大切なリテーナー

矯正治療後にも、少なくなりますが通院は必要です。リテーナーを使って歯列を安定させ、後戻りを予防するステージを保定と呼びます。可能であればリテーナーは一生使用した方が良いです。

矯正治療後も通院はある

 矯正装置を除去もしくは取り外し装置の使用を終了した後は保定期間に入ります。保定とは動かした歯を新しい位置で落ち着かさせる期間です。その際は、リテーナーという様々な種類の歯並びの後戻り予防装置を装着していただきます。ですから、治療後も引き続き通院は必要になります。

 リテーナーを使用しないと、最初の歯並びの状態にもよりますが、残念ながら後戻りを引き起こす可能性が高いです。特に骨が再構成され歯が新しい位置で落ち着くまでの治療後6か月は最も後戻りしやすい期間になりますので、リテーナーの使用が必須になります。矯正治療直後は、歯根膜腔と呼ばれる歯と骨の間の血管空隙が開いた状態になっているからです。

矯正中・歯根膜・開く
<矯正治療直後は、歯の周りの黒い隙間が開いているのがわかります>

メンテナンス通院では何をするの?

矯正歯科 保定

 治療後の通院では、歯列確認・後戻予防・リテーナー調整・クリーニングを行います。2年間で計7回くらいの通院になります。もちろんその後も、希望されれば1年に1回程度の通院も可能です。多くの方がその後も通ってくれいます。

歯列の確認

 治療終了時の写真などを参考に「変化がないか」をチェックします。毎日使用している歯並びが治療後、全く動かず安定しているというのはありえませんので、微細な変化を見つけます。同時に一般的な虫歯や歯周病の発見も行います。

後戻りの予防

保定チェック
<歯列のチェック>

 思春期の下顎を中心とした成長、前歯の歯並びを崩す横に向いている親知らず、歯を支える歯茎にダメージを与える歯周病、前歯の噛み合わせを悪くする口呼吸や低位舌など悪習癖など、歯並びを悪くする要因を早期発見し、改善アドバイスを行っていきます。その他、歯列の気になる事についてご相談します。

リテーナーの調整

リテーナーの調整
<一般的なリテーナーの調整箇所>

 基本的には取り外し式リテーナーは永遠に使ってもらいたいところです。毎回、お持ちいただいてワイヤー部の調整を行います。段々使用時間が減ってきてしまいがちなので、来院時に使用を再度促します。固定式にリテーナーの方は、接着が弱まり歯面から外れている事もありますので、ワイヤーの再接着を行う事があります。クリアマウスピース型の場合は、疲労による寿命がありますので再作成が必要か確認します。

クリーニング

<クリーニング中に虫歯を発見する事もあります>

 矯正治療の際の接着剤の残りなどがある場合は除去します。固定式リテーナーが接着している場合は、歯石がつきやすいためスケーリングという処置を行います。その後、歯列を全周にわたって、専用のブラシで着色なども取りながら、キレイに磨き上げていきます。

保定期間もしっかり通院した方が良い

 実は、このメンテナンス2年間期間には治療保証もついています。治療後も計画通り通院している事が条件になりますが、後戻りの再治療を通院毎の処置料(4,000+tax)のみで行う事ができます。

 実際、リテーナー使用不足によるスペースの開きや、舌の癖などによる開咬の再発が起き、再治療を行ったケースもあります。

 リテーナーの使用不足というのは結構ある事です。残念ながら全ての患者さんが治療後に自制管理して毎日リテーナーを使用してくれる訳ではありません。メンテナンスの通院時にリテーナーを持参する事を忘れて来られる方は、使用時間が少ない傾向にあります(本来なら最初は外出時もずっと装着していなくてはならないはずなので…)。

 「あまりリテーナーを使っていないから怒らそうで行きたくないな…」なんて事もあるとは思いますが、通院する事で使用のモチベーションも上がりますから、必ず保定期間は通院しましょう。

様々なリテーナーの種類

 当院で使用しているリテーナーには主に4つの種類があります。どれか一つ使用するというわけではなく、いくつかを併用する事も多いです。

プレートタイプ

プレートタイプリテーナー

 一番スタンダードなタイプのリテーナーです。上の歯並びに使用する事が多いと言えます。下の歯並び用は舌があるので少し違和感があります。ワイヤーとレジンという耐久性のある材質で各個人の歯並びに合わせて作っています。大切に使用していただければ10年持ちます。歯型を取り模型を作ってから作成します。完成まで3週間程度の期間を要します。

