歯科矯正用アンカースクリュー

インプラントアンカーとも呼ばれる直径1.5mm程度のピアスみたいなスクリューピンを歯茎に挿入します。先端部が歯茎下の顎骨に少し刺さる事で、これを固定源にして3次元的に様々な方向に矯正力を加える方法です。2012年に薬事承認を得た後、成人の矯正治療を行う方に対し、スタンダードな治療方法となりつつあります。失った歯を取り戻す人口歯根であるインプラントとは異なるものになります。

アンカースクリューはなぜ必要か?

アンカースクリュー
<非常に小さいアンカースクリュー>

全てのケースに使用する訳ではありませんが、特定のパターンの歯並びや治療法にアンカースクリューを応用する事で、治療のメリットを得る事ができます。ただし、必ず治療期間が短くなる」・「非抜歯で治療できる」という訳ではありませんのでご注意下さい。「効率良く歯を動かす事ができるようになる」という目的で使用をいたします。

ここ数年、成人の矯正治療を受ける患者数は急増してきました。それと同時に、難易度の高い歯の動きがあるケースも出てくるようになりました。そこで、より矯正治療の適応範囲を広めるため、アンカースクリューは大切な役割を果たすようになってきました。主もな使用目的は以下の3つになります。

1.固定装置のかわりになる
2.前歯を効率よく引っ込める
2.難しい歯の動きも可能にする

ヘッドギアなどの固定装置の替わりになる

アンカースクリュー 固定源
<スクリューから直接前歯を牽引>

ほんの10年前は奥歯を動かさないように成人の方でも就寝時に、ヘッドギア装置などの顎外固定装置を使用していただく事が一般的でした。在宅時間が短い方の場合、装着が面倒なため十分装着時間が得られていない事もありました。もちろん、その場合は良い治療結果が生まれません。

それがアンカースクリューを使う事で、顎外固定装置の必要がなくなり、患者さんの協力負担は大分減らす事ができます。ただし、成長期のお子さんの場合は骨が柔らかく設置したスクリューが安定しないため、通法どおりのヘッドギアを使用します。

前歯を効率よく引っ込める

アンカースクリュー 一括移動
<裏側から6前歯を一気に後方移動している様子>

今までは、小臼歯抜歯した歯の隙間を閉じる際、奥歯と綱引きをしながら1本づつゆっくり前歯を後ろに引っ張っていました。1度に多くの歯を移動させると、強い牽引力が必要になり、引っ張られる側の奥歯の反作用が大きくなってしまいます。その結果、意図しない歯の動きが出るため、逆に治療期間がかかっていました。「急がば回れ」です。

それが、アンカースクリューを使用した場合、一気に6前歯を後ろに引く事できるため、早く前歯を後退させる事ができるようになりました。特に裏側矯正を行う場合は、狭い口の中で効率良く歯を移動させるために、スクリューは必ず設置します。

難しい歯の動きも可能にする

アンカースクリュー ガミースマイル
<前歯を上方向に持ち上げている様子>

今までの矯正器具では歯の動かす範囲と方向に限界がありました。それが、アンカースクリューの設置位置によって歯を3次元的にある程度自由に動かす事ができるようになります。

矯正治療単独では改善が難しいとされていた、歯を歯茎方向に押し込む治療方針も積極的に選択する事ができます。これにより骨格性の開咬やガミースマイルを伴う過蓋咬合といった難易度の高い症状も治療結果を出す事ができるようになりました。

安全な設置方法

アンカースクリュー手術
<普通に診察室で設置可能です。>

アンカースクリューは生体親和性の高いチタン合金性です。スクリューの直径は1.5mm以下(主に1.3mmを使用)、長さは6〜8mmとかなり細いスクリューです。
スクリュー部の先端部は歯槽骨といって歯茎の下の顎骨に入ります。ある程度、歯槽骨には硬さが必要なため、骨格がしっかりする16歳以上からの使用を推奨します。スクリューのヘッド部はパワーチェーンやバネがかけらるようになっており、設置後は歯茎にピアスがついたようになります。

アンカースクリューの設置方法は、局所麻酔下で15分以内の簡単な手術で、歯茎から直接歯槽骨に埋入します。歯茎の切開や骨に穴を開けたりなどは今はありません。ですから患者さん負担は非常に少ないないと言えます。設置後もほとんど痛みはありません。治療目的が達成されたあとは速やかに撤去します。撤去後のミニスクリューの傷は2-3日でなくなりますのでご安心下さい。

オルソニア・プロシード社
<安全に設置が可能なオルソニア>

当院ではオルソニア(商品名)という設置速度とトルク調整ができる専用機器を使用しおりますので、安全性は高いです。この機器を使用する事で、設置中のスクリューの破折や設置後の脱落リスクを減らす事ができます。手動で設置を行っていた頃は、うまく設置できずアンカースクリューが緩んでしまうケースが結構ありました。脱落してしまうと別の位置に設置し直さなくてはなりませんので、患者さんにも歯科医師側に負担になります。手動の場合は、埋入速度を均一に保つ事が難しく、設置方向にもブレが生じてしまいます。こうして、マイクロクラックといって、歯槽骨に非常の小さなヒビが入ってしまい、スクリューが緩んでしまうのです。

歯科医院によっては、口腔外科医に依頼して設置する場合と、矯正専門医が自分で設置するパターンがあります。どちらかと言えば、実際は治療計画を立てる矯正専門医が研修を積んで設置をした方が、適切な位置に入れる事ができ、トータル的には望ましいと考えております。当院では、院長の私が局所麻酔を行い設置いたします。

アンカースクリューの注意点

現代の矯正治療では非常に効果的な治療方法であるアンカースクリューですが設置できない事もあります。スクリューが使用できない場合は、顎間ゴムなど患者さんに協力性を求める治療方法に代替します。

事前検査で使用できない事がある

全ての患者さんに、アンカースクリューが使用できるわけではありません。事前のレントゲン検査などで設置できないとわかるケースもあります。主な例は以下です。

・歯と歯が近接しており、設置予定部位の歯根間距離が足りないケース
・蓄膿などで上顎洞(鼻の副鼻腔)が炎症を起こしているケース
・歯槽骨が著しく硬く、ドリリングが必要なケース

脱落リスクがある

万全を期して処置を行っても残念ながら、電動にしても全体10-20%くらい設置から数日後に、スクリューが動揺し安定せず後日再手術になる方がいます。内側より外側の歯肉に設置した時に起こりやすいです。脱落した同じ部位には2度設置しませんので、緩んでいるスクリューの撤去と同時に、場所を変えて再設置を行います。それでもスクリューが緩む場合は、使用を諦めます。

※当院では歯科矯正用アンカースクリューの費用は治療費に含まれています。脱落があり、再設置になっても追加費用は必要はありません。