってきています。
男子は矯正に対するモチベーションが上がるのが遅い
矯正治療を行う目的には、噛み合わせを良くする「健康」がありますが、見た目を良くする「審美」の要素もあります。 男子が容姿を気にするようになる時期は女子と異なり、少し遅くなります。中学生の男子で、本人は全く歯並びを気にしていないのですが、保護者の方だけが気にされている事があります。このようなお子さんに、無理やり矯正治療を受けさせると良い治療結果が得られないことがあります。それは、矯正治療を成功させるためには、患者さんご本人の協力が絶対必要になるからです。これが、矯正治療で歯並びが明らかに良くなっていく事で、治療を継続するモチベーションになります。それは、矯正治療が成功するためには、患者さんの協力が絶対必要だからです。
例えば、矯正装置には、ゴムやリテーナーなど必ず取り外し式の装置をどこかの段階で使用しなくてはなりません。さらに、ていねいな歯磨き・定期的な予約受診など、お子さんにも協力してもらう必要があります。生活の自己管理が始まったばかりの中学生男子には、矯正治療は精神的にやや早期だと言えます。
また、矯正治療をする上で、抜歯を併用しなくてはならない方も半分近くの割合でいます。この部分についても、中学生男子の場合、抵抗が強い傾向があり治療が始まらなかったケースもあります。
男子中学生は意外と忙しい
男子は、一つの事にしか集中できない事が多いです。中学生から矯正治療を始めると、多くは運動部が忙しい時期や高校受験と時期が重なります。この中で、矯正治療で来院してもらうのは少々酷と感じます。器用に色んな事に挑戦していけるお子さんであれば良いのですが、多くの場合は「部活の試合や試験前に痛みがある処置は避けて欲しい」など、なかなか矯正治療の受診を優先する事ができません。
さらに中学生は食生活も一気に変化するため、ジュースや炭酸飲料の多飲などで、簡単に虫歯ができてしまう方もいます。中学生男子の保護者の方が、食事の度に歯ブラシをしてもらうように管理する事は中々できません。矯正治療を行って、歯並びは良くなったのですが、虫歯が多発してしまったら、何のために矯正治療をしたのかわからなくなってしまいます。
開始時期は高校入学時がベター
<男女で最適な矯正開始時期は異なる>
最近は、就学前から矯正治療を始めるケースも見受けられるようになってきましたが、管理期間が長くなるため、当院では流石に早すぎだと思っています。治療開始は、早くても上の前歯2本しっかり生えてくる頃まで待った方が良いです。男子の場合はだいたい8歳くらいです。
小学校低学年でも、お子さんが「見た目が悪い」や「噛めない・痛い」など困っているようでしたら、管理期間は長くなりますが、矯正治療を早期に開始しても良いと思います。そうでなければ、当院では永久歯列が完成してからの全体矯正治療からの開始をお勧めしております。女子であれば中学入学前後から、そして男子なら高校入学前くらいがベターです。
「そんなに、後で大丈夫なのか?」という質問を受けますが、治療を受けるお子さんの事を考えてあげると、15歳くらいが一番良いのです。男子にとって、高校生は、まだまだ身体の成長期であって、本人に矯正治療にに対するやる気があり、時間にも余裕があり治療の成功率が高い時期です。中学卒業後すぐに始めれば、高校3年の大学受験勉強が始まる頃には終了しています。
逆に男子の矯正治療の開始時期としては、中学生はベターではないと考えています。中学生の時期は、保護者の方の仕上げみがきもなくなり、口の中の環境が悪化します。虫歯や歯肉炎も急増します。ですから、この期間は矯正治療ではなく、歯磨きの習慣化に時間を当てた方が、将来的な歯の長持ちとしては良いかと考えます。
まとめ
男子の矯正治療は高校生からの開始が最適と考えます。その理由は、男子は18歳まで成長が続くため、高校生でも十分に成長を利用できます。早すぎる開始はその後の成長による歯並びの変化リスクがあります。また、男子は容姿への関心が遅く、モチベーションが重要です。中学生は部活や受験で忙しいため、矯正治療に集中しにくい傾向があります。高校入学時が開始の最適期とされ、治療の成功率も高くなります。