 歯を抑えるワイヤーの形によって「ベッグ(Begg)」・「ホーレー(Hawley)」と種類があります。少々故障しやすいのですが、QCMという前歯のワイヤー部分をプラスティック製素材にして審美的に良くするという方法もあります。また当院では、レジン部分の色を様々な変える事ができます。院長の私も就寝時回数は減らしていますがこの種類を使用しています。

フィックスタイプ

フィックスタイプリテーナー

 固定式の細いワイヤーを主に前歯の裏側に接着させます。矯正治療前の歯並びが捻れが強かったり、スペースが空いていた場合などには必ず装着します。プレートタイプと併用する事も多く、下の歯並びだけではなく上の歯並びにも使用します。永久保定といって2年間の保定管理期間後も装着し続ける事を推奨しています。

 抑える歯の箇所が多い場合は、複雑なワイヤー屈曲が必要なため歯型を取り期間をかけて作成します。少量の歯を抑えるだけであれば、その場で作成し接着させます。

 虫歯や歯石付着のリスクから使用しない医院もありますが、当院はそれよりも歯並びの後戻りによる再矯正のリスクを考え、歯並びのスペースの問題があった患者様にはほぼ使用しております。

クリアタイプ

クリアタイプリテーナー

 薄いフィルムのマウスピース型タイプです。装着してもほぼわからないため、プレートタイプを日昼使用できない成人の方に使用していただきます。プレートタイプと比較して耐久性はなく夜間使用すると歯ぎしりで穴が空いてきます。また、おうとつの多い歯の場合は亀裂が入ってきます。通常1枚の寿命は1年程度ですが、使い方によっては半年で破損してしまう方もいます。飲み物によっては多少、マウスピースに変色が起きます。

 急に必要でない方の場合はスキャナーのデータを3Dプリントし作成します。すぐ必要な場合は歯型を取り1日で作成します。

 歯の前後的位置を抑える効果は強いのですが、普段一層シートを噛んでいるので噛み合わせの安定はプレートタイプよりやや劣ります。少しの期間使用していないと歯の形ピッタリに作っているため、キツくて再装着は不可能となる事があります。

スプリングタイプ

スプリングタイプリテーナー

 下の前歯専用のリテーナーです。下の前歯の動きを抑える働きがあります。使用頻度としてはあまり多くはありません。治療前の時点で下の歯並びにスペースの問題が少ない方に使用します。小型なのでプレートタイプより装着感は良いです。

リテーナーの装着時間と期間

 歯並びの種類によってリテーナーの装着時間の違いがありますが、多くは以下のようなタイプを推奨しています。矯正治療終了後すぐの6か月は食事以外はほぼ装着しておいていただきます。その後の6か月は12時間使用に切り替えますが、就寝時と昼食までの午前中を使用していただきます。1年後からは就寝時のみ毎日使用していただきます。

リテーナー使用期間
<当院の使用時間パターン>

 「結構、使用条件が厳しいな」と感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、治療後2年間はプレートタイプはフルタイム使用という医院もありますので、これでも当院はも使用時間に関しては緩めですこの時間を切ってしまいますと後戻りが生じる可能性がかなり高くなります。

 当院では15歳以上から矯正治療をスタートした患者様には日中はクリアタイプを在宅時はプレートタイプを使用していただいています。また管理が終了する保定2年後以降もプレートタイプはそのまま使い続けフィックスタイプは除去しない事を推奨しております

リテーナーはいつまで使うのか?一生?

 よく「保定期間はいつまで続くのか?」と聞かれる事がありますが、実は、終わりはありません。日本矯正歯科学会などの専門医資格の治療症例提出が治療後2年以上の保定管理が必要になるため、多くの矯正歯科医院での絶対管理期間は2年である事が多いです。また、それに合わせて後戻り再治療保証も2年です。ですから、治療後2年間で6回程度来院していだく間はしっかりリテーナーを使用していただきます。その後もリテーナーは一生お世話になるものだと思って大切にして下さい。

誠に申し訳ございません。
現在、通院の患者さんのリテーナー作成量が増えたため、他院で矯正治療した方のリテーナー作成についてはお引き受けしておりません。