治療後は、保定期間が始まるという現実
矯正治療後には保定というリテーナーを使ったメンテナンスの通院期間があります。
先日、同級生の友人と話いて気がついたのですが、私は歯科医になって10年目になっていました。10年近く矯正治療をしていると思うと「長くやってきたな」と感じます。確か学生時代にはもう矯正歯科の道に進もうと決めていました。私は数学の中の証明が好きでしたので、論理的で計算的要素が強い矯正歯科が歯科医療の分野中で一番向いていると、当時感じたのを今でも覚えています。
ただし歯科医療の中で矯正歯科の科目は学生時代はほとんどありません。実は、歯科医師になった後から矯正治療の勉強のスタートするのです。大学を卒業するのに6年間かかっているのに、そこからさらに3年間以上は勉強がある事には愕然としたのを覚えています。ゴールと思っていたところがスタート地点と気が付いた時のモチベーションを上げるのは中々難しいものです。
矯正装置除去は保定期間のスタート地点
約2年の本格矯正治療を終えるとキレイな歯並びを獲得できます。そしてこの瞬間から保定期間がスタートします。保定期間とは歯並びが戻らないように、安定を図る期間です。歯科医院での管理は最低2年です。多くはその後は個人管理になります。
今は治療期間がどんどん短くなっている傾向がありますが、残念ながら保定期間に関しては短くはなっていません。この保定期間、何をするかと言うと、リテーナー(保定装置)を使用していただきます。保定装置には固定式と取り外し式がありますが、取り外し式リテーナーは最初の頃は、なんとフルタイム使用です。
さらにこの話をすると皆さん驚きますが、リテーナーというマウスピース装置を食事と歯ブラシ以外、1日中装着していなくてはなりません。この矯正治療終了直後のリテーナー装着をサボってしまうと、簡単に後戻りしてしまいます。
歯並びを保つリテーナーは継続が大切
矯正治療が終わると必ず渡されるのがリテーナー。このリテーナーの役割は、治療直後の後戻りを防ぐだけでなく、実はエイジングにより歯並びが崩れるのを予防してくれます。
実は矯正治療をしても、しなくても、人の歯並びは悪くなります。歯茎や骨、筋肉もエイジングしていき、歯並びは変化し続けるのです。年齢とともに、ゆっくりと下降線を描くイメージです。この下降線を緩やかにしてくれるのがリテーナーなのです。ちなみにリテーナーは、よっぽど使い方が荒くなければ壊れません。丁寧に使えば一生使えます。
ということは、よく終了患者さんに「いつまでリテーナーを使えば良いのですか?」と聞かれるのですが、答えは「使える限りいつまでも」になります。リテーナーは継続して使う事で違いが生まれます。
<リテーナーは歯並びが悪くなるのを緩やかにしてくれる>
矯正装置をはずしてもすぐにフリーになるわけではありません。そこから新たなモチベーションが必要です。私も未だに使用しています。人は「継続する」という事を苦痛に感じる動物です。でも同時に人は慣れる事もできる動物です。最初は我慢してリテーナーを「一生の習慣」にしていいきましょう。