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矯正治療するなら下の6歳臼歯は大切に!

■まきの歯列矯正クリニック 院長 牧野正志

矯正治療は歯があれば何歳からでも治療を受ける事ができます。ですが、肝心な並べる歯を失ってしまってからでは、矯正治療を受ける事ができなくなる事があります。特に失ってはならない歯は下の6歳臼歯(下顎第一大臼歯)になります。

下の6歳臼歯は、人の永久歯の中で1番目か2番目に生えるため、寿命が長い大事な歯になります。ですが、その形や位置から同時に虫歯や歯周病にもなりやすい歯でもあり、年齢ととも早めに最初に失いやすい歯でもあります。

下の6歳臼歯が大切な理由

特に矯正治療を検討されている方においては、特に下の6歳臼歯を失うと、矯正治療自体を行うのが困難になっていく事があります。その理由を説明していきます。

前歯の噛み合わせを治す固定源になる

前歯の上下のかみ合わせを正常に機能する状態に改善する事を専門用語で「バイトコントロール」と呼びます。主に歯根が短く動かしやすい下の前歯を上下的に動かして改善をしていきます。重要なポイントは固定源になる下の6歳臼歯なのです。このバイトコントロールが上手く行かないと、前歯が深噛み(過蓋咬合)状態で治療が終わってしまう事もあります

6歳臼歯は一番根の部分が大きい歯になります。ですから多少大きな矯正力を加えても、簡単には動きません。矯正治療ではこれを利用して、他の歯を動かしていくのです。下の6歳臼歯がなければ、前歯の噛み合わせを改善するのが難しくなります。さらにもう一つ後ろの12歳臼歯も失っている場合は矯正治療が困難になります。

失った歯の隙間にまわりの歯が倒れてくる

下6歳臼歯の虫歯や歯の根っこの病変を放置しておくと、最終的に抜歯になります。そして、そのまま歯を失った状態で欠損治療を受けず放置をしておくと、必ず隣の歯が失った歯の部位に向かって倒れてきます。さらに、噛む相手がいない上の6歳臼歯が下の落ちてくるという現象も同時に発生してきます。そうなると、全体の歯並びが崩れるだけでなく、噛み合わせも非常に悪くなってきます。この状態で、矯正治療を行う場合は、まずは元の位置に歯を戻す必要があり治療期間が長くなってしまいます。

<下の6歳臼歯の喪失により崩壊が始まっている様子>

つまり、下の6歳臼歯の喪失は噛み合わせの崩壊の始まりになります。止むを得ず下の6歳臼歯を抜歯する事になってしまった場合は、早期にブリッジやインプラントなどで失った歯を人工的に回復させる必要があります。状況によっては入れ歯も選択の一つです。

広すぎて喪失した歯の隙間を閉じる事ができない

下の6歳臼歯を失った場合、多くの患者さんはその隙間を矯正治療で閉じてほしいと希望しますが、これは難しい事が多いです。下の6歳臼歯は横幅が一番大きい歯であり、一般的に矯正治療で抜歯する前から数えて4番目の第一小臼歯の1.5倍はあります。そして、下アゴは上アゴの骨と比較して骨が細く歯の移動領域が狭いにもかかわらず、骨密度は高く矯正力による歯の動きも非常にゆっくりです。このような理由から、下の6歳臼歯抜歯後の隙間は、現実的には半分程度にしか減らせない事が多いです。

<矯正治療でブリッジのダミーの歯を半分くらいまでにはできる>

その他としては、「下の親知らずが使えるか」も隙間を閉じる方針に影響してきます。隙間を閉じても下の歯が一本足りない事には変わりませんので、親知らずを噛み合わせに参加させる事ができるかは、治療計画を立てる上で非常に大事になります。

下の6歳臼歯を失った方の矯正治療

上記に説明したように、下の6歳臼歯がない場合、前歯の噛み合わせのコントロールが難しくなります。ですから、かみ合わせに問題のある過蓋咬合(深噛み)の場合は、改善には長い時間がかかります。

他にも何本か奥歯を失っている場合は、矯正治療より先にインプラントや入れ歯による奥歯のかみ合わせの回復治療を検討する必要がでてきます。そして、奥歯を失ってから2年以上の期間が経ってしまっている場合は、矯正専門医院での治療の対象外になってしまう事もあります。

このような場合は、大学病院やインプラント治療なども行っている総合歯科医院を受診する方が全ての治療を一気に行う事ができるため良いと言えます。

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