矯正治療の抜歯の仕方
矯正治療を行う場合、親知らずを含めるとかなりの確率で抜歯が必要になります。そこで今回は抜歯のタイミングや実際の流れについて説明いたします。
抜歯の進め方
矯正歯科専門医院の場合、抜歯は以前通った事がある歯科医院か、提携している口腔外科専門医院で行っていただきます。まずは、お電話で抜歯予定の歯科医院に初診のご予約をお取りください。「矯正治療のための抜歯の予約を取りたいのですが、診療依頼書を持っています。」と伝えていただくとスムーズにいきます。当然、依頼書がないと抜歯は行ってくれません。
矯正治療のための小臼歯抜歯は基本的には保険適応外です。1本につき 5,000〜15,000円前後の費用がかかります。レントゲンに関しては、依頼書に同封してあってもパノラマレントゲンのみ再撮影する事はあります。
通院回数
多くの歯科医院では1回の通院で1本の抜歯になります。ですから抜歯の本数分通院する事になります。口腔外科処置を得意とする歯科医院の場合は2本づつ抜歯を行ってくれる事があります。上下4本抜歯の計画で2本づつの抜歯の場合は、反対側で噛めるように初日は右の上下、別の日に左の上下といった感じで片側づつ2回で抜歯をしてくれます。
先生の考え方や抜歯の状態によっては、傷口を糸で縫うこともあります。こうすると早く傷口がふさがり、食事の時にシミにくかったりします。ただし、抜糸で余分に通院する必要があります。
いつまでに抜歯をしなくてはならないか
抜歯前に矯正装置を装着してしまうと、口腔外科処置の邪魔になります。ですから先に抜歯を済ませてから矯正治療は開始する事になります。診断後から2か月以内に抜歯は完了させる事が望ましいです。抜歯の時期が延びていくと、矯正装置は並行して作成準備をしていきますので、治療開始時期がどんどん遅れていきます。出っ歯傾向の治療で上の小臼歯だけ抜歯の方は、先に下の歯並びに矯正装置を装着する事も可能です。
抜いた後の隙間
歯を抜いた後は、歯茎に穴が空いた状態になりますが、1か月程度で塞がります。一般的な第一小臼歯という歯を抜いた場合、歯列は横がすきっ歯の状態になります。口を開けても下の抜歯空隙は目立ちませんが、上の抜歯空隙は少し見えます。ですが、下の写真のようによっぼど口を横に引かない限りよくわかりません。
表側矯正装置やマウスピース型矯正装置【インビザライン】の場合は矯正装置が装着される事で抜歯した部位が隠れてしまうため、そんなに目立つ事はありません。裏側にワイヤーを装着する矯正治療の場合は、少し目立つため希望があれば仮歯を装着する事も可能です。抜歯空隙は、6~12か月程度で半分程度は隙間が閉じ目立たなくなります。
マウスピース型矯正装置【インビザライン・薬機法対象外】治療の場合で、抜歯後、矯正装置を装着するまでの見た目が気になる場合は、抜歯前にマウスピースを装着する事もできます。マウスピースには抜歯予定の歯がついているため若干目立ちづらくなります。
小臼歯抜歯の当日の流れ
局所麻酔を行った後に抜歯を行います。標準的な小臼歯の場合は1本2~3分で抜歯自体は終了します。その後、ガーゼを噛んで20分ほど待ち、止血確認後に終わりとなります。痛み止めを渡されますので、術後は必ず服用しておいた方が良いです。その後、帰宅後に耐えられないような痛みや大きな腫れが出る事はありません。
歯根が2本ある歯や、大きな虫歯の修復がある歯の場合は、抜歯の難易度が上がる事があります。これは、抜歯時に歯根が途中で割れてしまい歯茎の中に残ってしまう事があるからです。残った歯根を取り除くためには、歯茎の切開や周囲の骨の削除が必要になり、術後に腫れる事がありま す。ケースとしては多くはありません。
埋伏親知らず抜歯の場合
歯茎に埋まっている親知らずの抜歯は通常とは異なります。総合病院や口腔外科を得意としている歯科医院のみでしか行えません。初診ですぐに抜歯してもらえるわけではなく、まずはCT撮影検査を行い術式の説明になります。実際の抜歯は、歯茎を切って周囲の骨を削って行うため、術後は必ず腫れてしまいます。術後に大事な予定がないところでご予約する事が望ましいです。 抜歯が保険適応になるかは、紹介先の医院の解釈で決まります。保険適応の場合は¥8,000程度になります。ただし15歳以下の親知らず抜歯は、必ず自費診療になります。
一番後ろの歯ですが矯正装置が先に装着されていると抜歯の際、視野が悪くなります。ワイヤー型装置のような固定式装置は親知らず抜歯後に装着する方が望ましいです。マウスピース型矯正装置【インビザライン】の 場合は、着脱式のため抜歯前でも治療開始が可能です。