後戻りの再矯正治療

歯並びの後戻りは全ての方にあります。ここ数年、再矯正治療を希望される患者さんは増えてきています。

歯並びが後戻りする原因

矯正治療後の後戻りは、多かれ少なかれ全ての矯正治療を行なった方におこります。これは間違いない事です。歯列は徐々に動いているのですが、患者さんが気になるレベルになってくるレベルになったかが、ポイントになります。後戻りには大きく分けると下の3つのパターンに分けられます。

矯正後の後戻りパターンとその原因
<矯正治療後の後戻りの3つのパターンとその原因>

時期によって後戻りのスピードやタイプは異なります。それぞれのパターンに分けて説明していきます。

<後戻りの時期でパターンは異なる>

リテーナーの使用不足による治療後1年以内の後戻り

矯正治療で歯が動く理由は、歯と歯茎の隙間の血管膜(歯根膜)が活動する事からです。矯正治療後はこの歯根膜がまだ開いた状態です。つまり、まだ歯がどこでも動けるような状態になっています。その後6ヶ月〜1年をかけて徐々に歯根膜が引き締まっていき、まわりの骨も形成される事で歯並びは落ち着いていきます。

治療後、歯並びの安定にこの期間はとても大切です。指示どおりのリテーナー使用がなされていない場合は、後戻りを引き起こしてしまう事があります。しばらくリテーナーを使用していなかったが歯の動きに気が付いて、再度リテーナーを使用しても、残念ながら歯並びは元には戻る事はありません。

治療直後の歯並びには戻らない
<治療直後の歯並びには戻らない>

長期的な期間の中でのゆっくりとした歯列の後戻り

歯も歯茎も歳を重ねる事で弱くなっていきます。歯並びは日常では食事・噛みしめ・頬や舌の筋肉まで様々な力を受けています。実はこのような環境で歯並びをいつまでも100点をキープする事は現実的には不可能に近いのです。ですから、歯並びは毎日少しづつ変わっているのです。

患者さんは、この微妙な変化に気がつく事はできません。そして、ある時バケツの水がこぼれ始めてから気がつくのです。経年的には人の歯並びは幅が狭くなり、前歯が前方に倒れれていくタイプが多いと報告されています。

<ヒトの歯列の経年変化>

子供の矯正治療のみで仕上げの本格矯正を行なっていない

小児矯正(1期治療)とは主に6歳臼歯と前歯の噛み合わせを治し、後から生えてくる歯を誘導する治療段階です。ここで治療を終えると、実は矯正治療の中断となります。その後、12歳前後で生えてくる犬歯が八重歯になったり、奥歯がすれ違いの咬合(シザースバイト)になっている事があります。また、歯並びはキレイなのですが出っ歯を気にしている場合もあります。結局、2期目の全体矯正を行わないと歯並びは100点にする事ができないのです。

<1期治療で終了する事は実は中断である>

また、小学生で矯正治療を完了させたのですが、その後の中高生の時期に下顎が予想以上に前方に成長する事で受け口傾向が再発する方や、下顎が左右非対称に成長し交叉咬合になる方もいらっしゃいます。この場合は、外科的矯正治療も考えなくてはなりません。

リテーナーを使っていても後戻りはする

矯正治療により完成した歯並びは、次の日からわずかに崩壊が始まります。歯列には常に元いた場所に戻ろうとする力がかかるからです。それだけでなく、舌の位置・口の周りの筋力・姿勢・歯周病・歯ぎしり・親知らず・虫歯治療のやり直し・・・私たちが生きている間に歯並びを崩す要因は常にあります。その崩壊を遅らせる力を持っているのがリテーナーなのです。ですからリテーナーを使用しても、完全には後戻りを防止する事はできないのです。

さらに、リテーナーは上下の歯列を別々に抑えているパターンが多いため、「出っ歯」「開咬」などの上下歯列の前後・垂直的な歯並びを抑えるのは難しいと言われています。それでも使用しないよりマシです。

リテーナー
<決して万能装置ではないリテーナー>

再矯正の多くは全体矯正治療になる

年々増えてきている矯正治療後の後戻りの相談は、以下の3つのケースのご相談が多いと言えます。それぞれ、どのような治療になるかは、ある程度気になる部分でわかります。

後戻り・再矯正治療の対応
<部分矯正適応は意外と少なく、全体矯正の可能性は高い>

このうち①のみの症状の場合は比較的簡単に再矯正治療ができる可能性があります。歯をヤスリで小くする事でスペースを作り6〜8か月程度で治療期間は終了します。この場合は、いわゆる部分矯正治療になります。

②、③の症状がある場合は全体の歯並びを治す本格矯正治療になります。「本格矯正をまた2年近くやるのか」と思うと気持ちが重くなる方が多いようですが、後戻り相談の70%以上が全体矯正治療です。再矯正は後悔しないようにしっかり治した方が良いです。この場合は、一般的な矯正治療の費用・期間に準じます。

「長い期間がかかるな〜」と感じるかもしれませんが安心して下さい、時の流れは歳を重ねる度に早くなります。以前の2年より今からの2年の方が圧倒的に短く感じます一度経験した事を繰り返すのは、初めて行う事より圧倒的に楽です。

再矯正治療で使用する矯正装置

再矯正治療を希望の患者さんは成人以降の方が多いので目立たない事」と「快適さ」を求める傾向があります。当院では1.マウスピース型矯正装置・2.裏側矯正装置・3.白い表側矯正装置の順で選ばれています。

マウスピース型矯正装置

マウスピース型矯正装置【インビザライン】は、倒れ込んだ歯を起こすのを得意としています。ですから一度矯正治療を行い長期的に崩れた場合の再矯正治療にはマウスピース型矯正装置が第一選択になります一度虫歯治療を行なった歯で矯正装置が装着しにくいセラミックや銀歯も問題ないというのもメリットです。

<一度ワイヤーで矯正治療を行なった方は有利>

※完成物薬機法対象外の矯正装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります(詳しくは)。

ハーフリンガル

「矯正治療をしたけれど、やっぱり前歯が出ているので、もっと引っ込めたい」という方は、小臼歯抜歯を併用した再矯正治療が必要になります。この場合は前歯の歯根のコントロールが得意でないマウスピース型矯正装置は対応していない事もあります。目立たない装置を希望される多くの方はハーフリンガル矯正装置を選択します。

<ハーフリンガルは全ての症例に適応>

歯並びの崩れが上下どちらかの前歯だけの場合や、捻れている歯がある場合は、裏側部分矯正治療も可能です。適応ケースは主に下の歯並びになりますが半年以内という短期で治療を終える事ができます。

再矯正治療へのハードルは下がっている

矯正歯科治療へのハードルはコストです。もちろん費用的な面もありますが、時間という点が重要です。時間の流れは、子供の頃はゆっくりです。同じ1年でも数倍長く感じます。よく「小さい頃はずっと矯正治療をしていた事しか記憶がない」なんていう方もいます。ですが、人は一度経験した事は、慣れているため、感覚的にはあっという間に終わります。

<再矯正治療は誰でも可能です>

再矯正治療をする方は、年々増えてきています。一生で矯正治療を何度もするのは決しておかしい事ではありません。実際、働くドクターやスタッフは、実験台というのもありますが、何度も矯正治療を受けています。矯正治療を歯のメンテナンスの一つと考えてみましょう