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新型コロナによる矯正治療の変化

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

アフターコロナ 矯正治療

首都圏を中心に、新型コロナウィルスの感染拡大が広がり、緊急事態宣言まで出るところまできました。新型コロナウィルスの特徴は人から人への感染力が強いところにあります。

人類と感染症の歴史は長く、これまでほぼ人類が負けてきました。そして、その度に感染経路を減らしていく努力を行い、感染数をコントロールしていくという手段を選択していきました。

しかし、今回の新型コロナウィルスは、人間との接触により感染が拡大していくという社会活動を破壊するウィルスです。ワクチンや治療薬ができるまでは、私たちができる事は、外出を減らしていくという選択しかありません。

ちょうど、日本では「働き方改革」により、在宅でのワークが勧められていた中での出来事でしたが、大手企業以外は中々浸透はしていなかったのが現状でした。もちろん当院も含めた矯正歯科医院もそうでした。それが、新型コロナの感染拡大によって一気に「テレワーク」の推奨、医科では「オンライン診療」の開始へ繋がる事となったのです。(歯科も開始しました)

新型コロナ後の社会とは

新型コロナ後の社会は間違いなく今と異なるものになると考えられます。特に現代の社会システムは欧米を参考にして作られていますから、今感染の渦であるのは欧米ですから間違いなく社会構造の仕組みが変化してしまうと予測されます。

例え新型コロナに対するワクチンが完成したとしても、私達はコロナと共存していなくてはならなくなってしまいます。既に、世界はアフターコロナではなく「withコロナ」を考えています。より衛生環境の向上を図るだけではなく、人と人の接触が避けられる方向に向かい、今までとは異なる距離間になる可能性があります。それにより医療も含めた全てのサービス業は感染対策を根本的に見直さなくてはならくなります。歴史上、パンデミックが起こった後に以前の社会に戻る事はありません。良くも悪くも新しい社会が始まると覚悟をしなくてはなりません。

コロナ後の社会
<新型コロナ後の社会は大きく変わる>

矯正歯科治療を受ける方は減っていく?

今後、世界の景気は長期間にわたって徐々に悪化していくと思われます。リーマンショックなど過去の不景気の時もそうですが、「矯正歯科治療」を希望される患者さん数は、実際の経済状況から少し遅れますが必ず連動します。つまり、今後は矯正歯科医療を受ける患者さんは減っていく可能性が高いと言えます。

また、アメリカの調査結果では、様々な職業の中で歯科医師が感染のリスクが一番高いと報告されています。ですが、歯科への衛生物資(消毒材・マスク・ガウン・グローブ等)が他業種の需要によって不足してきております。日本歯科医師会からは十分注意して診療を行うように言われていますが、治療を伴わない定期検診(メンテナンス)は延期を推奨しております。国民の歯科医院への来院がそもそも減少していくと考えられます。
▶︎日本歯科医師会

歯科医師・コロナ・感染リスク
【参考】The New York Times

もちろん、一般歯科治療を希望される患者さんが減ってくると、口の中の衛生環境が悪くなっていきます。審美医療や予防医療に近い矯正歯科治療を希望される患者さんはもっと減っていきます。

https://makino-ortho.com/archives/6021

 

特に矯正歯科専門医院の場合は、一般歯科診療を行いませんので、新規の治療開始患者さんがゼロの月という事も出て来るかもしれません。このような環境下で医院のスタッフの雇用などを守る事を考えると、既に盤石な経営基盤を持っていない医院でないと、夏以降に経営状況が困難に陥る可能性があります。

それでも矯正歯科治療は、スタッフがいなかったとしても、歯科医師一人である程度診療はできる医療です。ですから閉院という事は基本的にはありません。ですが、新しい治療技術や患者さん向けのシステム開発などは停滞していく事となります。これは、矯正歯科医療の全体的レベルの低下を招きます。

新型コロナ後の矯正治療とは

矯正治療の方法も、常に患者さんのニーズによって変化し続けています。残念ながら治療期間を劇的に短くする事はできないため、「目立たない矯正装置」や「痛くない矯正装置」が今までもてはやされてきました。ですが、これからはオンライン診療に対応した「通院数の少ない矯正装置」へと変化していく事が予想されます。やはり、他の歯科治療と異なる矯正治療の最大の欠点は「長く治療経過を見なくてはならない事」なのです。

矯正治療は医療の中でも複雑な立ち位置にいます。それは「歯並びの悪さ」というは、短期間で生死に関わる病気ではないからです。つまり矯正治療は、「不要」ではないのですが、「不急の治療」という分類になります。費用の精算は別として、実は通院が難しい場合は中断ができる治療なのです。

今回のコロナだけではなく、今世界は大きなうねりの中にいます。いつ巨大地震などの天災がおこるかも分かりません。このような中、今、矯正治療は「通院に融通が効く治療方法」へのシフトしていく必要があるのだと感じます。結局このような環境下では、患者さんが自身で交換して治療を進めていくマウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】のような治療方法がマッチしているという事になります。実際、当院もワイヤー型装置ではなく、マウスピース型矯正装置を使用している患者さんの方が、この環境下ではスムーズに予約の変更が可能でした。

そして、緊急時のコミニュケーションの手段も電話やメールだけでなく、LINEなどのSNSを利用したチャットワークで対応する事で、患者さんのストレスも大分軽減します。厚生労働省より歯科においてのオンライン診療も、まもなく認められます。これから数か月でオンラインの矯正歯科診療の精度もかなり上がるのではないかと思います。当院も相談・診断などはオンラインにて行える体制はできております。

<通院患者様にはLINEがおすすめ>

今後の選ばれる矯正歯科医院とは

今までは、矯正歯科学会の資格があって、治療経験数の高い医院が患者さんに選ばれていました。ですがこれからはより患者さんの通院環境に柔軟に対応できる矯正歯科医院が選ばれていくのではないのかと感じます。

<便利さというのがより大事になる>

また、より住居から近い医院が選ばれる傾向に向かうと考えられます。今までは高い治療の質を求めて都心部のクリニックに行く患者さんも多かったのですが、これからは「治療の質<治療の環境」が重要視されるようになってくるからです。結局、治療環境の良さが患者さんの治療の満足度につながる事で、良い治療結果も生まれていくのです。当院も、そのような医院になれるよう患者さんのためになる新しいシステムを導入していこうと思います。

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