大人の矯正(成人矯正)
一般的には小学校低学年から中学生くらで矯正治療を始める方が良いというイメージがあります。ですが、当院では、患者さんの通院環境なども考えると20歳前後が矯正治療のベストタイミングではないかと考えています。
大人でも矯正治療は可能
「矯正治療は子供しか受けられない」と思っている方は結構多いです。確に以前はそのような傾向がありました。その理由は、既に虫歯や歯周病で歯を多く失っている方が多かったからです。ですが、今はそういった方は減ってきましたので、ほとんどの大人が矯正治療の適応です。
子供ころから歯並びが悪いことがコンプレックスだったけど、タイミングが合わなくて治療しなかった方が、「自信を取り戻したい」といった理由で社会人になってから矯正治療をされます。
コロナ禍でマスク着用をするようになった際、外出する機会も減ったことで、矯正治療を受ける人口は急激に増えました。ようやく日本も欧米と同じように矯正治療を受けることが「恥ずかしいこと」から、「ふつうのこと」に変化してきたのかと思います。
大人の矯正治療期間
残念ながらお子さんと比べて大人の方の方が矯正治療期間は長いと言えます。とはいっても、2倍3倍に期間が伸びるわけではなく、少しだけ歯の動きがゆっくりになるだけです。それでも平均2年の治療期間を目指していきます。2年間はそんなに長くはありません。
逆に矯正治療を小学生から始めている方は1期2期と分かれており、トータル5年くらい治療期間がかかっている方もいますので、必ずしも大人の方が長くかかるとは限りません。
20歳前後が矯正治療のベストタイミング
当院では20歳前後くらいの成人の方が一番良い時期と考えます。その1番のポイントは、治療へのモチベーションです。実は矯正治療を行うということは個人差はありますが面倒なことがいっぱいです。「矯正装置がつきますし、痛いし、食事はしにくいし、長い通院が必要だし…」。このように矯正で歯を並べるためには色々と大変なことがあります。ですから、途中で脱落しないようこの苦難に勝る強いエネルギーが必要になります。特に審美目的が強い治療の場合は、10代の頃と異なり、大人になってから自分の強い意志で矯正治療を始めるの方が、治療後の管理も含めても望ましいと考えます。
意外と見過ごさせれている点として、大人の方が矯正治療後の管理がしっかりとしていて後戻りが少ないという点があります。治療後に装着してもらわなくてはならないリテーナーも規定通り使用してくれる方が多いです。要は自己管理ができるという点がメリットなどです。
また、成人の方の場合は、難症例に対して成長期のお子さんには使用が難しい歯科矯正用アンカースクリューなど、多少侵襲性が高い治療方法も選択できます。やはりお子さんの場合、外科的処置が多い治療方針は選択が難しくなります。
「いつ始めるか?」のポイント
大人になってから矯正治療を始める場合は、必ず今から最低2年間のライフスケジュールを確認していただく必要があります。矯正治療は転院が難しい治療であり、必ず定期通院が必要になります。就職・転居・結婚・妊娠・出産の予定がある場合は、その後も通院が可能なのかよく考える必要があります。その上で、治療期間と治療進度のバランスを考慮した計画を立案していきます。
例えば、二十歳を祝う式典(旧成人式)や結婚式の記念写真を矯正装置のない状態で撮影して残したいという場合は、唇側ブラケット矯正装置を一時撤去することが可能です。撮影後は再度新しいブラケット装置を装着します。
※手数料として上下片方¥27,500がかかります。
このように矯正治療は、患者さんごとの歯並びやかみ合わせから「最適な治療方法」があるのと同様に、それぞれのライフスタイルから「最適な治療開始時期」というのもあるのです。
矯正治療もストレスになることがある
高度に発展した現代社会は、ストレス社会でもあります。SNSによる情報化過多などから日常多くのストレスを受けています。もちろん、生活に制限がかかる矯正治療もストレスの一つになります。ご自身が新しいことを始めることに対して不安の多い性格の方の場合は、すぐに矯正治療を始めずに、身の回りのストレスをある程度コントロールできるようになるまで矯正治療開始を待った方が良いと場合もあります。中途半端に始めてしまいモチベーションが続かず治療途中で中断してしまうこともあるからです。ある程度落ちついて通院できる時期に矯正治療を始めた方が、治療期間も短く良い結果が生まれると考えます。